此の五者の知は勝ち、之を道くなり。

其三5-7

此五者知勝之道也。

cǐ wŭ zhě zhī shèng zhī daò yĕ。

解読文

①この五種類の知恵は君主による軍事の災いを抑制し、君主を指導するのである。

②指導された君主は、「道、天、地、将、法」五つの教えを理解している将軍を任用して敵軍を抑えるのである。

③「道、天、地、将、法」五つの教えを理解している将軍は、何度も敵国の里等を経由して陣地を開拓する戦略を理解しているのであり、侵略戦争に赴けば、自軍の権勢は敵軍を越えるのである。

④このように五種類の知恵を使えば、自軍の権勢が敵軍を越える道理である。
書き下し文
①此の五者の知は勝ち、之を道(みちび)くなり。

②道(みちび)かれる此は、五を知る者を之(もち)いて勝つなり。

③此は、五たび道(よ)ること知るなり、之(ゆ)けば、勝(まさ)るなり。

④此く五者の知を之(もち)いれば、勝(まさ)る道なり。
<語句の注>
・「此」は①②③代名詞、④このように、の意味。
・「五」は①数の名、②其一1-2①「五」、③何度も、④数の名、の意味。
・「者」は①~種、②助詞「もの」、③助詞「こと」、④~種、の意味。
・「知」は①知恵、②③理解する、④知恵、の意味。
・「勝」は①抑制する、②抑える、③④越える、の意味。
・「之」は①代名詞、②使う、③赴く、④使う、の意味。
・「道」は①②指導する、③経由する、④道理、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は欠落しているため、孫子(講談社)の原文を採用した。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「此」は、其三5-2から其三5-6の記述内容を指示する代名詞と考察し、そのまま「この」と解読。

・「勝」の“抑制する”は、其三5-1①「勝」の「君主による軍事の災いを抑制する」の意味を積み上げていると考察し、「君主による軍事の災いを抑制する」と解読。

・「之」は、其三5-1①「君」等の「君主」を指示する代名詞と解読。

<②について>
・「此」は、①「之」の「君主」を指示する代名詞と解読。

・「五」は、其一1-2①「災いを減らすために五つの教えを認めて使う」であり、具体的に「「道、天、地、将、法」五つの教え」と解読。

<③について>
・「此」は、②「「道、天、地、将、法」五つの教えを理解している将軍」を指示する代名詞と解読。

・「道」の“経由する”は、其七3-3①「都市以外の敵里を経由して治めない将軍は、陣地を手に入れることを利点と思うことができない」に関連する記述と考察。この経由していく里は、汙直の計を用いて陣地として奪い取って統治していく記述が軍争篇にあり、その概略は其七4-3①「敵里を奪い取れば多人数の正攻法部隊に割り当て、陣地を開拓して統治して兵糧と飼料を各部隊に配分するのであり、開拓した陣地を繋ぎ止めて全軍の権勢が生じれば、自軍が行動し始めた時、敵軍に危険を感じさせることができるのである」でまとめられている。「者」の“こと”はこの基本戦略と解釈し、「道ること」で「敵国の里等を経由して陣地を開拓する戦略」と補って解読。

・「之」の“赴く”は、敵国に自軍が侵略戦争を仕掛けることと考察し、「侵略戦争に赴く」と解読。

・「勝」の“越える”は、其七4-3①「敵里を奪い取れば多人数の正攻法部隊に割り当て、陣地を開拓して統治して兵糧と飼料を各部隊に配分するのであり、開拓した陣地を繋ぎ止めて全軍の権勢が生じれば、自軍が行動し始めた時、敵軍に危険を感じさせることができるのである」を実現した結果と考察し、「自軍の権勢は敵軍を越える」と解読。④も同様に解読。

<④について>
・「五者の知」は、①「此の五者の知」の「この五種類の知恵」と同意と考察。

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