孫子曰く、寡を治める如くして衆を治めるは、是なりて分かつ数なればなり。

其五1-1

孫子曰、治衆如治寡、分數是。

sūn zǐ yuē、zhì zhòng rú zhì guǎ、fēn shù shì。

解読文

孫先生が言うには、

①少人数部隊を統治するように多人数部隊を統治する要因は、軍隊編制において正しく兵士数を割り当てる軍律にあるのである。

②正しく兵士数を割り当てる軍律は、多人数部隊を分割することによって少人数部隊を統治すれば、多人数部隊を整えるのである。

③多人数部隊を整える群臣は、訓練する少人数部隊を見分けるのであり、戦略、戦術を実行する正しい方法の通りに実行させる。

④戦略、戦術を実行する正しい方法に従って訓練すれば、少人数部隊に分断して別々に行動しても、多人数部隊として合理的な行動をするのである。
書き下し文
孫子曰く、

①寡(か)を治める如くして衆を治めるは、是(ぜ)なりて分かつ数なればなり。

②是れ数は、衆の分ける如くにして寡(か)を治めれば治める。

③治める衆は、治める寡(か)を分けるなり、是(ぜ)なる数の如くせしむ。

④是(ぜ)なる数の如くして治めれば、寡(か)に分かれるも、衆の治あるなり。
<語句の注>
・1つ目の「治」は①統治する、②整える、③調える、④合理的な行動、の意味。
・「衆」は①②多くの人々、③群臣、④多くの人々、の意味。
・「如」は①~のようにする、②~によって、③その通りにする、④従う、の意味。
・2つ目の「治」は①②統治する、③④訓練する、の意味。
・「寡」は①②③④少し、の意味。
・「分」は①割り当てる、②別々にする、③見分ける、④ばらばらになる、の意味。
・「数」は①②規律、③④方法、の意味。
・「是」は①正しい、②~である、③④正しい、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「孫子曰、治衆如治寡、分數是也。」と「孫子曰」と「也」が入るが、「孫子曰」は竹簡孫子の欠落と解釈した上で中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「衆」の“多くの人々”は、軍隊における兵士数を表現していると考察し、「多人数部隊」と解読。②④も同様に解読。

・「寡」の“少し”は、軍隊における兵士数を表現していると考察。“少し”は形容詞だが、「衆」との対比がわかりやすくなるように「寡」一文字で「少人数部隊」と解読。②③④も同様に解読。

・「分」の“割り当てる”は、軍隊編成において部隊毎に兵士数を割り当てることと考察。結果、「軍隊編成において」と補った。

・「数」の“規律”は、其一2-7①「法」の「法規やお手本」とも解釈できるが、この句における“規律”はより概念の小さい具体的なものと考察。結果、軍隊を対象とした「軍律」と解読した。

<②について>
・「数」の“規律”は、①「数」の「軍隊編制において正しく兵士数を割り当てる軍律」意味を積み上げていると考察し、「正しく兵士数を割り当てる軍律」と解読。

<③について>
・「是なる数」の“正しい方法”の“方法”は、其四4-2④「兵士達の戦略、戦術を実行する方法を統一する」で記述される「戦略、戦術を実行する方法」を指すと考察し、「戦略、戦術を実行する正しい方法」と解読。④も同様に解読。

<④について>
・「分」の“ばらばらになる”は、「多人数部隊」を「少人数部隊」に分断することであり、且つ、「少人数部隊」がそれぞれ別々に行動する二つの意味があると考察。結果、「寡に分かれる」で「少人数部隊に分断して別々に行動する」と解読。

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