色は五たび過ぎざるなり、五たび色を之かしめば変して、勝ちて観る可からざるなり。

其五2-6

色不過五、五色之變、不可勝觀也。

sè bù guò wŭ、wŭ sè zhī biàn、bù kĕ shèng guàn yĕ。

解読文

①女性への情欲は何度も凌げないのであり、何度も美女を赴かせれば心変わりをして、情欲を抑えて考察できないのである。

②大いなる美女を何度も訪れさせる理由は、“将軍が可愛がる者を殺害する”お手本に美女を使う陰謀を用いるからである。敵将軍は美女と遊ばせて大いに担ぎ上げるのが良いのである。

③大いなる美女と何度も男女の関係を結ばせて、“将軍が可愛がる者を殺害する”お手本の陰謀を使えば、敵将軍の顔に怒りが出るのであり、敵将軍は既に滅ぼされた状態になって考察できないのである。

④自国の将軍に、“将軍が可愛がる者を殺害する”お手本に該当する欠点があれば、大いに怒りを顕示して災いを抑えるのである。欠点を克服した将軍は何度美女が訪れても心変わりをしない。
書き下し文
①色は五たび過ぎざるなり、五たび色を之(ゆ)かしめば変して、勝ちて観る可からざるなり。

②不(おお)いなる色を五たび過(よぎ)らしむは、五に色を之(もち)いる変すればなり。観らしめて不(おお)いに勝(た)える可きなり。

③不(おお)いなる色と五たび過ごせしめ、五の変を之(もち)いれば色だつなり、勝(しょう)たりて観る可からざるなり。

④五の過(あやま)ちあれば、不(おお)いに色を観(あらわ)して勝つなり。可(い)えるものは五たび色の之(いた)るも変せず。
<語句の注>
・1つ目の「色」は①女性への情欲、②③美女、④怒り、の意味。
・1つ目の「不」は①~しない、②③④大いに、の意味。
・「過」は①凌ぐ、②訪ねる、③時間を費やす、④とが、の意味。
・1つ目の「五」は①②③何度も、④五番目という序数、の意味。
・2つ目の「五」は①何度も、②③五番目という序数、④何度も、の意味。
・2つ目の「色」は①②美女、③顔に怒りが出る、④美女、の意味。
・「之」は①赴く、②③使う、④ある地点や事情に達する、の意味。
・「変」は①移り変わり、②③陰謀を用いること、④移り変わり、の意味。
・2つ目の「不」は①~しない、②大いに、③④~しない、の意味。
・「可」は①~できる、②~するのが良い、③~できる、④病気が治る、の意味。
・「勝」は①抑える、②担ぎ上げる、③既に滅ぼされたさま、④抑える、の意味。
・「観」は①考察する、②遊ぶ、③考察する、④顕示する、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「変」の“移り変わり”は、女性への情欲を抑えきれなくなった状態になることと考察し、「変す」で「心変わりをする」と解読。④も同様に解読。

<②について>
・2つ目の「五」の“五番目という序数”は、「五危」の内容が記述された其八3-2①において、五番目に記述された「兵士達を可愛がることを許容する将軍は、軍隊を掻き乱す」を指すと考察し、「“将軍が可愛がる者を殺害する”お手本」と解読。③2つ目の「五」と④1つ目の「五」も同様に解読。

<③について>
・「過」の“時間を費やす”は、美女と夜の時間を費やすことと考察し、「男女の関係を結ぶ」と解読。

<④について>
・「勝」の“抑える”は、「“人民を可愛がる将軍は悶え苛立つ状況に向き合う”教えに該当する欠点」によって生じる解読文③の災いと考察し、「災い」と補った。

・「可」の“病気が治る”の“病気”は、「“人民を可愛がる将軍は悶え苛立つ状況に向き合う”教えに該当する欠点」の「欠点」を指すと考察し、「欠点を克服する」と言い換えた。

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