其六4-7
衆者、使人備己者也。
zhòng zhě、shǐ rén bèi jǐ zhě yĕ。
解読文
①正攻法部隊とは、一人ひとりに自分の武具を整えさせた軍隊である。 ②自分の武具を整えさせた正攻法部隊には、兵士達を働かせる役割として多くの隊長が存在するのである。 ③兵士達を働かせる役割である多くの隊長は、各部隊の中央にいてその部隊を整える存在である。 ④各部隊の中央にいてその部隊を整える隊長が、敵部隊を誘導すれば、奇策部隊が攻め取って自軍の兵士数を増やすのである。 |
書き下し文
①衆は、人ごとに己を備え使(し)む者なり。 ②己を備えしむ者は、人を使う者として衆あるなり。 ③人を使う者なる衆は、己にありて備える者なり。 ④己にありて備える者は、人を使わせば、衆(おお)くするなり。 |
<語句の注>
・「衆」は①多くの人々、②③群臣、④数を増やす、の意味。 ・1つ目の「者」は①~とは、②③助詞「もの」、④仮定表現の助詞、の意味。 ・「使」は①人や事物に対してある行為をさせる、②③働かせる、④出向かせる、の意味。 ・「人」は①一人ひとりに、②③④民衆、の意味。 ・「備」は①②③④整える、の意味。 ・「己」は①②自分、③④十干の第六位(方位では中央)、の意味。 ・2つ目の「者」は①②③④助詞「もの」、の意味。 ・「也」は①②③④断定の語気、の意味。 |
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する ・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。 <①について> ・「衆」の“多くの人々”は、其五1-1①「衆」等同様に「多人数部隊」と考察。但し、其六4-6①「寡」で「奇策部隊」と解読しているため、奇正の戦術に関する記述と考察して「正攻法部隊」と解読する。 ・「備」の“整える”は、其六4-4③「備える所」の「武具を整えて万全の状態にさせる」を指すと考察。結果、使役形で「武具を整えさせる」と解読。②も同様に解読。 <②について> ・「衆」の“群臣”とは、多くの臣下の意味である。この臣下は、正攻法部隊の各部隊を整える役割を担う隊長と推察できるため、「多くの隊長」と解読した。③も同様に解読。 ・1つ目の「者」の“助詞「もの」”は、ここでは話の流れに合わせて「役割」と言い換えた。③も同様に言い換えた。 <③について> ・「己」の“十干の第六位(方位では中央)”は、隊長が担当する部隊の中央にいることを指すと考察。結果、「各部隊の中央」と解読。④も同様に解読。 <④について> ・「人を使わす」の直訳は“民衆を出向かせる”となる。この“民衆”は、正攻法部隊の、敵部隊を奇策部隊が隠れている場所まで誘導する役割に基づいて敵部隊を指すと考察。また、“出向かせる”は誘導していくことと考察。結果、「敵部隊を誘導する」と解読。 ・「衆」の“数を増やす”は、奇策部隊が敵部隊を攻め取って自軍の兵士数を増やすことと考察。結果、「奇策部隊が攻め取って自軍の兵士数を増やす」と補って解読。 |