戦う日に之ること知りて、戦いに之る地を知るに、千なる里ある而は戦かしむなり。

其六4-8

知戰之日、知戰之地、千里而戰。

zhī zhàn zhī rì、zhī zhàn zhī dì、qiān lǐ ér zhàn。

解読文

①戦闘する日に達すると感じて、戦闘に至る場所を識別した時、数多くの元敵里を陣地にしている将軍は敵国を恐れ震えさせるのである。

②日を追う毎に戦闘勃発に向かっていると感じれば、軍隊の勢いで優劣を争おうとする将軍は、数多くの元敵里に赴いて戦闘する場所について知識を得るのである。

③数多くの元敵里を行き来する将軍は、正攻法部隊を使って軍隊の勢いで優劣を争うことを理解して、戦闘に使う場所を識別するのである。

④戦闘に使う場所を数多くの元敵里の住民に知らせれば、戦闘する日に達すると知られるようになって敵国を恐れ震えさせるのである。
書き下し文
①戦う日に之(いた)ること知りて、戦いに之(いた)る地を知るに、千なる里ある而(なんじ)は戦(おのの)かしむなり。

②日に戦いあるに之(ゆ)くと知れば、戦わんとする而(なんじ)は、千なる里に之(ゆ)きて戦う地を知るなり。

③千なる里に戦(そよ)ぐ而(なんじ)は、日を之(もち)いて戦うこと知りて、戦いに之(もち)いる地を知るなり。

④戦いに之(もち)いる地を千なる里に知(ち)すれば、戦う日に之(いた)ること知(あらわ)れて戦(おのの)かしむなり。
<語句の注>
・1つ目の「知」は①②感じる、③理解する、④知られるようになる、の意味。
・1つ目の「戦」は①戦をする、②争い、③優劣を争う、④戦をする、の意味。
・1つ目の「之」は①ある地点や事情に達する、②赴く、③使う、④ある地点や事情に達する、の意味。
・「日」は①ある特定の日、②日を追う毎に、③太陽、④ある特定の日、の意味。
・2つ目の「知」は①識別する、②知識を得る、③識別する、④知らせる、の意味。
・2つ目の「戦」は①争い、②戦をする、③④争い、の意味。
・2つ目の「之」は①ある地点や事情に達する、②赴く、③④使う、の意味。
・「地」は①②③④其一2-5①「地」、の意味。
・「千」は①②③④非常に数が多いさま、の意味。
・「里」は①②③④住民の集落(里)、の意味。
・「而」は①②③あなた、④順接の関係を表す接続詞、の意味。
・3つ目の「戦」は①(恐れや寒さのために)震える、②優劣を争う、③揺れ動く、④(恐れや寒さのために)震える、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「里」の“住民の集落(里)”は、将軍が情報収集のために行き来しているため、侵略していく過程で敵国から奪い取って陣地にした元敵里と考察。結果、「元敵里」と解読。②③④も同様に解読。

<②について>
・3つ目の「戦」の“優劣を争う”は、其五5-4④「荒々しい軍隊の勢いで優劣を争って敵軍を劣勢にさせる優れた将軍は思いやりの才能がある」等の意味を積み上げていると考察し、「軍隊の勢いで優劣を争う」と解読。

<③について>
・1つ目の「戦」の“優劣を争う”は、②3つ目の「戦」と同様に「軍隊の勢いで優劣を争う」と解読。

・「日」の“太陽”は、其五2-3の「日月」の喩え表現によって「日」は「正攻法部隊」、「月」は「奇策部隊」を指すこと考察できる。結果、「正攻法部隊」と解読。

・3つ目の「戦」の“揺れ動く”は、陣地にした元敵里を将軍が行き来することと考察。結果、「行き来する」と解読。

<④について>
・「戦闘する日に達すると知られるようになって敵軍を恐れ震えさせる」で敵軍が恐れ震える理由は、其七4-3①「敵里を奪い取れば多人数の正攻法部隊に割り当て、陣地を開拓して統治して兵糧と飼料を各部隊に配分するのであり、開拓した陣地を繋ぎ止めて全軍の権勢が生じれば、自軍が行動し始めた時、敵軍に危険を感じさせることができるのである」を実現した自軍が最後の決戦に動き出したからだと考察できる。つまり、劣勢の敵国は、“戦闘する日”が自軍に攻め落とされる日になることを理解しているからこそ恐れ震えているのです。

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