適の唯だ衆きのみならば、闘めること毋からしめて可とするなり。

其六4-12

適唯衆、可毋鬭也。

shì wéi zhòng、kĕ wú dòu yě。

解読文

①敵軍が、ただ兵士数が多いだけならば、集合させないことを利点とするのである。

②兵士数が多いだけの敵軍が集合しなければ、敵軍は広がって自軍と対峙するだけである。

③敵軍がただ広がっているだけならば、軍隊の勢いで優劣を争う自軍と争う敵部隊は存在しないのである。

④自軍と争うこと無く対峙する敵部隊は、自国に服従させることによって自軍の兵士数を増やすのである。
書き下し文
①適の唯(た)だ衆(おお)きのみならば、闘(あつ)めること毋(な)からしめて可とするなり。

②闘(あつ)めること毋(な)ければ、適は唯(た)だ衆なりて可(あ)たるのみなり。

③適の唯(た)だ衆なるのみならば、闘(たたか)わすものに可(あ)たるもの毋(な)きなり。

④闘うこと毋(な)く可(あ)たるものは、適(したが)わしむことに唯(よ)り衆(おお)くするのみなり。
<語句の注>
・「適」は①②③敵、④順応する、の意味。
・「唯」は①ただ~だけ、②~するだけである、③ただ~だけ、④~によって、の意味。
・「衆」は①数が多い、②③広い、④数を増やす、の意味。
・「可」は①長所、②向き合う、③対する、④向き合う、の意味。
・「毋」は①②~しない、③存在しない、④~しない、の意味。
・「闘」は①②集合する、③優劣を比べる、④争う、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「敵雖衆、可毋鬭也。」と「適」を「敵」とし、「唯」を「雖」とするが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。但し、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文では「鬭」は「𧯞」とするが、「𧯞」の異体字は「鬭」であるため、孫子(講談社)同様に「鬭」と置き換えた。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・特に無し。

<②について>
・「闘」の“集合する”は、①「闘」で記述した「敵軍が、ただ兵士数が多いだけならば、集合させない」の意味を積み上げていると考察。結果、使役形で「兵士数が多いだけの敵軍が集合する」と解読。

<③について>
・「闘」の“優劣を比べる”は、「戦」の“優劣を争う”と同意と解釈。其五5-4④「荒々しい軍隊の勢いで優劣を争って敵軍を劣勢にさせる優れた将軍は思いやりの才能がある」等の意味を積み上げていると考察し、「軍隊の勢いで優劣を争う」と解読。

・「可たるもの」の直訳は“対する者”となる。これは、軍隊の勢いで優劣を争う自軍と争う者と解釈でき、尚且つ、敵軍は広がって分断されている状態を考慮し、「争う敵部隊」と解読。

<④について>
・「闘うこと毋く可たるもの」の直訳は“争うこと無く向き合う者”となる。これは、③「可」の「軍隊の勢いで優劣を争う自軍と争う敵部隊は存在しない」の意味を積み上げていると考察。結果、「自軍と争うこと無く対峙する敵部隊」と解読。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。