故に、其の疾きこと風の如く、其の徐きこと林の如く、侵して掠めること火の如く、動かざること山の如く、知るを難くすること陰の如く、動かすこと震えて雷す如し。

其七4-2

故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、不動如山、難知如陰、動如雷震。

gù qí jí rú fēng、qí xú rú lín、qīn lüè rú huǒ、bù dòng rú shān、nán zhī rú yīn、dòng rú leí zhèn。

解読文

①それで、自軍が勢いよく急いで行軍する時は流動的な風のように大軍十万は隊列を変化して分断するのであり、自軍がゆっくりと穏やかに行軍する時は樹木が群がった林のように集合して大軍十万をまとめるのであり、正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していく様子はまるで広がっていく火災が逃げ場を奪って火のない所へ人を導く様子に等しく、奇策部隊が動かず静止したまま存在に気付かれない様子はまるで高くそびえた山の存在に注目する人がいない様子に等しく、奇策部隊の出撃する場所と時機の識別を難しくさせる様子はまるで曇り空から変化していく天気を正確に識別できない様子に等しく、敵軍に節目が生じた時機を見逃さず奇策部隊が出撃して攻め取る様子はまるで激しい雷が突然一点目掛けて落ちて容易く破壊することに等しい。

②敵将軍を憂えさせる汙直の計を使った時は流動的な風のように大軍十万は隊列を変化して分断するのであり、しかし、やがて樹木が群がった林のように集合して大軍十万をまとめるのである。敵里を奪い取る時は接近して火災に至らせて外界と隔絶させて敵人民を騒がせるのであり、自軍来襲の危機を感じても曇り空から変化していく天気を正確に識別できない様子に等しく次の展開を正しく判断できないのであり、正攻法部隊が行動し始めて敵人民に危険を感じさせる時は、鳴り響く雷に恐れて耳が未熟になるように敵人民は正攻法部隊に恐れて奇策部隊の出撃に意識が向かないのである。

③自軍の将軍が、敵将軍の可愛がる者を殺害して心を痛めさせる戦術を仕掛けるつもりだという噂を起こし、敵将軍の可愛がる者がそろそろと人が寄り集まる場所に移動する時に接近して斬れば、敵将軍は大いに怒って心が揺さぶられるのであり、外界と隔絶した状態に等しく無気力になって自軍との戦争に向き合わない。威厳ある敵将軍を無気力にさせるに至れば自軍は発動するのであり、その敵将軍は自軍来襲の危機に及ぶと理解していても軽視するのである。

④このように敵将軍の可愛がる者を殺害して心を痛めさせる戦術を実行した時、樹木が群がった林のように集合して大軍十万をまとめてゆっくり行軍して自軍の勢いをひどく激しくすれば、敵兵達は散り散りに駆け逃げる状態に至るのである。敵将軍が怒っても次第にその怒りを奪い取って大いに震えさせるのであり、高くそびえたった山に等しく敵将軍は微動だにしない。ひどく激しい勢いを生じさせた堅固な自軍が到着して敵将軍の心を揺さぶれば、敵将軍は国家滅亡の危機と理解しても既に敗北した状態に等しいのである。
書き下し文
①故に、其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(ゆる)きこと林の如く、侵(おか)して掠(かす)めること火の如く、動かざること山の如く、知るを難(かた)くすること陰(いん)の如く、動かすこと震(ふる)えて雷(らい)す如し。

②其の疾(なや)ましむ故なすに風の如くし、其の徐(おもむ)ろに林の如くす。掠(かす)めるに侵(おか)して火に如(ゆ)かしめて山に如(ゆ)かしめ、不(おお)いに動かしむなり、難(わざわ)いありと知るも陰(いん)の如くし、動くに雷(かみなり)ありて震(ふる)える如し。

③其の疾(や)む故なさんとする風あるに如(し)かしめ、其の徐(おもむ)ろに林に如(ゆ)くに侵(おか)して掠(りゃく)すれば、不(おお)いなる火に如(ゆ)きて動かしむなり、山にある如くす。震(しん)あるもの雷(らい)すに如(ゆ)けば動かすなり、難(わざわ)いに如(し)くと知るも陰(いん)にするなり。

④其れ故なすに、林の如くして徐(じょ)して疾(しつ)なれば、其の風(ふう)すに如(ゆ)くなり。火に如(ゆ)くも侵(ようや)く掠(かす)めて不(おお)いに動かしむなり、山の如くす。震(しん)ある雷(らい)の如(ゆ)きて動かしめば、難(わざわ)いと知るも陰(いん)なる如し。
<語句の注>
・「故」は①それで、②③④たくらみ、の意味。
・1つ目の「其」は①彼ら、②③敵の代名詞、④このように、の意味。
・「疾」は①ひどく激しい、急ぐさま、②物事を憂える、③心を痛める、④ひどく激しい、の意味。
・1つ目の「如」は①~のようである、②~のようにする、③及ぶ、④至る、の意味。
・「風」は①②空気が流動する現象(風)、③噂、④散り散りに駆け逃げる、の意味。
・2つ目の「其」は①彼ら、②しかし、③④敵の代名詞、の意味。
・「徐」は①ゆっくり歩く、穏やかなさま、②やがて、③そろそろと、④ゆっくり歩く、の意味。
・2つ目の「如」は①~のようである、②~のようにする、③及ぶ、④~のようにする、の意味。
・「林」は①②群がってはえている樹木、③人又は事物の寄り集まる場所、④群がってはえている樹木、の意味。
・「侵」は①攻め込む、②③接近する、④次第に、の意味。
・「掠」は①②奪い取る、③(木を)きる、④奪い取る、の意味。
・3つ目の「如」は①~のようである、②③④至る、の意味。
・「火」は①②火災、③④怒り、の意味。
・「不」は①~しない、②③④大いに、の意味。
・1つ目の「動」は①静止状態から変わる、②騒ぐ、③心を揺さぶる、④震える、の意味。
・4つ目の「如」は①~のようである、②至る、③④等しくする、の意味。
・「山」は①陸地の隆起し高くそびえたった所(山)、②③世俗と隔絶した地のたとえ、④陸地の隆起し高くそびえたった所(山)、の意味。
・「難」は①難しくさせる、②③④危機、の意味。
・「知」は①識別する、②感じる、③④理解する、の意味。
・5つ目の「如」は①②~のようである、③及ぶ、④同様である、の意味。
・「陰」は①②曇り、③軽視する、④死や死者に関わるさま、の意味。
・2つ目の「動」は①発動する、②其五5-3④「動」、③発動する、④心を揺さぶる、の意味。
・6つ目の「如」は①②~のようである、③④至る、の意味。
・「雷」は①叩く、②雷が鳴る、③撃つ、④敵を攻撃するのに用いた石、の意味。
・「震」は①雷が落ちる、早い、激しい、②恐れる、③威厳、④勢い、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は「・・・難知・・・」以外が欠落しているため、孫子(講談社)の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

・この句について詳しく解説したページがあります。
孫子の名言「其の疾きこと風の如く、其の徐なること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」の間違い

<①について>
・1つ目と2つ目の「其」の“彼ら”は、其七4-1④「生存した元敵兵達が仲間になっても虚偽の姿勢と見なすのであり、元敵兵達を中隊の真ん中に配置して巧みに動員するのであり、移動する自軍は分断と集合を使うのである」に登場した、元敵兵達を中隊の真ん中に配置した自軍を指すと考察。但し、ここでは簡潔に「自軍」と解読。

・「其の疾きこと」は、「其」を「自軍」、「疾」を“ひどく激しい”と“急ぐさま”の掛け言葉と解釈すれば“自軍がひどく激しく急ぐさま”となる。これは其七4-1④「移動する自軍は分断と集合を使う」を受けた句と考察すれば、行軍の速度を指すと解釈できる。結果、「自軍が勢いよく急いで行軍する時」と解読。

・「風の如し」の直訳は“空気が流動する現象のようである”となる。これは空気の流動性を軍隊の流動性の喩えにしていると考察。また、少し前に其七3-2①「隊列の型を理解していない将軍は、軍隊を統率して行軍させることができない」の記述があることを踏まえると、軍隊は風のように自由に隊列を変えるのであり、これは其七4-1④「移動する自軍は分断と集合を使う」の「分断」とわかる。また、分断する軍隊は、これまでの話の流れから大軍十万(其七2-1①「軍」)と解釈する。結果、「流動的な風のように大軍十万は隊列を変化して分断する」と解読。②も同様に解釈。

・「其の徐きこと」は、「其」を「自軍」、「徐」を“ゆっくり歩く”と“穏やかなさま”の掛け言葉と解釈すれば“自軍がゆっくりと穏やかなさま”となる。これは「其の疾きこと」との対句と考察すれば、「自軍がゆっくりと穏やかに行軍する時」と解読。

・「林の如し」の直訳は“群がってはえている樹木のようである”となる。これは其五5-2「木石」が「人民、兵士」の喩えであることを踏まえると、林の樹木が群がっている様子を密集した軍隊の喩えにしていると考察できる。また、少し前に其七3-2①「隊列の型を理解していない将軍は、軍隊を統率して行軍させることができない」の記述があることを踏まえると、軍隊は林のように密集して隊列を整えているのであり、これは其七4-1④「移動する自軍は分断と集合を使う」の「集合」とわかる。また、分断する軍隊は、これまでの話の流れから大軍十万(其七2-1①「軍」)と解釈する。結果、「樹木が群がった林のように集合して大軍十万をまとめる」と解読。②④も同様に解釈。

・「侵して掠めること火の如し」の直訳は“攻め込んで奪い取る様子は火災のようである”となる。これは火災が発生した時に、燃えている場所がどんどん広がって逃げ場を奪い取られていく状況を、軍隊がどんどんと攻め込んで敵の逃げ場を奪い取っていく状況の喩えにしていると考察。
これは奇正の戦術であり、敵の逃げ場を奪い取って奇策部隊が隠れている場所に誘導する文意と解釈できる。つまり、敵の逃げ場を奪い取っていくのは正攻法部隊だとわかる。さらに、火災が発生すれば人は燃えていない安全な場所に移動するため、正攻法部隊がいない場所に敵が逃げていく様子の喩えであることもわかる。
結果、これら解釈を踏まえて「正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していく様子はまるで広がっていく火災が逃げ場を奪って火のない所へ人を導く様子に等しい」と解読。

・「動かざること山の如し」の直訳は“静止状態から変わらない様子は高くそびえたった山のようである”となる。まず、高くそびえた山を想像してみると、山は目の前に存在しているが、静止したまま動かないため山の存在に注目しない人が大半と言える。これは、其六6-6①「解読の注」で「敵には奇策部隊が消えたり、出現したりするように見える」と解釈した神出鬼没な奇策部隊の在り方と合致する。つまり、主語は奇策部隊であり、「侵掠如火」と対句の関係とわかる。結果、「奇策部隊が動かず静止したまま存在に気付かれない様子はまるで高くそびえた山の存在に注目する人がいない様子に等しい」と解読。

・「知るを難くすること陰の如し」の直訳は“識別を難しくさせる様子は曇りのようである”となる。まず、曇りとは、次の天気は晴れるのか、それとも雨が降るのかが識別できない現象と解釈できる。戦闘において次に起こる現象が識別できない状況は、「不動如山」で奇策部隊が待機している状況を踏まえると、奇策部隊の出現する場所と時機が識別できないのだと考察できる。結果、「奇策部隊の出撃する場所と時機の識別を難しくさせる様子はまるで曇り空から変化していく天気を正確に識別できない様子に等しい」と解読。

・「動かすこと震えて雷す如し」の直訳は、雷が落ちる現象は一点目掛けて瞬間的に落ちることを踏まえた上で、「震」は“雷が落ちる”と“早い”と“激しい”の掛け言葉と解釈すれば“発動する時は激しい雷が突然一点目掛けて落ちて叩くようである”となる。この「動」の“発動する”は、「不動如山」の「動」との関連性より、静止したまま動いていない奇策部隊が出撃することと考察できる。
また、「雷」の“叩く”は、其五1-4①「段」の“槌で打つ”に関連すると解釈できるため、其五1-4①「自分の方に投げられた脆い卵を目にとめて固い木槌で打つに等しく自軍に向かって来る脆い敵軍を認識して固い自軍で打ち破る」に基づけば、激しい雷が木々等を容易く破壊する様子を指すと解釈できる。さらに、真意は其五3-2④「撃」の“叩く”で記述された其五3-2④「堅固な“実”の奇策部隊を使って獲物となった敵部隊を容易く打ち破る時、獲物となった敵部隊をこの上なく損ない混乱させる理由は、攻め取る節目と時機の判断を下す間者が存在するからである」の意味を積み上げていると考察できる。つまり、奇策部隊は虚実の教えを実践し、尚且つ「節目と時機」を見逃さないと解釈できる。この節目は言わば敵軍の弱点であり、「節目」は「獲物となった敵部隊」を指しており、この弱点を目掛けて奇策部隊が出撃する様子は雷が一点目掛けて落ちる現象に通じるため適当と判断できる。結果、「敵軍に節目が生じた時機を見逃さず奇策部隊が出撃して攻め取る様子はまるで激しい雷が突然一点目掛けて落ちて容易く破壊することに等しい」とした。

<②について>
・「其の疾ましむ故」の直訳は“敵を憂えさせるたくらみ”となる。これは解読文①で「分断」しているため、其七2-6④「全軍を完全な状態を保って敵里の人民をたしなめる将軍は、周到に行き届いて分かれるのであり、大軍十万を三つに分断しても巡り合わせが良い進路を使うのである」に基づけば、敵里を奪い取って陣地にしていく「汙直の計」について記述していることがわかる。その上で“憂えさせる”の意味に着眼すれば、其七1-2②「先を争って敵里に陣取る将軍は、気持ちが通じ合う諸侯に文書を届けて分岐路にある瞿地に布陣させ、敵軍の進路を妨害してその前進を制止するのであり、敵将軍を思い悩ませて留まらせた状態で順調に敵里を奪い取って統治し、多くの陣地を手に入れるのである」の「汙直の計」の記述と合致する。結果、「敵将軍を憂えさせる汙直の計」と解読。

・「掠」の“奪い取る”は、「汙直の計」に関する話の流れ続いていると解釈できるため、「敵里を奪い取る」と補って解読。

・「火に如かしむ」の「火災に至らせる」は、其十三2-1①「お手本は、敵里等の内部で巧みに仕掛けた火災を生じさせた時、すぐさま正攻法部隊が敵里等の外側から内部に突入するのである」と記述された敵里等への侵入する教えを参考にした。

・「山に如かしむ」の直訳は“世俗と隔絶した地ように至らせる”となる。これは火災を発生させることで敵里を外界から隔絶することと考察。結果、「外界から隔絶させる」と解読。

・1つ目の「動」の“騒ぐ”は、火災が発生して外界から隔絶されたことで敵里の人民が騒いでいる状態を指すと考察。結果、使役形で「敵人民を騒がせる」と補って解読。

・「難」の“危機”は、火災を仕掛けられた敵里の人民にとっての危機であり、話の流れより自軍来襲の危機と解釈できる。結果、「自軍来襲の危機」と解読。③も同様に解読。

・「陰の如くす」の直訳は“曇りのようにする”となる。解読文①同様に、曇りを次の天気は晴れるのか、それとも雨が降るのかが識別できない現象と解釈すれば、話の流れより敵里の人民が「自軍来襲の危機」と感じても次の展開を正しく判断できない状態の喩えと解釈できる。結果、「曇り空から変化していく天気を正確に識別できない様子に等しく次の展開を正しく判断できない」と解読。

・2つ目の「動」は、其五5-3④「動」の「軍隊が行動し始めれば敵軍に危険を感じさせる」と同意と考察。ここでは話の流れに合わせて「動に如く」で「正攻法部隊が行動し始めて敵人民に危険を感じさせる」と解読。

・「雷ありて震える如し」の直訳は“雷が鳴って恐れるようである”となる。これは、其四3-3③「聞く雷に不いに霆するものは耳蔥せんとす」の「遠くから聞こえてくる雷の音を大いに恐れる者はじきに耳が未熟になって雷の音を聞こうとしないのである」の状態に敵人民を追い込む意図があると考察。この“雷の音”は行動し始めた正攻法部隊であり、①「雷」の「奇策部隊が出撃して攻め取る」意味を受けていると考察すれば “耳が未熟”は敵人民が奇策部隊の出撃を警戒していない状態と解釈できる。結果、「鳴り響く雷に恐れて耳が未熟になるように敵人民は正攻法部隊に恐れて奇策部隊の出撃に意識が向かないのである」と解読。

<③について>
・「其の疾む故」の直訳は“敵が心を痛めるたくらみ”となる。この“たくらみ”は其二5-1⑥「可愛がる者を武器で殺して敵将軍に災いを生じさせ、大いに無気力にさせる」を指すと考察。結果、「敵将軍の可愛がる者を殺害して心を痛めさせる戦術」と補って解読。

・2つ目の「其」の“敵の代名詞”は、「敵将軍の可愛がる者」を指示する代名詞と解読。

・「掠」の“(木を)きる”は、其五5-3等で「木と石」が人民(又は兵士)の喩えであることを踏まえると“人を斬る”と解釈できる。結果、「(敵将軍の可愛がる者を)斬る」と解読。

・「山にある如くす」の直訳は“世俗と隔絶した地にいるに等しくする”となる。これは敵将軍が其二5-1⑥「可愛がる者を武器で殺して敵将軍に災いを生じさせ、大いに無気力にさせる」の無気力になって自軍との戦争に向き合えなくなった状態と考察。結果、「外界と隔絶した状態に等しく無気力になって自軍との戦争に向き合わない」と解読。

・「震あるもの雷す」の直訳は“威厳ある者を撃つ”となる。話の流れより“威厳ある者”は敵将軍とわかる。また、“撃つ”は敵将軍の心を撃つことと解釈すれば無気力にさせること考察できる。結果、「威厳ある敵将軍を無気力にさせる」と解読。

<④について>
・「故」の“たくらみ”は、③「敵将軍の可愛がる者を殺害して心を痛めさせる戦術」を指すと考察。結果、「敵将軍の可愛がる者を殺害して心を痛めさせる戦術」と解読。

・「疾」の“ひどく激しい”は、其五3-1④「疾」の「ひどく激しい軍隊の勢い」の意味を積み上げていると考察。結果、「疾なり」で「自軍の勢いをひどく激しくする」と解読。

・「火に如くも侵く掠める」の直訳は“怒りに至っても次第に奪い取る”となる。これは、ひどく激しい勢いの自軍に対して、散り散りに駆け逃げる敵兵達に対して敵将軍が怒っているのだと解釈できる。結果、「敵将軍が怒っても次第にその怒りを奪い取る」と解読。

・「山の如くす」の直訳は“高くそびえたった山に等しくする”となる。“高くそびえたった山”は静止したまま動かない存在であり、震えている敵将軍が微動だにしない状態を喩えていると考察。結果、「高くそびえたった山に等しく敵将軍は微動だにしない」と解読。

・「震ある雷」の直訳は“勢いある敵を攻撃するのに用いた石”となる。これは、其五5-2②「石」で記述された其五5-2②「石を丸太にころがり落とすに等しく勢いを生じさせた堅固な自軍で脆い敵軍に向かって前進させる」の「勢いを生じさせた堅固な自軍」を指すと考察。さらに、「疾」の「自軍の勢いをひどく激しくする」の解読結果を踏まえると、「ひどく激しい勢いを生じさせた堅固な自軍」と解読できる。

・「難」の“危機”は、ひどく激しい勢いの自軍に対して震えている敵将軍が感じる危機であるため国家滅亡の危機と解釈できる。結果、「国家滅亡の危機」と解読。

・「陰なる如し」の直訳は“死者と同様である”となる。これは敵将軍が死者同様に既に敗北した状態の喩えと考察。結果、「既に敗北した状態に等しいのである」と解読。

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