鼓金と旌旗を所に以いる者は、民の耳と目を壱にせしむなり。

其七5-3

鼓金旌旗者所以、壹民之耳目也。

gǔ jīn jīng qí zhě suǒyǐ yī、mín zhī ěrmù yě。

解読文

①太鼓の音と旗印を正しい方法で使用する将軍は、兵士達の耳と目を集中させるのである。

②兵士達の耳と目を太鼓の音と旗印に集中させる正しい方法で使用する将軍は、指示の目印を示した上で、褒賞の品によって兵士達を奮い起こすのである。

③褒賞の品によって兵士達を奮い起こす将軍は指示の目印を示す場所を考えるのであり、軍隊の各隊長が兵士達に指示の目印全てを伝えるのである。

④褒賞の品と指示の目印を示す将軍は、軍隊の各隊長にこれを伝えるのであり、太鼓の音と旗印に集中させた兵士達に対して兵士達を力づける道理を使って羊の集まりを導くように軍隊を動かすのである。
書き下し文
①鼓金(こきん)と旌旗(せいき)を所に以(もち)いる者は、民の耳と目を壱(いつ)にせしむなり。

②民の耳と目を之に壱(いつ)にせしむ所を以(もち)いる者は、旗(き)を旌(あらわ)して金(きん)に鼓(こ)するなり。

③金(きん)に鼓(こ)する者は旗(き)を旌(あらわ)す所を以(おも)うなり、目は民に壱(いつ)に之を耳にせしむなり。

④金(きん)と旗(き)を旌(あらわ)す者は、目に之を耳にせしむなり、壱(いつ)にせしむ民に所を以(もち)いて鼓(ふ)るうなり。
<語句の注>
・「鼓」は①太鼓、②③奮い起こす、④振り動かす、の意味。
・「金」は①鐘やどらの音、②③④財貨、の意味。
・「旌」は①旗の通称、②③④表示する、の意味。
・「旗」は①②③④印、の意味。
・「者」は①②③④助詞「もの」、の意味。
・「所」は①②正しい方法、③場所、④道理、の意味。
・「以」は①②使用する、③考える、④使用する、の意味。
・「壱」は①②専一にする、③全て、④専一にする、の意味。
・「民」は①②③④庶民、の意味。
・「之」は①助詞「の」、②③④代名詞、の意味。
・「耳」は①②音を聞く器官(耳)、③④聞く、の意味。
・「目」は①②(ものを見る)眼、③④上にたつ人、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「民」の“庶民”は、他句の大半では人民と解読するが、ここでは軍隊に関する教えであるため、軍隊に編制された「兵士達」と解読。②③④も同様に解読。

<②について>
・「之」は、①「鼓金と旌旗」の「太鼓の音と旗印」を指示する代名詞と解読。

・「旗」の“印”は、「太鼓の音と旗印」によって軍隊を動かした際、兵士達が目印とするものと考察。結果、「指示の目印」と解読。③④も同様に解読。

・「金」の“財貨”は、金品であり、兵士達に対する「褒賞の品」と考察。結果、「褒賞の品」と解読。③④も同様に解読。

<③について>
・「之」は、①「旗」の「指示の目印」を指示する代名詞と解読。

・「目」の“上にたつ人”は、其七5-1①「軍隊の各隊長」を指すと考察。結果、「軍隊の各隊長」と解読。④も同様に解読。

<④について>
・「之」は、「金と旗」の「褒賞の品と指示の目印」を指示する代名詞と解釈。ここでは冗長にならないように「これ」と解読。

・「壱にせしむ民」は、「民」を「兵士達」と解釈すれば“集中させた兵士達”となる。これは、①「太鼓の音と旗印を正しい方法で使用する将軍は、兵士達の耳と目を集中させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「太鼓の音と旗印に集中させた兵士達」と解読できる。

・「所」の“道理”は、其七5-2④「兵士達を力づける道理」と同意と考察。結果、「兵士達を力づける道理」と解読。

・「鼓」の“振り動かす”は、其十一5-5⑥「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」を指すと考察。結果、「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」と解読。

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