利に雑えるに、故より信ある可に務めるなり。

其八2-2

雜於利、故務可信。

zá yú lì、gù wù kĕ xìn。

解読文

①様々な利点を組み合わせて自軍の立場を確かにする時は、必ず信ずるに足る利点を追求するのである。

②信ずるに足る利点を組み合わせて軍隊の勢いを激しく旺盛にして、戦略、戦術に力を尽くすのである。

③戦略、戦術に力を尽くした時、勝利に値する状態に至ったことを疑わなければ、都合が悪い状況と思っている敵将軍と会合するのである。

④敵将軍と会合して勝利する時は、敵将軍に対して、敗北した敵軍を平定させる役目に同意させる使者が存在するのである。
書き下し文
①利に雑(まじ)えるに、故(もと)より信ある可に務めるなり。

②信ある可を雑(まじ)えて利を於(な)して、故に務めるなり。

③故に務めるに、利する可(べ)きを於(な)すと信ずれば、雑(あつ)まるなり。

④雑(あつ)まりて利を於(な)すに、故の務めに可(き)かしむ信(つか)いあるなり。
<語句の注>
・「雑」は①②組み合わせる、③④会合する、の意味。
・「於」は①~を、②③④~とする、の意味。
・「利」は①よい点、②勢い、③④勝利、の意味。
・「故」は①必ず、②③たくらみ、④ならわし、の意味。
・「務」は①追求する、②③力を尽くす、④役目、の意味。
・「可」は①②長所、③~に値する、④同意であるさま、の意味。
・「信」は①②信ずるに足る、③疑わない、④使者、意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は前半が欠落して「・・・利、故務可信」とするため、欠落部分は「雜於」は孫子(講談社)の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「利」の“良い点”は、其八2-1①「」同様に「様々な利点」と解読。

・「雑」の“組み合わせる”は、其八2-1①「雑」で記述された「様々な利点と都合が悪いと思うことを組み合わせて自軍の立場を確かにする」の意味を積み上げていると考察。結果、「組み合わせて自軍の立場を確かにする」と補って解読。

<②について>
・「利」の“勢い”は、其八2-1③「利」で記述された「軍隊の勢いを激しく旺盛にする」の意味を積み上げていると考察。結果、「利を於す」で「軍隊の勢いを激しく旺盛にする」と解読。

<③について>
・「雑」の“会合する”は、其八2-1④「雑」で記述された「都合が悪い状況と思っている敵将軍と必ず会合する」の意味を積み上げていると考察。結果、「都合が悪い状況と思っている敵将軍と会合する」と補って解読。

<④について>
・「雑」の“会合する”は、③「雑」の「都合が悪い状況と思っている敵将軍と会合する」の意味を積み上げていると考察。結果、ここでは冗長にならないように「敵将軍と会合する」と簡潔に解読。

・「故の務めに可かしむ信い」の直訳は“ならわしの役目に同意させる使者”となる。これは、其十三4-3⑥「敵将軍に、戦うことなく相手を抑えつけて完全な状態に保てる道理に至ったことを認めさせて、敵将軍を引き立て用いて敗北した敵軍を平定させる」に基づけば、「敵将軍に対して、敗北した敵軍を平定させる役目に同意させる使者」と解読できる。

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