生ずるものを視るものは高に処するなり、水に流して迎えること無し。此、水の上を之いて軍する処なり。

其九1-7

視生處高、無迎水流。此處水上之軍也。

shì shēng chù gaō、wú yíng shuǐ liú。cǐ chù shuǐ shàng zhī jūn yĕ。

解読文

①自国と戦争しようとして出現した敵軍を隠れて観察する自軍は高い所に配置するのであり、河川に留まって来襲した敵軍に立ち向かうことが無い。これが、河川の傍を使って軍隊を配置するお手本である。

②勢いを生じた正攻法部隊になる措置をして出現した敵軍をあしらうのであり、未来を予測することを蔑ろにさせて河川で敵軍半分を追い払って、残りの敵軍半分を水没させるのでる。これが、正攻法部隊を使って、敵軍半分を水没させて敵兵達を取得するお手本である。

③生存した敵兵達は落ち着かせて生活の収入を高く引き上げるのであり、出迎えて救出する敵部隊は存在しなければ、生存した敵兵達は豊富な収入を選ぶのである。このように豊富な収入を献上するお手本を実行すれば自軍の兵士に変わるのである。

④生け捕りにした敵兵達は罰すること無く敬うのであり、自軍で受け入れて治めてどんどん兵士数を増やせば、敵軍を追い払うのである。このように生け捕りにした敵兵達を自軍に編制することを定めて、どんどん兵士数を増やすことを尊重するのである。
書き下し文
①生ずるものを視(み)るものは高に処(しょ)するなり、水に流(りゅう)して迎えること無し。此、水の上を之(もち)いて軍する処なり。

②高くすること処(しょ)して生ずるものを視(み)るなり、迎えること無(なみ)せしめて流して水にするなり。此、軍を之(もち)いて、水にして上(たてまつ)らしむ処なり。

③視(い)きるものは処(お)りて生は高くするなり、迎えるもの無(な)ければ、水を流(もと)めるなり。此(か)く水を上(たてまつ)る処なせば軍に之(ゆ)くなり。

④生は処(しょ)すること無く高しとするなり、迎えて視(み)て水なせば流すなり。此(か)く之を軍すること処(しょ)して、水なすこと上(たっと)ぶなり。
<語句の注>
・「視」は①観察する、②あしらう、③生存する、④治める、の意味。
・「生」は①②出現する、③生活、④生け捕りにした者、の意味。
・1つ目の「処」は①配置する、②措置する、③落ち着かせる、④罰する、の意味。
・「高」は①高い所、②盛大なさま、③(値段を)高く引き上げる、④敬う、の意味。
・「無」は①無い、②蔑ろにする、③存在しない、④無い、の意味。
・「迎」は①出会う、②未来を予測する、③出迎える、④受け入れる、の意味。
・1つ目の「水」は①河川、②水没させる、③大水、④水の流れ、の意味。
・「流」は①留まる、②追い払う、③選ぶ、④追い払う、の意味。
・「此」は①②代名詞、③④このように、の意味。
・2つ目の「処」は①②③規律、④定める、の意味。
・2つ目の「水」は①河川、②水没させる、③大水、④水の流れ、の意味。
・「上」は①傍、②③献上する、④尊重する、の意味。
・「之」は①②使う、③変わる、④代名詞、の意味。
・「軍」は①軍隊を配置する、②軍隊、③兵士、④軍隊に編制する、意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は「・・・・此處水上之軍也。」と前半が欠落しているため、前半部分は孫子(講談社)の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「生ずるもの」の直訳は“出現する者”となる。これは其九1-6①「まさに自国と戦争しようとしている敵軍が出現する」で記述された敵軍を指すと考察。結果、「自国と戦争しようとして出現する敵軍」と補って解読。

・「視るもの」の直訳は“観察する者”となる。これは其九1-5②「自軍が遠く離れた場所から河川に来て、河川を渡って来る敵軍を断ち切って半分にすれば、河川の中にいる敵軍半分を水没させるのである」で記述された、遠く離れた場所にいる自軍を指すと考察。また、其九1-6②「まさに羊の集まりを導くように敵軍を動かそうとしている自軍を無視させて、敵軍を河川に近寄らせるのである」に基づけば、この自軍は来襲した敵軍に無視させるために隠れていることがわかる。結果、「隠れて観察する自軍」と補って解読。

・「迎」の“出会う”は、来襲した敵軍に立ち向かうことと解釈できる。結果、「来襲した敵軍に立ち向かう」と解読。

・「此」は、「視生處高、無迎水流」を指示する代名詞と考察。ここでは「これ」と解読。②も同様に解読。

・2つ目の「処」の“規律”は、其九1-2①2つ目の「」同様に「お手本」と解読。②③も同様に解読。

<②について>
・「高くすること処す」の直訳は“盛大な状態になる措置をする”となる。これは、高い所に配置した自軍を其九1-5②「勢いを生じた正攻法部隊」にすることと考察。結果、「勢いを生じた正攻法部隊になる措置をする」と解読。

・「生ずるもの」は、①「生」同様に「自国と戦争しようとして出現する敵軍」と解釈するが、冗長にならないように「出現した敵軍」と解読した。

・「流」の“追い払う”は、其九1-5②「勢いを生じた正攻法部隊に将軍が号令した時、川の渡し場にいる残り半分の敵軍を攻めれば、河川の中にいる獲物となった敵軍半分を出迎えて救出する敵部隊は存在しない」で記述された、正攻法部隊が攻めて蹴散らした「残り半分の敵軍」が主語と解釈できる。結果、「河川で敵軍半分を追い払う」と補って解読。

・1つ目の「水」の“水没させる”は、其九1-5②1つ目の「水」で記述された「自軍が遠く離れた場所から河川に来て、河川を渡って来る敵軍を断ち切って半分にすれば、河川の中にいる敵軍半分を水没させる」等の意味を積み上げていると考察。結果、話の流れに合わせて「残りの敵軍半分を水没させる」と補って解読。

・「軍」の“軍隊”は、「勢いを生じた正攻法部隊」を指すと考察できる。結果、「正攻法部隊」と解読。

・「水」の “水没させる”は、「残りの敵軍半分を水没させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵軍半分を水没させる」と解読できる。

・「上」の“献上する”は、河川を使った奇正の戦術によって、其九1-5③「将軍は河川の中で止まっている敵軍半分を自軍に付き従わせる」を実現することであり、敵国に来襲した兵士達を献上させることと考察。結果、使役形で「敵兵達を取得する」と読みやすく解読した。

<③について>
・「視きるもの」の直訳は“生存する者”となる。これは②「敵軍半分を水没させて敵兵達を取得する」に基づけば、水没させた敵軍半分の内、取得できた敵兵達が生存者だと解釈できる。結果、「生存した敵兵達」と解読。

・「高」の“値段を高く引き上げる”の“値段”は、其九1-5③「将軍はどんどん増える収入の保証によって敵国から離反させて、攻め取った敵軍半分を自軍の正攻法部隊に仕上げる」に基づけば、収入を指すと考察できる。結果、「収入を高く引き上げる」と解読。

・「迎えるもの無し」は、其九1-5③「迎えるもの勿し」の「出迎えて救出する敵部隊が存在しない」の意味を積み上げていると考察。結果、「出迎えて救出する敵部隊は存在しない」と解読。

・1つ目と2つ目の「水」の“大水”は、其九1-5④1つ目の「水」の「豊富な収入」同様に解読。

<④について>
・1つ目と2つ目の「水」の“水の流れ”は、其四4-4①「洫」の「耕作地にある用水路」を指すと考察すれば、其四4-4①「どんどん兵士数が増えていく」状態を表現していると解釈できる。結果、話の流れに合わせて「どんどん兵士数を増やす」と解読。

・「之」は、「生」の「生け捕りにした敵兵達」を指示する代名詞と解読。

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