生を養いて処れば、実たるなり。是を謂えて必せしめば勝るなり、軍は百めて疾无し。

其九2-2

養生處實。是謂必勝、軍无百疾。

yǎng shēng chù shí。shì wèi bì shèng、jūn wú bǎi jí。

解読文

①生存している兵士達を保養して落ち着かせれば、兵士達は充実して堅固な実の軍隊になる。これを将軍に教育して必ず実行させれば敵軍より優勢になるのであり、兵士達は励み努力して病気は存在しない。

②病気の要素が集まった場所では栄養を補って生存するのである。正しく将軍に教育すれば、必ず病気を患う兵士を無くすことに励み努力して持ち堪えるのである。

③生活必需品を作り出して一杯になれば兵士達を落ち着かせるのである。正しく将軍に教育すれば、必ず豊かな土地で駐屯することに励み努力するのであり、非難する兵士は存在しない。

④奇策部隊が武力で攻め取った敵兵達は、薬や食べ物で治療して落ち着かせれば自軍の兵士となるのである。正しく将軍に教育すれば、軍隊規模を盛大にして自軍の立場を確固たるものにするのであり、敵将軍にその事態を憂えさせて全てを蔑ろにさせるのである。
書き下し文
①生を養いて処(お)れば、実たるなり。是を謂(おし)えて必せしめば勝(まさ)るなり、軍は百(つと)めて疾(やまい)无(な)し。

②実する処に養いて生(い)きるなり。是(ぜ)なりて謂(おし)えれば、必ず疾(や)む軍を无(な)くすに百(つと)めて勝(た)えるなり。

③養を生みて実(み)ちれば処(お)るなり。是(ぜ)なりて謂(おし)えれば、必ず勝(しょう)に軍すに百(つと)むなり、疾(そし)るもの无(な)し。

④生は養いて処(お)れば実(みの)るなり。是(ぜ)なりて謂(おし)えれば、軍を勝(しょう)たらしめて必するなり、疾(なや)ましめて百(およ)そ无(なみ)せしむなり。
<語句の注>
・「養」は①保養する、②栄養を補う、③生活必需品、④薬や食べ物で治す、の意味。
・「生」は①生きている者、②生存する、③作り出す、④生け捕りにした者、の意味。
・「処」は①落ち着かせる、②場所、③④落ち着かせる、の意味。
・「実」は①其五1-4①「実」、②病気の要素が集まる、③一杯になる、④実がなる、の意味。
・「是」は①代名詞、②③④正しい、の意味。
・「謂」は①②③④教える、の意味。
・「必」は①必ず実行する、②③きっと、④立場を確かにする、の意味。
・「勝」は①越える、②持ち堪える、③景色の優れた土地、④盛大な、の意味。
・「軍」は①②兵士、③駐屯する、④軍隊、意味。
・「无」は①②③存在しない、④蔑ろにする(「無」より)、の意味。
・「百」は①②③励み努力する、④全て、の意味。
・「疾」は①病気、②病気を患う、③非難する、④物事を憂える、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「養生而處實、是謂必勝、軍无百疾。」と「而」が入るが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。なお、竹簡孫子の欠落箇所であるため「謂」は「胃」の可能性もあるが、ここでは「謂」のまま解読した。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「実」は、其五1-4①「実」の「充実して堅固な“実”」と同意と考察。つまり、虚実の教えであり、保養させた兵士達を心身ともに充実させれば、その軍隊は堅固な実の状態に達すると解釈できる。結果、「実たり」で「兵士達は充実して堅固な実の軍隊になる」と解読。

・「是」は、「養生處實」を指示する代名詞と考察。ここでは「これ」と解読。

・「謂」の“教える”の相手は、話の流れより軍隊を率いる将軍、上級武将、隊長と解釈できる。ここでは暫定的に「将軍に教える」と補って解読。②③④も同様に解読。

・「勝」の“越える”は、自軍が敵軍よりも優勢になった状態を指すと考察し、「敵軍より優勢になる」と解読。

<②について>
・特に無し。

<③について>
・「養」の“生活必需品”は、其九1-2②「山中の水の流れ」や其九1-2④「山をなすほど多い穀物」、其九1-9④「拠り所にする雨露と燃料や飼料の草」を指すと考察。但し、これ以外にも存在する可能性を考慮してそのまま「生活必需品」と解読。

・「勝」の“景色の優れた土地”は、「生活必需品」の水、飼料、穀物等が手に入る場所と考察。結果、「豊かな土地」と解読。

<④について>
・「生」の“生け捕りにした者”は、奇策部隊が攻め取った敵兵達を指すと考察。なお、奇策部隊は武力で獲物となった敵部隊を撃つため怪我していることを踏まえれば、「奇策部隊が武力で攻め取った敵兵達」と解読できる。

・「実」の“実がなる”は、「奇策部隊が武力で攻め取った敵兵達」を“種“と解釈すれば、”実“は自軍の兵士と喩えていると解釈できる。結果、「自軍の兵士となる」と解読。

・「疾」の“物事を憂える”は、話の流れより軍隊規模を盛大にした自軍に対して敵将軍が憂えるのだと解釈できる。結果、使役形で「敵将軍にその事態を憂えさせる」と補って解読。

・「无」は漢字「無」と同じと解釈。ここでは「無」の“蔑ろにする”意味を採用した。

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