帥は之の与すること期するなり、如ち登せて高くして梯する其の去らしむなり。帥は之を与せしめて深くして、諸なる侯の地を入りて、其の発すること幾うなり。

其十一5-4

帥與之期、如登高而去其梯。帥與之深入諸侯之地、發其幾。

shuaì yŭ zhī qī、rú dēng gaō ér qù qí tī。shuaì yŭ zhī shēn rù zhū hoú zhī dì、fā qí jǐ。

解読文

①最高位の将軍は、攻め取った敵兵達が味方になることを期待するのであり、そこで、その敵兵達を自軍で登用して収入を高く引き上げて、依存する敵国から離反させるのである。最高位の将軍は、攻め取った敵兵達を味方にすることで自軍の兵士数を豊富にして、爵位を持った士大夫が治める多くの里等を自国の統治下に置いて、敵軍に対して火災のようにどんどん攻め込むことを望むのである。

②味方になった元敵兵達を導く元敵兵の世話役が、盛大に収入を増やした状態になると約束すれば、敵国から離反した元敵兵達は自国に依存するのである。元敵兵の世話役は、受け入れて従う味方になった元敵兵達が、爵位を持った士大夫が治める多くの里等において所得が豊かになって貯蓄してくれることを望むのである。

③元敵兵の世話役に抵抗する主導者は、必ず重要人物と名簿に記録するのであり、災いを起こす原因となる元敵兵達を里等の一定の区画に封じるに至るのである。自国に抵抗する主導者に対処した元敵兵の世話役は、里等で人民の生活を支える役人に、元敵兵を記録した名簿を周到に納めることで危険な元敵兵達を明らかにするのである。

④災いを起こす原因となる元敵兵達に対処する、里等で人民の生活を支える役人が、その元敵兵達に対する年貢等を免除することを約束すれば、大きな声ででたらめを言う状態が終わるのである。災いを起こす原因となる元敵兵達を味方にした人民の生活を支える役人は、徹底的に掘り下げて元敵兵を記録した名簿を元敵兵の世話役に献上するのであり、災いを起こす原因となる元敵兵達を中隊の真ん中に配置した状態で戦地に向けて出立するのである。

⑤最高位の将軍は、同盟を結んだ諸侯と戦地で会うことを約束したのであり、そこで将軍の優れた側近をその諸侯に出仕させるのであり、このように災いを誘引する諸侯の問題点を解消するのである。最高位の将軍は、周到に優れた側近を多くの諸侯に出仕させて、その中から出立することを望むのであり、戦地に到達するのを待つのである。

⑥最高位の将軍は、同盟を結んだ諸侯が戦地に到達することを期待して、盛大な勢いが尽きて敵軍から離れたように偽って、梯子を高く登らせるように敵軍を驕り高ぶらせるのである。同盟を結んだ諸侯は少しずつ進軍しながら戦地に赴いて、事前に学習した手本に基づいて全ての指示の目印について精通するのであり、つぶさに調べる時、隠れている敵兵達を見つけ出すだろう。

⑦同盟を結んだ諸侯は、隠れていた敵兵達に対して「必ず現状よりも高い等級で人材登用する」と導くのである。敵国から離反させて自国に依存する状態になれば、同盟を結んだ諸侯は味方になったその敵兵達に尋問して、敵軍の全ての指示の目印のある場所を明らかにするのであり、周到にその目印を没収しながら戦地に赴くのである。

⑧最高位の将軍は、約束した時間に同盟を結んだ諸侯を戦地に到着させるのであり、同盟を結んだ諸侯は奇策部隊の先頭に立って、敵軍の指示の目印を没収した全ての場所に赴いて隠れさせるのである。盛大に兵士数を増やした自軍が、周囲を奇策部隊に取り囲ませて敵軍に対して火災のようにどんどん攻め込んだ時、逃亡して行く敵部隊は奇策部隊が隠れている場所に至るのである。
書き下し文
①帥(すい)は之の与(くみ)すること期するなり、如(すなわ)ち登(のぼ)せて高くして梯(てい)する其の去らしむなり。帥(すい)は之を与(くみ)せしめて深くして、諸なる侯の地を入(い)りて、其の発すること幾(ねが)うなり。

②与(くみ)するものを帥(ひき)いる之は、高く登(のぼ)せるに如(ゆ)くこと期すれば、去る其の而(なんじ)に梯(てい)するなり。之は、帥(したが)う与(くみ)するものの、諸なる侯の地に入りを深くして其れ発(お)こすを幾(ねが)うなり。

③之に与(あ)たる帥(すい)は、期して高く登(のぼ)せて梯(てい)たる其の去るに如(ゆ)くなり。帥(すい)に与(くみ)する之は、地の之に諸なる侯を深く入(い)れて幾(あや)うき其の発(ひら)くなり。

④之に与(くみ)する帥(すい)の、其の梯(てい)する而(なんじ)を去ること期すれば、高きに如(し)くは登(な)るなり。之を与(くみ)せしむ帥(すい)は、深き諸なる侯を之に入(い)れるなり、其の幾(き)して地に発(た)つなり。

⑤帥(すい)は、与(くみ)と之に期するなり、如(すなわ)ち而(なんじ)の高きものを登らしむなり、其れ梯(てい)を去るなり。帥(すい)は、深く之を諸なる侯に入(い)らしめて其の発(た)つこと幾(ねが)うなり、地に之(いた)るを与(とも)にするなり。

⑥帥(すい)は与(くみ)の之(いた)ること期して、高きは登(な)りて去る而(ごと)く其の梯(てい)せしむ如くするなり。与(くみ)は入りて地に之(ゆ)きて、帥(すい)を之(もち)いて諸なる侯に深くするなり、幾(み)るに其の発(あば)かん。

⑦与(くみ)は、之に、期して高く登(のぼ)せると帥(ひき)いるなり。其の去らしめて而(なんじ)に梯(てい)するに如(ゆ)けば、帥(すい)は与(くみ)する其の幾(き)して、諸なる侯の地を発(ひら)くなり、深く入(い)れて之(ゆ)くなり。

⑧帥(すい)は、期に与(くみ)を之(いた)らしむなり、与(くみ)は之を帥(ひき)いて、侯を入(い)る諸なる地に之(ゆ)きて深くせしむなり。高く登(のぼ)せる而(なんじ)の、幾(き)して其の発するに、去る其の梯(てい)に如(ゆ)くなり。
<語句の注>
・1つ目の「帥」は①軍隊における最高位の指揮官、②導く、③④物事を主導する人物や事物、⑤⑥軍隊における最高位の指揮官、⑦導く、⑧軍隊における最高位の指揮官、の意味。
・1つ目の「与」は①②味方になる、③相手に抵抗する、④対処する、⑤⑥⑦⑧同盟を結んだ者、の意味。
・1つ目の「之」は①代名詞、②彼、③④⑤代名詞、⑥ある地点や事情に達する、⑦代名詞、⑧ある地点や事情に達する、の意味。
・「期」は①期待する、②約束する、③必ず、④約束する、⑤会うことを約束する、⑥期待する、⑦必ず、⑧約束した時間、の意味。
・「如」は①そこで、②③至る、④及ぶ、⑤そこで、⑥~のようにする、⑦⑧至る、の意味。
・「登」は①人材を登用する、②増やす、③記載する、④終わる、⑤出仕する、⑥終わる、⑦人材を登用する、⑧増やす、の意味。
・「高」は①(値段を)高く引き上げる、②盛大なさま、③等級が上にあるさま、④音声が大きくてよく響くさま、⑤立派で衆に抜きんでているさま、⑥盛大なさま、⑦等級が上にあるさま、⑧盛大なさま、の意味。
・「而」は①順接の関係を表す接続詞、②あなた、③並列の関係を表す接続詞、④⑤あなた、⑥~のように、⑦⑧あなた、の意味。
・「去」は①②離縁する、③隔てる、④⑤除き去る、⑥離れる、⑦離縁する、⑧離れる、の意味。
・1つ目の「其」は①②③④敵の代名詞、⑤このように、⑥⑦⑧敵の代名詞、の意味。
・「梯」は①依る、②寄りかかる、③事故を誘引する原因、④依る、⑤事故を誘引する原因、⑥梯子をよじ登るように上昇する、⑦依る、⑧事故を誘引する原因、の意味。
・2つ目の「帥」は①軍隊における最高位の指揮官、②受け入れ従う、③④物事を主導する人物や事物、⑤軍隊における最高位の指揮官、⑥手本、⑦物事を主導する人物や事物、⑧先頭に立つ、の意味。
・2つ目の「与」は①②味方になる、③相手に抵抗する、④味方になる、⑤待つ、⑥同盟を結んだ者、⑦味方になる、⑧同盟を結んだ者、の意味。
・2つ目の「之」は①②③④⑤代名詞、⑥使う、⑦赴く、⑧彼ら、の意味。
・「深」は①②よく茂っているさま、③周到に、④徹底的に掘り下げて、⑤周到に、⑥精通する、⑦周到に、⑧隠す、の意味。
・「入」は①身内の中にいる、②所得、③納める、④献上する、⑤ある組織や団体に加わる、⑥少しずつしみ込む、⑦⑧没収する、の意味。
・「諸」は①②多くの、③④全ての、⑤多くの、⑥⑦⑧全ての、の意味。
・「侯」は①②士大夫で爵位を持つ者に対する尊称、③④射礼のときに獣皮や布を張った矢の標的、⑤諸侯、⑥⑦⑧射礼のときに獣皮や布を張った矢の標的、の意味。
・3つ目の「之」は①②助詞「の」、③彼、④代名詞、⑤ある地点や事情に達する、⑥赴く、⑦助詞「の」、⑧赴く、の意味。
・「地」は①②其一2-5④「地」、③地区、④⑤⑥其一2-5②「地」、⑦⑧場所、の意味。
・「発」は①火がつく、②貯蓄する、③明らかにする、④⑤出立する、⑥見つけ出す、⑦明らかにする、⑧火がつく、の意味。
・2つ目の「其」は①敵の代名詞、②~されたい、③④敵の代名詞、⑤その中の、⑥⑦⑧敵の代名詞、の意味。
・「幾」は①②望む、③危険な、④ふちを飾る、⑤望む、⑥つぶさに調べる、⑦尋問する、⑧ふちを飾る、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は「・・・深入諸侯之地、發其幾。」と前半が欠落するため、欠落部分は孫子(講談社)及び新孫子(講談社)の原文を採用した。なお、「機」については、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文を採用して「幾」とした。
・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・1つ目と2つ目の「帥」の“軍隊における最高位の指揮官”は、ここでは自軍全体を指揮する将軍を指すと考察。結果、「最高位の将軍」と簡潔に解読。⑤も同様に解読。

・1つ目と2つ目の「之」は、其十一5-3⑧1つ目の「其」の「攻め取った敵兵達」を指示する代名詞と解読。

・「登せて高くする」の直訳は“人材を登用して値段を高く引き上げる”となる。これは其四4-4④「増えることがない敵国での収入とどんどん増える自国での収入を比較させて攻め取った敵部隊を自国に寝返らせて採用する」に基づけば、「攻め取った敵兵達」を自軍で登用することであり、敵国よりも収入が高くなることと考察できる。結果、「その敵兵達を自軍で登用して収入を高く引き上げる」と解読。

・「梯する其の去らしむ」の直訳は“依る敵と離縁させる”となる。これは「攻め取った敵兵達」を敵国から離反させることと考察。結果、「依存する敵国から離反させる」と解読。

・「深」の“よく茂っているさま”は、植物が生い茂っていることと解釈した上で、其五2-3③「月を出現させるに至る太陽は、植物が芽生える準備ができたことを告げる冬のように、隠れている奇策部隊が出撃する準備を整える正攻法部隊である」等の植物の喩えから類推すれば、兵士数が多い状態の喩えと考察できる。結果、「自軍の兵士数を豊富にする」と解読。

・「諸なる侯の地」は、「地」を「敵国の町、村、里、集落」と解釈すれば“多くの爵位を持った士大夫の里等”と解釈できる。これは軍争篇で奪い取って陣地にする敵里等であり、その統治者が士大夫と推察できる。なお、ここでは集落は除外されるのではないかと思われる。結果、「爵位を持った士大夫が治める多くの里等」と解読。②も同様に解読。

・「入」の“身内の中にいる”は、「爵位を持った士大夫が治める多くの里等」を自国の統治下に置くことと考察。結果、「自国の統治下に置く」と解読。

・「発」の“火がつく”は、其十一4-2①「然」の“火がつく”で記述された「火災のようにどんどん攻め込む」の意味を積み上げていると考察。結果、「火災のようにどんどん攻め込む」と解読。⑧も同様に解読。

<②について>
・1つ目と2つ目の「与するもの」の直訳は“味方になった者”となる。これは味方になった①「攻め取った敵兵達」を指すと考察。結果、「味方になった元敵兵達」と解読。

・1つ目と2つ目の「之」の“彼”は、「味方になった元敵兵達」を導く存在であるため、其十一4-6②「自国に歯向かう元敵兵達を正攻法部隊の中隊の真ん中に配置して閉じ込めるのであり、元敵兵の世話役を配置することでその悪事を止める」で記述された「元敵兵の世話役」を指すと考察。結果、「元敵兵の世話役」と解読。

・「高く登せる」の直訳は“盛大に増やす”となる。これは①「収入を高く引き上げる」に基づけば、盛大に収入を増やすことと考察できる。結果、「盛大に収入を増やす」と補って解読。

・「去」の“離縁する”は、①「去」の「敵国から離反させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵国から離反する」と補って解読。

・「深」の“よく茂っているさま”は、所得が茂ることと解釈し、「豊かになる」と解読した。

<③について>
・1つ目と2つ目の「之」は、②「之」の「元敵兵の世話役」を指示する代名詞と解読。

・「高く登せる」の直訳は“上の等級で記載する”となる。これは、其二5-2⑥「常日頃から人民の名簿を記録すれば、役人は無事に町、村、里、集落を維持するに至り、戦争に赴く将軍と交流する時には、役人が危険と思う自国に仕返ししたい人民を主張するのである」等に基づけば、名簿の運用に関する記述と解釈できる。また、抵抗する主導する元敵兵を“上の等級”で記載する意味は、重要人物として記録することと解釈できる。結果、「重要人物と名簿に記録する」と補って解読。

・「梯たる其の去る」の直訳は“事故を誘引する原因となる敵を隔てる”となる。これは其十一4-6①「自国に歯向かう元敵兵達を里等の一定の区画に封じる」を指すと考察。結果、「災いを起こす原因となる元敵兵達を里等の一定の区画に封じる」と補って解読。

・2つ目の「帥」の“物事を主導する人物や事物”は、1つ目の「帥」の「元敵兵の世話役に抵抗する主導者」の意味を積み上げていると考察。結果、「自国に抵抗する主導者」と補って解読。

・「地の之」の直訳は“地区の彼”となる。この“彼”は、其二5-2⑥「常日頃から人民の名簿を記録すれば、役人は無事に町、村、里、集落を維持するに至り、戦争に赴く将軍と交流する時には、役人が危険と思う自国に仕返ししたい人民を主張するのである」等の役人を指すと解釈できる。この役人は其四1-1③「人民の生活を支える役人」と表記していることを踏まえて、「里等で人民の生活を支える役人」と解読。

・「諸なる侯」の直訳は“全ての矢の標的”となる。この“標的”は、自国に服従させなければならない「災いを起こす原因となる元敵兵達」を指すと考察できる。つまり、“全ての矢の標的”は元敵兵達の名簿の喩えと解釈できる。結果、「元敵兵を記録した名簿」と解読した。④も同様に解読。

<④について>
・1つ目と2つ目の「之」は、③1つ目の「其」の「災いを起こす原因となる元敵兵達」を指示する代名詞と解読。

・1つ目と2つ目の「帥」の“物事を主導する人物や事物”は、③「里等で人民の生活を支える役人」を指すと考察。結果、「(里等で)人民の生活を支える役人」と解読。

・「其の梯する而(なんじ)を去る」の直訳は“敵に依存するあなたを除き去る”となる。これは、自国が元敵兵達から得る年貢や租税を頼りにしていることを止めることと解釈できる。つまり、其十5-1④「歯向かう元敵兵達を大いに心変わりさせる年貢等を免除する利点によって仕返ししたい思いを断ち切らせる」の教えを実行することと考察。結果、話の流れに合わせて「その元敵兵達に対する年貢等を免除する」と解読。

・「高きに如く」の直訳は“音声が大きくてよく響く状態になる”となる。これは、其七6-4④「謀反を起こそうとする元敵兵とでたらめを言う元敵兵は、それぞれ自国又は軍隊の真ん中で管理するのである」に基づけば、「災いを起こす原因となる元敵兵達」が大きな声ででたらめを言うことと考察できる。結果、「大きな声ででたらめを言う状態になる」と解読。

・3つ目の「之」は、③「之」の「元敵兵の世話役」を指示する代名詞と解読。

・「其の幾する」の直訳は“敵のふちを飾る”となる。これは其七6-4⑤「でたらめを言う元敵兵を軍隊の真ん中で管理する時は、攻め取った元敵兵の世話役が騒ぎ立てることででたらめをかき消すのである」及び其三1-1②「停留している敵軍の小隊を打ち破っても、施して怪我が治れば自軍に所属させるのであり、背こうとすれば中隊の真ん中に配置して前進する」に基づけば、「災いを起こす原因となる元敵兵達を中隊の真ん中に配置する」と解読できる。

<⑤について>
・1つ目の「之」は、④「地」の「戦地」を指示する代名詞と解読。

・1つ目の「与」の“同盟を結んだ者”は、其十一1-6④「将軍は、気持ちが通じ合う諸侯に何度も赴かせた戦地「瞿地」を任せるのであり、自軍は敵里等を陣地にする時間を手に入れることで先制して敵里等に到達するのである」等で登場する“気持ちが通じ合う諸侯“を指すと考察。結果、「同盟を結んだ諸侯」と解読。

・「而の高きものを登らしむ」の直訳は“あなたの立派で衆に抜きんでている者を出仕させる”となる。これは話の流れを踏まえれば、其七6-5③「将軍の側近を派遣して遠方にある諸侯国と親しむ時は、深遠な思慮をもって進言する側近を諸侯の側近として派遣するのである」の“将軍の側近”が同盟を結んだ諸侯に出仕することと考察できる。結果、「将軍の優れた側近をその諸侯に出仕させる」と解読した。

・「梯を去る」の直訳は“事故を誘引する原因を除き去る”となる。これは、其七6-5④「感情の働きを研究した深遠な思慮をもって進言する側近は、諸侯の側近の中に、忠誠心が薄い側近が存在すれば進言するのである」、其七6-5⑥「感情の働きを研究して諸侯を整える深遠な思慮をもった側近は、出陣する時間が迫れば遠方の敵国で諸侯を出現させるために進言するのである」等から類推すれば、諸侯内部の災いや合従策の失敗に繋がる原因を解消することと考察できる。合従策実現のために諸侯の出立が遅れないようにするだけでなく、万全の軍隊を率いて連合できるように諸侯内部の問題点を解消しておくのだと解釈できる。結果、「災いを誘引する諸侯の問題点を解消する」と解読。

・2つ目の「之」は、「高」の「優れた側近」を指示する代名詞と解読。

・「入」の“ある組織や団体に加わる”は、「登」の“出仕する”と同意と考察。結果、使役形で「出仕させる」と解読。

<⑥について>
・1つ目の「帥」の“軍隊における最高位の指揮官”は、ここでは自軍全体を指揮する将軍を指すと考察。結果、「最高位の将軍」と簡潔に解読。⑧も同様に解読。

・1つ目と2つ目の「与」の“同盟を結んだ者”は、⑤1つ目の「与」同様に「同盟を結んだ諸侯」と解読。⑧も同様に解読。

・「高きは登りて去る而く」の直訳は“盛大さが終わって離れるように”となる。諸侯の到着を待つ間、敵軍に自軍を侮らせるための手を打つ文意と解釈できるため、“盛大なさま”は軍隊の勢いを指すと解釈。この解釈に基づけば、軍隊の勢いが無くなって敵軍から離れたように装うことと考察できる。結果、「盛大な勢いが尽きて敵軍から離れたように偽る」と解読。

・「其の梯せしむ如くする」の直訳は“敵に梯子をよじ登るように上昇させるようにする”となる。梯子に登った時、バランスが悪いため容易く梯子を倒されて落下して怪我をする。また、高い場所から相手を見下ろす優越感もあると思われる。これら解釈に基づけば、敵軍を驕り高ぶらせて容易く倒せる状態に追い込む喩えと考察できる。結果、「梯子を高く登らせるように敵軍を驕り高ぶらせる」

・「帥を之いて諸なる侯に深くする」の直訳は“手本を使って全ての標的に精通する”となる。この“手本”は、其十一1-6②「周到に行き届いて指導する将軍は諸侯が仰ぎ頼る存在となるが、あらゆる事柄に対して命令を出す方法を具備して学習させた時、諸侯を驚き恐れさせるのである」で学習した内容を指すと考察。また、”全ての標的“は其十一5-2①「指示の目印」を指すと考察。結果、「事前に学習した手本に基づいて全ての指示の目印について精通する」と解読。

・「発」の“見つけ出す”は、戦地に向かう諸侯が指示の目印を調べる過程で、隠れている敵兵達を見つけ出すのだと考察。結果、「其の発く」で「隠れている敵兵達を見つけ出す」と解読。

<⑦について>
・1つ目の「与」の“同盟を結んだ者”は、⑤1つ目の「与」同様に「同盟を結んだ諸侯」と解読。

・1つ目の「之」は、⑥2つ目の「其」の「隠れている敵兵達」を指示する代名詞と解釈。話の流れに合わせて「隠れていた敵兵達」と解読。

・「高く登せて帥いる」の直訳は“上の等級で人材登用すると導く”となる。これは、「隠れていた敵兵達」に対して寝返るように導くことと考察でき、現状よりも上の等級で登用することと解釈できる。結果、「現状よりも高い等級で人材登用すると導く」解読。

・「其の去らしめて而に梯するに如く」の直訳は“敵と離縁させてあなたに依存するに至る”となる。①「梯する其の去らしむ」の解釈から類推すれば、「敵国から離反させて自国に依存する状態になる」と解読。

・2つ目の「帥」の“物事を主導する人物や事物”は、「同盟を結んだ諸侯」を指すと考察。結果、「同盟を結んだ諸侯」と解読。

・「諸なる侯」の直訳は“全ての標的”となる。これは⑥「諸なる侯」同様に解釈。又、敵軍側の目印であることを踏まえて「敵軍の全ての指示の目印」と解読。

・「入れて之く」の直訳は“没収して赴く”となる。話の流れを踏まえれば「その目印を没収しながら戦地に赴く」と補って解読できる。

<⑧について>
・2つ目の「之」の“彼ら”は、敵軍が準備しておいた指示の目印に隠れさせる部隊と考察できる。結果、「奇策部隊」と解読。

・「侯を入る諸なる地」の直訳は“標的を没収した全ての場所”となる。⑦「諸なる侯」の解釈から類推すれば、「敵軍の指示の目印を没収した全ての場所」と解読できる。なお、この場所は、敵軍が目印として向かって来る場所であるため、ここに目印が無ければ戸惑う敵兵達を容易く攻め取れるのだと解釈できる。

・「高く登せる而」の直訳は“盛大に増やしたあなた”となる。これは①「攻め取った敵兵達を味方にすることで自軍の兵士数を豊富」にした状態を指すと考察。結果、「盛大に兵士数を増やした自軍」と補って解読。

・「幾」の“ふちを飾る”は、其五2-9②「正攻法部隊の周囲を取り囲んで制止している奇策部隊は、周囲をじっくり見ていない敵部隊を取り囲んだ状態をつくり、容易く攻め取れる状態に至らせて行き詰まらせることができた時、一斉に出撃するのである」の“周囲を取り囲んで制止している奇策部隊”を指すと考察。結果、話の流れに合わせて「周囲を奇策部隊に取り囲ませる」と解読。

・「去る其の梯に如く」の直訳は“離れる敵は事故を誘引する原因に至る”となる。これは自軍が「火災のようにどんどん攻め込む」ことで、逃亡した敵部隊が“周囲を取り囲んで制止している奇策部隊”に向かって行くことと考察。そのため“事故を誘引する原因”は、奇策部隊が隠れている場所と解釈した。結果、「逃亡して行く敵部隊は奇策部隊が隠れている場所に至る」と解読した。

・2つ目の「与」の“仲間”は、自国の味方になった⑦「隠れていた敵兵達」を指すと考察。結果、「自国の味方になった元敵兵達」と解読。

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