其十一6-3
四徹者、瞿地也。
sì chè zhě、jué dì yĕ。
解読文
①敵の正攻法部隊を撤退させる将軍は、分岐していて陣地拡大の要所となる戦地「瞿地」に驚き恐れて周囲を見回す諸侯の軍隊を出現させるのである。 ②戦地「瞿地」に驚き恐れて周囲を見回す諸侯の軍隊を出現させる将軍は、自軍の正攻法部隊を使って敵里等を奪い取らせるのである。 ③敵里等を奪い取った将軍は、自軍の正攻法部隊によって、敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所を出現させるのである。 ④敵里等の近辺に植物が広がる平坦な場所を出現させた自軍の正攻法部隊は、三つ又の矛を使って田畑を開拓して管理する存在である。 ⑤敵里等の近辺にある平坦な場所で田畑を開拓して管理する自軍の正攻法部隊は、ひたすら敵の正攻法部隊が出現することを警戒して周囲を見回すのである。 ⑥敵の出現を警戒して周囲を見回す自軍の正攻法部隊は、ひたすら将軍に従って任務を遂行するのである。 ⑦ひたすら将軍に従って任務を遂行する自軍の正攻法部隊は、敵の正攻法部隊が出現した時、敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所で横並びに整った隊列で広がるのである。 ⑧横並びに整った隊列で広がった自軍の正攻法部隊は、陣地にした元敵里等から敵の正攻法部隊を撤退させるのである。 |
書き下し文
①四を徹(てつ)せしむ者は、地に瞿(み)るものあらしむなり。 ②瞿(み)るものあらしむ者は、四をして地を徹(のぞ)かしむなり。 ③徹(のぞ)く者は、四に瞿(く)する地にあらしむなり。 ④四は、瞿(く)に地を徹(おさ)める者なり。 ⑤徹(おさ)める者は、地(た)だ四あること瞿(み)るなり。 ⑥瞿(み)る者は、地(た)だ四に徹(したが)うなり。 ⑦徹(したが)う者は、四あるに、地に瞿(く)するなり。 ⑧瞿(く)する者は、地より四を徹(てつ)せしむなり。 |
<語句の注>
・「四」は①②③④⑤(あるものの数が)四つ、⑥四回目という序数、⑦⑧(あるものの数が)四つ、の意味。 ・「徹」は①撤退する、②③取り除く、④⑤開拓して管理する、⑥⑦従って行う、⑧撤退する、の意味。 ・「者」は①②③④⑤⑥⑦⑧助詞「もの」、の意味。 ・「瞿」は①②驚き恐れて周囲を見回す、③(植物の根や葉が)横ざまに広がり生える、④三つ又の矛、⑤⑥驚き恐れて周囲を見回す、⑦⑧(植物の根や葉が)横ざまに広がり生える、の意味。 ・「地」は①其一2-5②「地」、②其一2-5④「地」、③其一2-5①「地」、④田畑、⑤⑥ひたすら、⑦其一2-5①「地」、⑧其一2-5④「地」、の意味。 ・「也」は①②③④⑤⑥⑦⑧断定の語気、の意味。 |
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「四徹者、衢地也」と「瞿」を「衢」するが、其十一1-6同様に中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文にある「矍」は「瞿」に置き換えた。また、「勶」は國際電腦漢字及異體字知識庫を参考にした上で異字体「徹」に置き換えた。 ・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。 <①について> ・「四」の“(あるものの数が)四つ”は、其五2-4③「四」の「正攻法部隊を構成する各部隊」を指すと考察、ここでは正攻法部隊と解釈。但し、敵軍を指す文意と解釈できるため、「敵の正攻法部隊」と解読。⑤⑦⑧も同様に解読。 ・「地」は、其一2-5②「地」であり、其十一1-1①5つ目の「地」の「分岐していて陣地拡大の要所となる戦地「瞿地」」の意味を積み上げていると考察。結果、「分岐していて陣地拡大の要所となる戦地「瞿地」」と解読。 ・「瞿るもの」の直訳は“驚き恐れて周囲を見回す者”となる。これは、其十一1-6③「瞿」で記述された「その諸侯は、多くの部下達と何度も戦地「瞿地」に赴いて部下達が仰ぎ頼る先生となり、自軍の将軍が命令を出すあらゆる事柄に対して指導すれば、極限まで備わった部下達は驚き恐れて周囲を見回すことを学習するのである」に基づけば、驚き恐れて周囲を見回すことを学習した諸侯の軍隊を指すと考察できる。結果、「驚き恐れて周囲を見回す諸侯の軍隊」と解読。 <②について> ・「瞿るものあらしむ」の直訳は“驚き恐れて周囲を見回す者を出現させる”となる。これは①「瞿」で記述された「分岐していて陣地拡大の要所となる戦地「瞿地」に驚き恐れて周囲を見回す諸侯の軍隊を出現させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「戦地「瞿地」に驚き恐れて周囲を見回す諸侯の軍隊を出現させる」と補って解読。 ・「四」の“(あるものの数が)四つ”は、其五2-4③「四」の「正攻法部隊を構成する各部隊」を指すと考察、ここでは自軍の正攻法部隊と解釈。結果、「自軍の正攻法部隊」と解読。③も同様に解読。 ・「地」は、其一2-5④「地」の「敵国の町、村、里、集落」を指すと考察。但し、軍争篇では「里」が対象になっていることに合わせて、「敵里等」と解読。 ・「徹」の“取り除く”は、敵国から里を取り除くことと解釈すれば、其七1-2②「敵里を奪い取る」を指すと考察できる。結果、「奪い取る」と解読。 <③について> ・「徹」の“取り除く”は、②「徹」で記述された「自軍の正攻法部隊を使って敵里等を奪い取らせる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵里等を奪い取る」と補って解読。 ・「瞿する地」の直訳は“植物が横ざまに広がり生える場所”となる。これは、其十一3-2③「全軍は、山の麓の木を伐採することで、あり余る広く平坦な場所を出現させて滞在した上で、兵士達が何度も耕作するのである」に登場する「あり余る広く平坦な場所」を指すと考察。この場所は敵里等の近辺にあることを踏まえて、「敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所」と解読。④も同様に解読。 <④について> ・「四」は“(あるものの数が)四つ“は、②③「四」同様に「自軍の正攻法部隊」と解釈した上で、③「敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所を出現させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵里等の近辺に植物が広がる平坦な場所を出現させた自軍の正攻法部隊」と補って解読。 <⑤について> ・「徹める者」の直訳は“開拓して管理する者”となる。これは、④「敵里等の近辺に植物が広がる平坦な場所を出現させた自軍の正攻法部隊は、三つ又の矛を使って田畑を開拓して管理する存在である」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵里等の近辺にある平坦な場所で田畑を開拓して管理する自軍の正攻法部隊」と補って解読。 ・「瞿」の“驚き恐れて周囲を見回す”は、敵軍の出現に備えて、自軍の正攻法部隊が警備していることと考察。結果、「警戒して周囲を見回す」と言い換えた。 <⑥について> ・「瞿る者」の直訳は“驚き恐れて周囲を見回す者”となる。これは、⑤「瞿」で記述された「自軍の正攻法部隊は、ひたすら敵の正攻法部隊が出現することを警戒して周囲を見回す」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵の出現を警戒して周囲を見回す自軍の正攻法部隊」と解読。 ・「四」の“四回目という序数”は、其一2-1①で四番目に記述された「将」の「将軍」を指すと考察。結果、「将軍」と解読。 ・「徹」の“従って行う”は、主語が自軍の正攻法部隊であるため“行う”は任務を遂行することと考察できる。結果、「従って任務を遂行する」と言い換えた。 <⑦について> ・「徹う者」の直訳は“従って行う者”となる。これは、⑥「徹」で記述された「自軍の正攻法部隊は、ひたすら将軍に従って任務を遂行する」の意味を積み上げていると考察。結果、「ひたすら将軍に従って任務を遂行する自軍の正攻法部隊」と補って解読。 ・「地」は、③「地」で記述された「敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵里等の近辺にある植物が広がる平坦な場所」と解読。 ・「瞿」の“(植物の根や葉が)横ざまに広がり生える”は、其五2-3③「月を出現させるに至る太陽は、植物が芽生える準備ができたことを告げる冬のように、隠れている奇策部隊が出撃する準備を整える正攻法部隊である」等の植物の喩えから類推すれば、兵士達が横並びに整った隊列で広がっている状態と解釈できる。結果、「横並びに整った隊列で広がる」と解読。 <⑧について> ・「瞿する者」は、「瞿」を⑦同様に「横並びに整った隊列で広がる」と解釈すれば“横並びに整った隊列で広がる者”となる。この者は、自軍の正攻法部隊であるため、「横並びに整った隊列で広がった自軍の正攻法部隊」と解読。 ・「地」は、②「地」同様に「敵里等」と解釈。この敵里等は自軍が奪い取って陣地にしている状態であるため、「陣地にした元敵里等」と解読。 |