地に囲むなり、吾が将は、闕あらしめて其の塞がしむなり。

其十一6-16

圍地也、吾將塞其闕。

wéi dì yě、wú jiāng sài qí quē。

解読文

①「囲地」にある縦長で狭い場所では周りを巡るのであり、自軍の将軍は、縦長で狭い場所に罠の隙間を出現させて、敵部隊をその場に留まらせるのである。

②縦長で狭い場所に罠の隙間を出現させて、敵部隊をその場に留まらせる理由は、罠の隙間に留まった敵部隊を包囲して捕らえて、自軍の兵士にして連れて行くからである。

③敵部隊を捕らえて自軍の兵士にして連れて行く理由は、ひたすら敵部隊を包囲して捕らえれば、敵軍は兵士数が減って、自軍は兵士数がいっぱいになるからである。

④敵軍の兵士数は減って自軍の兵士数がいっぱいになった時、ひたすら防御する理由は、自軍は軍隊の勢いが壮大になって、敵軍は不完全な状態にさせるからである。

⑤自軍は軍隊の勢いが壮大になって敵軍を不完全な状態にさせれば、自軍は、困窮した敵部隊を奇策部隊が隠れている場所に送り届けて、戦術として包囲するのである。

⑥困窮した敵部隊を奇策部隊が隠れている場所に送り届けて包囲する時は、「囲地」における罠の隙間と同様に、将軍は砦を構築した状態の自軍に罠の隙間を出現させられたい。

⑦砦を構築した状態の自軍に罠の隙間を出現させた時、自軍の兵士達を「囲地」のような壁の状態にすれば、その隙間を塞ぐように罠に向かって逃亡する敵部隊が出現するのである。

⑧隙間を塞ぐように罠に向かって逃亡する敵部隊は、「囲地」における罠の隙間と同様に、奇策部隊が隠れている場所に隙間があればその場に留まるのであり、自軍はその敵部隊を包囲して捕らえて、自軍の兵士にして連れて行くのである。
書き下し文
①地に囲むなり、吾が将は、闕(けつ)あらしめて其の塞(ふさ)がしむなり。

②塞(ふさ)がしむは、闕(けつ)におる其の囲みて、吾が地に将(ともな)えばなり。

③将(ともな)うは、地(た)だ囲めば、其の闕(か)けて、吾は塞(ふさ)がればなり。

④塞(ふさ)がるに、地(た)だ囲むは、吾は将(おお)いなりて其の闕(か)けしめばなり。

⑤闕(か)けしめば、吾は、塞(そく)たる其の、地に将(おく)りて囲むなり。

⑥囲むに、也(ま)た、将は其れ塞(さい)する地の吾に闕(けつ)あらしむ。

⑦闕(けつ)あらしむに、吾は囲みのごとき地たれば、塞(ふさ)ぐごとくして将(ゆ)く其のあるなり。

⑧其の也(ま)た、地に闕(けつ)あれば塞(ふさ)ぐなり、吾は囲みて将(ともな)うなり。
<語句の注>
・「囲」は①周りを巡る、②③包囲して捕らえる、④守る、⑤⑥戦術として包囲する、⑦壁、⑧包囲して捕らえる、の意味。
・「地」は①場所、②立場、③④ひたすら、⑤其一2-5③「地」、⑥⑦状態、⑧其一2-5③「地」、の意味。
・「也」は①断定の語気、②③④因果関係を表す助詞、⑤断定の語気、⑥同様に、⑦断定の語気、⑧同様に、の意味。
・「吾」は①②我々の、③④⑤⑥⑦⑧我々、の意味。
・「将」は①将軍、②③連れて行く、④壮大なさま、⑤送り届ける、⑥将軍、⑦去る、⑧連れて行く、の意味。
・「塞」は①②とどめる、③④いっぱいになる、⑤困窮、⑥砦を構築する、⑦防ぎ止める、⑧とどめる、の意味。
・「其」は①②③④⑤敵の代名詞、⑥~されたい、⑦⑧敵の代名詞、の意味。
・「闕」は①②隙間、③減る、④⑤欠けて不完全なさま、⑥⑦⑧隙間、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する。
・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「地」の“場所は、其十一6-6⑤「地」で記述された「縦長で狭い場所」を指すと考察。これは其八1-1①「囲まれた「囲地」」に存在する場所であることを踏まえて、「「囲地」にある縦長で狭い場所」と補って解読。なお、其八1-1①「囲まれた「囲地」」が戦地になれば、其十一1-1①「自軍は包囲を防いで敵軍は包囲して捕らえる戦地「囲地」」である。

・「闕あらしむ」の直訳は“隙間を出現させる”となる。この“隙間”は“縦長で狭い場所”において奇策部隊が隠れる場所に該当すると考察。結果、「縦長で狭い場所に罠の隙間を出現させる」と補って解読。

・「塞」の“とどめる”は、罠の隙間を調査するために敵部隊がその場に留まることと考察。結果、「その場に留まる」と補って解読。⑧も同様に解読。

<②について>
・「塞」の“とどめる”は、①「塞」で記述された「縦長で狭い場所に罠の隙間を出現させて、敵部隊をその場に留まらせる」の意味を積み上げていると考察。結果、使役形で「縦長で狭い場所に罠の隙間を出現させて、敵部隊をその場に留まらせる」と補って解読。

・「闕」の“隙間”は、①「闕」同様に解釈して「罠の隙間」と解読。④⑥も同様に解読。

・「吾が地に将う」の直訳は“我々の立場で連れて行く”となる。これは自軍の兵士にして連れて行くことと考察。結果、「自軍の兵士にして連れて行く」と解読。

<③について>
・「将」の“連れて行く”は、②「将」で記述された「罠の隙間に留まった敵部隊を包囲して捕らえて、自軍の兵士にして連れて行く」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵部隊を捕らえて自軍の兵士にして連れて行く」と補って解読。

・「囲」の“包囲して捕らえる”は、②「囲」で記述された「敵部隊を包囲して捕らえる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵部隊を包囲して捕らえる」と補って解読。

<④について>
・「塞」の“いっぱいになる”は、③「塞」で記述された「敵軍は兵士数が減って、自軍は兵士数がいっぱいになる」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵軍の兵士数は減って自軍の兵士数がいっぱいになる」と補って解読。

・「将」の“壮大なさま”は、兵士数が多い自軍が防御することで敵軍を不完全にする文意であるため、軍隊規模が壮大になることを前提として、軍隊の勢いを壮大にする意味が含まれていると考察できる。結果、「軍隊の勢いが壮大になる」と補って解読。

<⑤について>
・「闕」の“欠けて不完全なさま”は、④「闕」で記述された「自軍は軍隊の勢いが壮大になって、敵軍は不完全な状態にさせる」の意味を積み上げていると考察。結果、「自軍は軍隊の勢いが壮大になって敵軍を不完全な状態にさせる」と補って解読。

・「地」は、其一2-5③「地」の「間者が隠れて出現する場所」であり、この間者は奇策部隊を率いる者であることを踏まえて、話の流れに合わせて「奇策部隊が隠れている場所」と解読。⑧も同様に解読。

<⑥について>
・「囲」の“戦術として包囲する”は、⑤「囲」で記述された「困窮した敵部隊を奇策部隊が隠れている場所に送り届けて、戦術として包囲する」の意味を積み上げていると考察。結果、「困窮した敵部隊を奇策部隊が隠れている場所に送り届けて包囲する」と補って解読。

・「也」の“同様に”は、「囲地」にある縦長で狭い場所で罠の隙間を出現させることと同様に自軍の陣形にも罠の隙間を出現させる意味と考察。結果、「「囲地」における罠の隙間と同様に」と補って解読。⑧も同様に解読。

<⑦について>
・「闕」の“隙間”は、⑥「闕」で記述された「砦を構築した状態の自軍に罠の隙間を出現させられたい」の意味を積み上げていると考察。結果、「闕あらしむ」で「砦を構築した状態の自軍に罠の隙間を出現させる」と補って解読。

・「吾は囲みのごとき地」の直訳は“我々は壁のような状態”となる。この壁は、自軍の兵士達を「囲地」のように周りを囲む壁にする喩えと考察。結果、「自軍の兵士達を「囲地」のような壁の状態」と補って解読。

・「塞ぐごとくして将く其の」の直訳は“塞ぎ止めように去る敵”となる。これは、「砦を構築した状態の自軍に罠の隙間」の“隙間”から、敵部隊が逃亡する喩えであり、その敵部隊が“隙間”を塞ぐように罠に向かって行く描写と考察。結果、「その隙間を塞ぐように罠に向かって逃亡する敵部隊」と補って解読。

<⑧について>
・「其」の“敵の代名詞”は、⑦「其」で記述された「その隙間を塞ぐように罠に向かって逃亡する敵部隊が出現する」の意味を積み上げていると考察。結果、「隙間を塞ぐように罠に向かって逃亡する敵部隊」と補って解読。

・「将」の“連れて行く”は、②「将」で記述された「自軍の兵士にして連れて行く」の意味を積み上げていると考察。結果、「自軍の兵士にして連れて行く」と補って解読。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。