間かに反す者は、敵に因りて、間えて用いる者なり。

其十二2-6

反閒者、因敵閒而用者也。

fǎn xián zhě、yīn dí xián ér yòng zhě yě。

解読文

①こっそりと元々所属していた敵国に戻した間者は、敵将軍と利害や意見が対立している相手と親しくして、その対立している者を裏から操って任務に力を尽くす存在である。

②敵将軍と対立していて転覆させようとする者は、敵将軍と対立する勢力を増し加えて、敵将軍に代わって軍隊を治めようとする存在である。

③敵将軍と利害や意見が対立している相手を利用する間者は、裏から操る任務に力を尽くして敵将軍に方針転換させるのであり、秘密裏に自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に上手く適合させる存在である。

④敵将軍に方針転換させる任務に習熟した間者は、敵将軍と対立する勢力を増し加えて、敵将軍に代わって軍隊を治めることに関わることができるのである。
書き下し文
①間(ひそ)かに反(かえ)す者は、敵に因(よ)りて、間(まじ)えて用いる者なり。

②間たりて反(かえ)さんとする者は、敵を因(かさ)ねて、間(か)わりて用いんとする者なり。

③敵に因(よ)る者は、間(まじ)えて反(かえ)すなり、間(ひそ)かに而(なんじ)に用いらしむ者なり。

④反(かえ)すことに間(な)れる者は、敵を因(かさ)ねて、用いること而(よ)く間(あず)かるなり。
<語句の注>
・「反」は①元の所在地に戻す、②ひっくり返す、③④(反対方向に)向きを変える、の意味。
・1つ目の「間」は①こっそりと、②仲違い、③間に挟む、④習熟する、の意味。
・1つ目の「者」は①②③④助詞「もの」、の意味。
・「因」は①親しむ、②増し加える、③利用する、④増し加える、の意味。
・「敵」は①②③④利害や意見が対立する相手、の意味。
・2つ目の「間」は①間に挟む、②交代する、③秘密裏に、④関わる、の意味。
・「而」は①②順接の関係を表す接続詞、③あなた、④~できる、の意味。
・「用」は①力を尽くす、②治める、③上手く適合する、④治める、の意味。
・2つ目の「者」は①②③助詞「もの」、④助詞「こと」、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「反閒者、因其敵閒而用者也。」と「其」が入るが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。また、孫子(講談社)の原文と記述される箇所が異なるが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「反」の“元の所在地に戻す”は、其十二2-4④「反」の「元々所属していた敵国に戻す」の意味を積み上げていると考察。結果、「元々所属していた敵国に戻す」と解読。

・1つ目の「者」の“助詞「もの」”は、其十二2-2①「敵から寝返らせても敵と親しく交流する間者」を指すと考察。結果、「反す者」で「元々所属していた敵国に戻した間者」と解読。

・「敵」の“利害や意見が対立する相手”は、敵将軍と対立している存在と考察。結果、「敵将軍と利害や意見が対立している相手」と補って解読。③も同様に解読。

・「閒えて用いる」の直訳は“間に挟んで力を尽くす”となる。これは敵将軍と間者の間に「対立している者」を挟んで任務に力を尽くすと解釈できるため、間者が「対立している者」を操るのだと考察できる。結果、「その対立している者を裏から操って任務に力を尽くす」と解読できる。

<②について>
・「間たりて反さんとする者」の直訳は”仲違いしていてひっくり返そうとする者“となる。これは①「敵将軍と利害や意見が対立している相手」を指すと解釈すれば、”ひっくり返す“とは実権を握っている敵将軍を転覆させることと考察できる。結果、「敵将軍と対立していて転覆させようとする者」と解読。

・「敵」の“利害や意見が対立する相手”は、①「敵」の解釈から類推して「敵将軍と対立する勢力」と解読。④も同様に解読。

・「間わりて用いる」の直訳は“交代して治める”となる。これは敵将軍に代わって軍隊を治めることと考察。結果、「敵将軍に代わって軍隊を治める」と補って解読。

<③について>
・1つ目の「間」の“間に挟む”は、①2つ目の「間」で記述された「裏から操って任務に力を尽くす」の意味を積み上げていると考察。結果、「裏から操る任務に力を尽くす」と補って解読。

・「反」の“(反対方向に)向きを変える”は、敵将軍の方針を反対向きに転換させることと考察。結果、「敵将軍に方針転換させる」と補って解読。④も同様に解読。

・「而に用いらしむ」の直訳は“あなたに上手く適合させる”となる。敵将軍に方針転換させた前提を踏まえると、自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に適合させることと考察できる。結果、「自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に上手く適合させる」と補って解読。

<④について>
・「用」の“治める”は、②「用」で記述された「敵将軍に代わって軍隊を治める」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵将軍に代わって軍隊を治める」と補って解読。

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