内を間える者は、其の官の人に因りて用いらしむ者なり。

其十二2-8

内閒者、因其官人而用者也。

neì xián zhě、yīn qí guān rén ér yòng zhě yě。

解読文

①妾を間に挟むことで敵組織内部の者から敵の実情を多く得る間者は、敵役人の人格を利用して従わせる存在である。

②敵役人の人格を利用する妾は、男心に習熟した女性を任用するのである。

③男心に習熟した妾は、女性への関心がある敵役人に限定して、性行為に乗じて従わせることができる存在である。

④脇道から敵組織内部に入り込む間者は、妾が従わせた敵役人のつてで優れた人物として官職につくのであり、自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に上手く適合させる存在となるのである。
書き下し文
①内を間(まじ)える者は、其の官(つかさ)の人に因(よ)りて用いらしむ者なり。

②其の官(つかさ)に因(よ)る者は、人の内を間(なら)う者を用いるなり。

③間(な)れる者は、内ある其の官して、人に因(よっ)て而(よ)く用いらしむ者なり。

④間(しの)び内(い)れしむ者は、其の因(よっ)て人として官するなり、用いらしむ者たるなり。
<語句の注>
・「内」は①妾、②心、③女性への関心、④(人などを内部へ)引き入れる、の意味。
・「間」は①間に挟む、②③習熟する、④脇道から、の意味。
・1つ目の「者」は①②③④助詞「もの」、の意味。
・「因」は①②利用する、③~に乗じて、④~のつてで、の意味。
・「其」は①②③④敵の代名詞、の意味。
・「官」は①②役人、③限定する、④官職につく、の意味。
・「人」は①人格、②男性、③性行為、④優れた人物、の意味。
・「而」は①②順接の関係を表す接続詞、③~できる、④順接の関係を表す接続詞、の意味。
・「用」は①従う、②任用する、③従う、④上手く適合する、の意味。
・2つ目の「者」は①②③④助詞「もの」、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「内閒者、因其官人而用。」と「者也」がないが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。また、孫子(講談社)の原文と記述される箇所が異なるが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「内を間える」の直訳は“妾を間に挟む”となる。これは其十二2-2③「敵組織内部の者は妾を間に挟めば得られる敵の実情は多くなる」の意味を積み上げていると考察。結果、「妾を間に挟むことで敵組織内部の者から敵の実情を多く得る」と補って解読。

・1つ目の「者」の“助詞「もの」”は、其十二2-2①「敵組織内部と親しく交流する間者」を指すと考察した上で「間者」と簡潔に解読。

<②について>
・「其の官」は、①「其の官」で記述された「敵役人の人格」の意味を積み上げていると考察。結果、「敵役人の人格」と補って解読。

・「人の内」の直訳は“男性の心”となる。これは女性に対する男心と考察。結果、「男心」と解読。

<③について>
・「間」の“習熟する”は、②「間」で記述された「男心に習熟した女性」の意味を積み上げていると考察。結果、「間う者」で「男心に習熟した妾」と解読。

<④について>
・「内れしむ者」の直訳は“人などを内部へ引き入れさせる”となる。これは妾を使って敵組織内部へ間者が入り込むことと考察。結果、「敵組織内部に入り込む間者」と解読。

・「其」の“敵の代名詞”は、③「女性への関心がある敵役人に限定して、性行為に乗じて従わせる」に基づき、「妾が従わせた敵役人」と解読。

・「用」の“上手く適合する”は、其十二2-6③「用」で記述された「自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に上手く適合させる」の意味を積み上げていると考察。結果、「自軍の将軍が考えている方針や戦略、戦術に上手く適合させる」と補って解読。

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