孫子曰く、凡そ攻みとする火は五有り。

其十三1-1

孫子曰、凡攻火有五。

sūn zǐ yuē、fán gōng huǒ yoǔ wŭ。

解読文

孫先生が言うには、

①一般的に巧みに仕掛ける火災には五種類存在する。

②平凡な将軍は、怒りによって何度も武力で相手を撃とうとするのである。

③概略は、勢いを生じさせた堅固な「実」の軍隊にして、火災のように正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していき、生きたまま敵を取得する間者の奇策部隊を出現させるのである。

④要旨は、火災のように正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していった時、生きたまま敵を取得する間者の奇策部隊が、誘導されてきた敵を武力で撃って手に入れるのである。
書き下し文
孫子曰く、

①凡そ攻(たく)みとする火は五有り。

②凡なるものは、火有りて五たび攻めんとするなり。

③凡(はん)は、攻(かた)くして、火なして五有らしむなり。

④凡(はん)は、火なすに、五は攻めて有(たも)つなり。
<語句の注>
・「凡」は①一般的に、②傑出せずに普通であるさま、③概略、④要旨、の意味。
・「攻」は①巧みにこなす、②武力で相手を撃つ、③堅固なさま、④武力で相手を撃つ、の意味。
・「火」は①火災、②怒り、③④其七4-2①「火」、の意味。
・「有」は①事物が存在する、②持つ、③ある事情が出現したり発生したりする、④手に入れる、の意味。
・「五」は①数の名、②何度も、③④五番目という序数、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「攻」の“巧みにこなす”は、戦略的又は戦術的な意図をもって巧みに火災を仕掛けることと考察。結果、「巧みに仕掛ける」と解読。

<②について>
・特に無し。

<③について>
・「攻」の“堅固なさま”は、其五5-2②「石」の「勢いを生じさせた堅固な自軍」となった状態を指すと考察。これは其五1-4①「充実して堅固な“実”と虚弱な“虚”」における「実」に達した状態と解釈できる。結果、「攻くする」で「勢いを生じさせた堅固な「実」の軍隊にする」と解読。

・「火」は、其七4-2①「火」で記述された「侵して掠めること火の如く」の「正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していく様子はまるで広がっていく火災が逃げ場を奪って火のない所へ人を導く様子に等しい」を指すと考察。結果、「火災のように正攻法部隊がどんどん攻め込んで敵の逃げ場を奪い取って誘導していく」と解読。④も同様に解読。

・「五」の“五番目という序数”は、其十二2-2①で五番目に記述された「生きたまま敵を取得する間者」を指すと考察。「生きたまま敵を取得する間者」は奇策部隊に所属していることを踏まえて、ここでは「生きたまま敵を取得する間者の奇策部隊」と解読。④も同様に解読。

<④について>
・「攻」の“武力で相手を撃つ”は、誘導されてきた敵を奇策部隊が武力で撃つことと考察。結果、「誘導されてきた敵を武力で撃つ」と解読。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。