孫子兵法 行軍篇の解読文だけを読む

「行軍」は全般的に軍事の行い方がまとめられています。漢字「軍」は、主に”敵里を陣取ること、軍隊を配置(布陣)すること、兵士を編制すること、軍隊を統率する”といった意味で使用されており、それぞれ具体的な対処方法が記述されています。また、中盤以降は当時の軍事に関わる様子が描写されており、大変興味深い内容になっています。

其九1-1
孫先生が言うには、

①一般的に、軍事は敵を観察して決断するのである。

②平凡な将軍は、敵軍を落ち着かせる軍事を選択するのである。

③敵は、元敵里等に駐屯してその人民と共に生活しながら観察するのである。

④陣地にした元敵里等の人民と力を合わせて敵軍に歯向かう軍事を措置するのである。
其九1-2
①高くそびえた山を横切る時は山間の狭い道や川筋に従うのであり、詳らかに周辺を見て兵士達を落ち着かせる高い所を作り出すのであり、戦闘になった時は低い所に移動してはならない、高い所へ移動するのである。これが、高くそびえた山に赴く軍隊のお手本である。

②山のように領地からかけ離れた「絶地」にいると、軍隊は枯渇するのである。山中の水の流れを頼りにして、兵士達が生活する場所を尊重して軍隊を治めるのであり、雨や雪が降って寒さで震える兵士が存在すれば出発しない。これが、高くそびえた山に到達して駐屯するお手本である。

③高くそびえた山で軍隊を枯渇させる将軍は、お手本を真似してもよく知らないまま拠り所にして苦境に陥るのであり、雨や雪が降って寒さで震える兵士を敬うこと無く出発するのである。このような軍事を行う粗野で洗練されていない将軍は罰するのである。

④非常に優れた将軍の言うことを聞くのであり、山をなすほど多い穀物と生存した兵士達の活路を尊重するのであり、すぐに敵軍とせめぎ合わないことを尊重するのである。高くそびえた山に赴く時は、このように定めて軍隊を統率するのである。
其九1-3
①平坦な場所において、傾斜や高低が無くて高くて平坦な土地があれば、将軍は気を配ってその高い所を背にするのであり、命を取り合う「死地」を前方にして後方で兵士達を回復させるのである。これが、高くて平坦な土地を使って軍隊を配置するお手本である。

②平和な高くて平坦な土地は、消耗した部隊と回復した部隊を入れ替える場所であり、前もって隠れている奇策部隊が獲物となった敵部隊を生け捕りにすれば高くて平坦な土地に引き渡し、将軍は攻め取った敵兵達を敬って酒や食事を勧めるのである。このように高くて平坦な土地を使って、消耗した自軍の兵士達や攻め取った敵兵達を落ち着かせるのである。

③普通の将軍は、重要な高くて平坦な土地を軽視して軍隊を配置するのであり、さらにまして盛大な敵軍に前進して、回復させることは後回しにして兵士達を死なせるのである。このように高くて平坦な土地を使って軍事を行う将軍は罰するのである。

④自軍が陸路に留まって議論しているならば、自軍をみくびって近づく敵軍が出現するのである。前もって隠れている奇策部隊を高くて平坦な土地から出現させることで、二倍規模の軍隊にして敵軍を分散させた時、後方から獲物となった敵部隊を生け捕りにするのである。高くて平坦な土地を利用する時は、このように定めて軍隊を配置するのである。
其九1-4
①河川を横切り渡れば、必ず河川から遠く離れるのである。

②河川から遠く離れて自軍の立場を確かにして、河川を横切り渡る敵軍を水没させるのである。

③河川を横切り渡る敵軍を水没させれば、自国で収入がどんどん増えることを保証して水没させた敵兵達を敵国から離反させるのである。

④自国で収入がどんどん増えることを保証して水没させた敵兵達を敵国から離反させれば、どんどん兵士数を増やして敵軍を超越するのである。
其九1-5
①来襲した敵軍が向こう岸から此方岸まで河川を渡って来た時、自軍が河川の中にいて、渡って来る敵軍に出向いて迎撃してはならない、敵軍半分に河川を渡らせて巧みにその半分を断ち切るのである。

②自軍が遠く離れた場所から河川に来て、河川を渡って来る敵軍を断ち切って半分にすれば、河川の中にいる敵軍半分を水没させるのである。勢いを生じた正攻法部隊に将軍が号令した時、川の渡し場にいる残り半分の敵軍を攻めれば、河川の中にいる獲物となった敵軍半分を出迎えて救出する敵部隊は存在しない。

③将軍は河川の中で止まっている敵軍半分を自軍に付き従わせるのである。出迎えて救出する敵部隊が存在しなければ、水没させた獲物となった敵軍半分の心は変わるのであり、将軍はどんどん増える収入の保証によって敵国から離反させて、攻め取った敵軍半分を自軍の正攻法部隊に仕上げるのである。

④敵国から離反した元敵兵達は慰労して豊富な収入によって礼遇するが、元敵兵達の好きにさせること無く使うのであり、自軍の真ん中に配置するのである。自軍が正攻法部隊の兵士数を増やせば、残りの蹴散らした敵軍半分は不完全な虚になるのであり、自軍の勢いを切れ味の鋭い武器の状態に至らせて容易く打ち破るのである。
其九1-6
①まさに自国と戦争しようとしている敵軍が出現すれば、河川で防衛している軍隊を無くして来襲した敵軍の進路を予測するのである。

②来襲した敵軍の進路を予測した将軍は、まさに羊の集まりを導くように敵軍を動かそうとしている自軍を無視させて、敵軍を河川に近寄らせるのである。

③無視させていた自軍が河川に近寄らせた敵軍に出向いて迎撃すれば、河川の中に獲物となる敵部隊が出現するのであり、救出に向かう敵部隊が無ければ恐れ震えて物静かになるのである。

④恐れ震えて物静かになった敵部隊に、上級武将と親しもうとする態度が無ければ、その敵兵達の心には裏表が無いと考えて自軍で受け入れて礼遇するのである。
其九1-7
①自国と戦争しようとして出現した敵軍を隠れて観察する自軍は高い所に配置するのであり、河川に留まって来襲した敵軍に立ち向かうが無い。これが、河川の傍を使って軍隊を配置するお手本である。

②勢いを生じた正攻法部隊になる措置をして出現した敵軍をあしらうのであり、未来を予測することを蔑ろにさせて河川で敵軍半分を追い払って、残りの敵軍半分を水没させるのでる。これが、正攻法部隊を使って、敵軍半分を水没させて敵兵達を取得するお手本である。

③生存した敵兵達は落ち着かせて生活の収入を高く引き上げるのであり、出迎えて救出する敵部隊は存在しなければ、生存した敵兵達は豊富な収入を選ぶのである。このように豊富な収入を献上するお手本を実行すれば自軍の兵士に変わるのである。

④生け捕りにした敵兵達は罰すること無く敬うのであり、自軍で受け入れて治めてどんどん兵士数を増やせば、敵軍を追い払うのである。このように生け捕りにした敵兵達を自軍に編制することを定めて、どんどん兵士数を増やすことを尊重するのである。
其九1-8
①乾燥地にある塩分濃度の高い地下水が溜まった窪地や塩湖を横切る時は、残り続けること無く、急いで離れるのである。

②乾燥地にある塩分濃度の高い地下水が溜まった窪地や塩湖に残り続けて離れることが無く、乾燥地で度々水分を与えれば兵士達はただ死ぬばかりである。

③乾燥地で度々水分を与える将軍は、死ぬ兵士が多ければ危険が差し迫っていると考えるが、兵士達が死ぬことを蔑ろにして今まで通りにして変えないのである。

④乾燥地で度々水分を与える将軍が存在して危険が差し迫ると考えれば、非常に優れた将軍が糾弾するのであり、軍隊から離れさせて今まで通りのやり方を変えさせるのである。
其九1-9
①もしも切羽詰まって乾燥地で駐屯するならば、雨露を充満させて使うのであり、燃料や飼料の草がある塩分濃度の高い地下水が溜まった窪地や塩湖を拠り所にして、数多くある立ち木を背にするのである。これが、乾燥地において雨露を使って駐屯するお手本である。

②乾燥地で切羽詰まって雨露を充満させる時は、塩分濃度の高い地下水が溜まった窪地や塩湖を開拓して軍営を設置するのであり、数多くある立ち木と盛んに茂った雑草を湿らせて雨露を増やすのである。これが、塩分濃度の高い地下水が溜まった窪地や塩湖を開拓して軍営に変えるお手本である。

③立ち木と雑草によって雨露を多くする途中の時は、兵士達を行き来させるのであり、雨露を集める仕事に従事させる将軍は、さらにまして雨露を集めるための雑草と立ち木の数を増やすのである。これが、兵士達を使って雨露を多くするお手本である。

④雨露を多くして充満した状態に達すれば、切羽詰まった兵士達を癒すのであり、将軍は、拠り所にする雨露と燃料や飼料の草を増やして軍隊を確立させるのである。乾燥地に赴いた時、自軍に恩恵を施す理由は、このように定めた軍事を行うからである。
其九1-10
①四種類の場所における軍事全てを行えば戦争は順調に進むのであり、黄帝は、四種類の場所における軍事を行うよろしき実の軍隊を率いて他の四帝を抑えたのである。

②自国の戦争が順調に進めば人民達は正攻法部隊の兵士となるのであり、成熟した君主が、敵里等を陣地にする戦略を将軍に採用させた時、その君主の正攻法部隊は盛大になるのである。

③都合良く四種類の場所における軍事を行う平凡な将軍が戦争に赴けば、自国の帝王になろうとする諸侯の正攻法部隊が出現すると見なす君主は、軍事機関に赴いて注意や警告をするのである。

④自国の帝王になろうとする諸侯の正攻法部隊が出現した時、成熟した君主は、敵将軍の可愛がる者を取得して殺害する間者を敵軍営に赴かせて、あらゆる範囲において自軍に都合良い状況にするのであり、自国がよろしき実の状態に変われば諸侯の正攻法部隊を抑えて戦争を終えるのである。
其九2-1
①兵士達が駐屯する時は、高い所を喜んで低い所を嫌がるのであり、日なたを重視して、日陰は軽視するのである。

②高い所に駐屯することで、兵士達を健康にして病気が離れていけば、正攻法部隊の兵士達は将軍を敬愛して庇うのである。

③正攻法部隊の兵士達は、優れた将軍を敬って、劣っている将軍は中傷するのであり、表面上は劣っている将軍を敬愛してもこっそり侮るのである。

④兵士達を統率する優れた将軍は、兵士達にむかついてもへりくだるのであり、高尚な人格を装いたがる兵士達が存在しても将軍はこっそり侮るのである。
其九2-2
①生存している兵士達を保養して落ち着かせれば、兵士達は充実して堅固な実の軍隊になる。これを将軍に教育して必ず実行させれば敵軍より優勢になるのであり、兵士達は励み努力して病気は存在しない。

②病気の要素が集まった場所では栄養を補って生存するのである。正しく将軍に教育すれば、必ず病気を患う兵士を無くすことに励み努力して持ち堪えるのである。

③生活必需品を作り出して一杯になれば兵士達を落ち着かせるのである。正しく将軍に教育すれば、必ず豊かな土地で駐屯することに励み努力するのであり、非難する兵士は存在しない。

④奇策部隊が武力で攻め取った敵兵達は、薬や食べ物で治療して落ち着かせれば自軍の兵士となるのである。正しく将軍に教育すれば、軍隊規模を盛大にして自軍の立場を確固たるものにするのであり、敵将軍にその事態を憂えさせて全てを蔑ろにさせるのである。
其九2-3
①大きな丘に兵士達を集めて生活させて、土手によって敵軍に警戒させるのであり、敵の正攻法部隊を留まらせれば接近して敵兵達を生きたまま寝返らせる間者が出現するのである。このように敵兵達を生きたまま寝返らせる間者を利点として用いる戦術は、場所を使って力添えするのである。

②土手によって敵を防ぐための準備をする時、大きな丘に兵士達は存在しないため、将軍は、敵と親しく交流する元敵兵の間者に酒や食事を勧めさせて、敵の正攻法部隊を落ち着かせるのである。戦術を行う時、このように敵と親しく交流する元敵兵の間者を利点として用いれば、敵兵達の状態を変化させることに協力するのである。

③軍隊規模を大きくして自軍の勢いが切れ味の鋭い武器となれば、敵軍に警戒させる土手に匹敵するのであり、敵将軍が正攻法部隊を落ち着かせても自軍が接近すれば逃亡する敵兵達が出現するのである。兵士達の士気を激しく旺盛にして、このように軍隊の勢いが切れ味の鋭い武器となれば、隠れている奇策部隊の間者が逃亡する敵兵達を攻め取って自軍の兵士数を増やすのである。

④敵兵達が恐れおののいた時、自軍の正攻法部隊は敵軍に警戒させる土手に匹敵する場所を重視すれば、さらにまして敵軍から逃亡する敵兵達が出現して敵軍は敗北した状態になる。これが戦争の勝利であり、戦地は勝利の力添えをするのである。
其九2-4
①山頂で雨が降って氾濫して、河川の流れが極限にまで至った時、徒歩で川を渡ることを禁じるのである。将軍はこのように軍律を規定しておくのである。

②雨が降って河川の流れが極限にまで至れば、河川の傍を水没させるのである。しかし、あてもなく歩き回る兵士達が存在すれば、諫言して必ず引き止めるのである。

③周到に行き届いた将軍は、山頂で雨が降って氾濫する時は河川から移動して宿営するのであり、このように時間を経過させて河川の流れを安定させるのである。

④周到に行き届いた将軍は、敵将軍に河川を選ばせて宿営させることを予め決めた上で、敵組織内部と親しく交流する間者を敵軍に進入させるのであり、山頂で雨が降って氾濫した時は、自軍は高い所に移動して敵軍を水没させるのである。
其九3-1
①渓谷を横切ろうとして、自然に発生した井戸、自然に発生した穴蔵、自然に発生した野生稲、自然に発生した落とし穴、自然に発生した裂け目に出くわした時、必ず急いで兵士達を離れさせれば、浅はかな行動をする兵士は存在しないのである。

②自然に発生した井戸、自然に発生した穴蔵、自然に発生した野生稲、自然に発生した落とし穴、自然に発生した裂け目に出くわす渓谷は山が険しいのであり、浅はかな行動をする兵士を存在させること無く、必ず急いで渓谷を離れなければならないのである。

③枯渇した正攻法部隊が、渓谷にある集落に思いがけなく出会った時、穴蔵に貯蔵された生活必需品や自然に発生した野生稲を切り取り、鞭打つ処罰等を行えば、集落の人民達を窮地に追い込んでわだかまりが生じるのである。切迫した正攻法部隊が略奪行為を決行すれば、集落にいる人民達の心は離れるのであり、親しむ人民は存在しないのである。

④渓谷にある集落に思いがけなく出会った時、正攻法部隊が枯渇していても、穴蔵に貯蔵された生活必需品や自然に発生した野生稲は保証するのであり、集落が収蔵している物を使わず、収蔵物を最高限度まで増やせば集落の人民達が親しむのである。正攻法部隊と奇策部隊は、敵の正攻法部隊と集落を仲違いさせた時、水没させるように獲物となった敵部隊を取り囲むのである。
其九3-2
①渓谷にある集落から遠く離れた自軍は、敵軍をその集落に接近させるのである。自軍が敵軍をその集落に連れて来るのであり、敵軍に背を向けた状態で集落に到達するのである。

②集落から遠く離れた自軍は防御することで敵軍を近づかせないのであり、集落に接近した敵軍から浅はかな敵兵が出現すれば災いを起こすのである。未来を予測する将軍は、浅はかな敵兵が出現した時、武力で攻め取る奇策部隊に背を向けさせるのである。

③自軍が防御すれば逃亡する敵兵達が出現して災いを起こす浅はかな敵兵となるのであり、その敵兵達が集落の人民達と親しくしようとしても歯向かわれるのである。浅はかな敵兵が防御することを逆算する奇策部隊は、浅はかな敵兵が人民達から離れた時に攻撃するのである。

④遠方の国から防御した敵軍が来襲した時は、敵将軍の寵愛する者を利用するのである。出向いて迎撃する自軍が、敵将軍の寵愛する者を攻撃すれば、逃亡する敵兵達を増やすのである。
其九3-3
①山川が危険で交通困難な難所が存在して、その傍で駐屯する時は、水が深く広がった井戸に似た場所、生えたばかりのアシよりも大きく成長したアシ、副次的に人が寄り集まる場所、樹木等に覆われた日陰にある谷間の流れを頼みにするのである。慎んで軍隊を潜み隠れさせることができる将軍は、用心深く難所の傍を探求しても元の状態に戻すのであり、敵が間者を使うであろう場所は落ち着かせるのである。

②敵が間者を使うであろう場所を落ち着かせる時、集落の溜池、紙やむしろを作って生えたばかりのアシ、わずかに群がって生えている樹木、集落で使われていない用水路を利点として、待ち伏せして潜み隠れる敵間者が存在すれば、用心深く網を使って覆うのであり、自軍を驚かす敵間者を遮って思いのままに駐屯するのである。

③思いのままに駐屯して自軍が険しい場所を占有した時、守りを堅固にする将軍は、集落の溜池をすっきり整えて成長したアシで紙やむしろを作り、生えたばかりのアシが寄り集まった場所や集落で使われていない用水路に少人数の奇策部隊を覆い隠して利点とするのである。敵軍の襲撃が起こった時、守りを堅固にする将軍は厳密に防いで敵軍を尽き果てさせるのであり、その敵軍が引き返そうとする時に奇策部隊が出現して留まらせるのである。

④堅固に守る自軍は集合して敵軍を退けるのであり、補佐する奇策部隊は大きく成長したアシの中にある生えたばかりのアシにいて敵軍を侮らせるのであり、驚かせるように引き返そうとする敵軍を遮ってその敵兵達を攻め取り、敵軍の兵士数を減らして自軍は用水路の水のようにどんどん兵士数を増やすのである。攻め取った敵兵達を従わせることができても偽って仕返ししようとする敵兵が存在すれば、その敵兵は孤立させて慎重に扱うのであり、自国に仕返ししようとする元敵兵は正しい方法を使って落ち着かせるのである。
其九3-4
①敵軍が接近しても将軍が落ち着き安定している理由は、このように堅固に守る自軍を頼りにするからである。

②このように堅固に守る自軍を頼りにする将軍は、敵軍に接近した時、攻撃すると巧妙に偽ることができるのである。

③攻撃すると巧妙に偽ることができる将軍は、敵軍から浅はかな敵兵達を出現させるのであり、引き返そうとする敵軍を驚かすように遮る奇策部隊を頼りにするのである。

④引き返そうとする敵軍を驚かすように遮る奇策部隊を頼りにする将軍は、浅はかな敵兵達を武力で攻め取っても、その攻め取った敵兵達を戦闘させずに落ち着き安定させて自軍を平穏にすることができるのである。
其九3-5
①堅固に守る自軍によって敵軍を遠く離れさせた将軍は兵士達にけしかけるのであり、今にも自軍を前進させそうであれば、敵軍を本来あるべき状態に立て直そうと考える敵将軍を惑わせて都合が良いのである。

②本来あるべき状態に立て直そうと考える敵将軍を惑わせる将軍が、兵士達の欲しがる礼物を使えば自軍は勢いを生じるのであり、その自軍を避ける敵軍からは敵兵達が逃亡するのである。

③兵士達の欲しがる礼物を使う将軍は、逃亡した敵兵達の気を引いて敵軍から自国に寝返らせるのであり、時間をかければ敵将軍に事態を軽視させて都合が良いのである。

④敵将軍に事態を軽視させる将軍は、思いやりによって敵組織内部と親しく交流する間者を使うことで巧みに敵将軍を考えていた計画に固執させるのであり、敵将軍の可愛がる者を掠め取れば敵軍を撤退させるのである。
其九4-1
①数多く広がった立ち木が揺れている要因は、敵が近くまで来襲していることにある。

②近くまで来襲した敵兵達は、敵軍が動員できる敵兵達を増やすのである。

③敵軍を増員する敵兵達は、穀物を輸送してきて敵軍を感動させる者達である。

④穀物を輸送してきて感動させる要因は、穀物が敵軍隊を養うことにあるのである。

⑤敵軍隊を養うのは、いつも後から来る敵兵達である。

⑥後から来る敵兵達は、普通の人民達を動員しているのである。

⑦普通の人民達は約束された未来に心を揺さぶられるのである。

⑧心を揺さぶられた敵兵達は、自軍に付き従わせて養い育てて、その敵兵達が輸送していた穀物で自軍も養うのである。
其九4-2
①草の生え茂った所の広がりがおびただしくて行軍の邪魔をしているならば、罠は無いと信じられずに迷う要因になる。

②罠は無いと信じられずに迷う隊長は、広い範囲で漏れなく草を刈ることを重視して行軍に差し支えるのである。

③行軍の差し支えになる隊長は、草を刈る仕事を不必要に増やし、軍隊に猜疑心を抱かせるのである。

④猜疑心を抱いた軍隊は、あらゆる事柄において大雑把な仕事をしてしまう邪魔者を不必要に増やすのである。

⑤邪魔する兵士が悪影響となって大雑把に動く者を余計に増やし、軍隊を混乱させるのである。

⑥混乱した軍隊は、広い範囲を不自然に草で覆ってある場所を厳重に注意して防ぎ守るのである。

⑦防ぎ守る軍隊は、草の生え茂った所がおびただしく広がっていれば、罠の有無を確定できず怪しむのである。

⑧草の生え茂った所の広がりを不必要に増やす者は、敵軍に猜疑心を抱かせる砦になるである。
其九4-3
①鳥が飛び立つ要因は、敵の伏兵が潜んでいるからである。

②おとり部隊を動員する将軍は、同時に奇策部隊を待ち伏せさせるのである。

③おとり部隊は潜み隠れる敵の伏兵を出撃させるのである。

④おとり部隊を泳がせて出撃した敵の伏兵に追従させるのである。

⑤出撃した敵の伏兵を獲物とするのは、潜み隠れている奇策部隊である。

⑥攻め取った敵兵を助け回復させれば、その敵兵は従うのである。

⑦取得した敵兵を啓発する自軍は、敵兵を感服させるのである。

⑧取得した敵兵を自軍で起用できる要因は、敵兵を感服させたことにある。
其九4-4
①獣が恐れて散っていく要因は、敵の伏兵が存在することにある。

②馬が散っていく獣にびっくりすれば、敵の伏兵が存在することを知らせたのである。

③敵の伏兵による奇襲を恐れる自軍は、敵の伏兵が存在する場所と散っていく獣を詳しく調べるのである。

④散っていく獣を反転させれば、獣を掻き乱して散らせるのである。

⑤掻き乱れて散っていく獣は、敵の伏兵をびっくりさせるのである。

⑥掻き乱れて散っていく獣をあまねく行き渡らせれば、敵の伏兵を掻き乱すのである。

⑦獣のような残忍さで出撃する自軍は、掻き乱された敵伏兵の逃げ道をあまねく遮るのである。

⑧奇策部隊が出撃して攻め取る要因は、掻き乱された敵伏兵の逃げ道をあまねく遮ることにある。
其九4-5
①砂煙が地平から高く舞い上がって激しく盛んな様子の要因は、敵の戦車が近くまで来襲したことにある。

②戦禍が遠大に広がる切迫した雰囲気は、戦車に原因がある。

③戦禍を遠大に広げる選び抜かれた武器は、付き従わせた戦車である。

④限られた高貴な地位であり、さらに特出した敵の指揮官は、戦車に乗って近くまで来襲するのである。

⑤久しく等級が上にある特出した敵の指揮官は、直属の操縦士を慰労するのである。

⑥高い位置から見て足跡があれば、指揮官直属の操縦士が残した微細な足どりである。

⑦高い位置から敵戦車の操縦士を埃まみれにして目潰しすれば、敏捷な精鋭部隊は、指揮官直属の操縦士を取得して従わせるのである。

⑧高尚な人格を汚すならば、従わせた指揮官直属の操縦士を駒として利用して、特出した敵の指揮官を従わせる要因となるのである。
其九4-6
①敵軍が、高さがなく隅々まで横に広がっている要因は、多くの敵歩兵が近くまで来襲したことにある。

②衰えて歩兵、物資、食糧が不足すれば、敵国から歩かせるのである。

③軍事に疎くて拡充する者は、無駄にした原因があるのである。

④軍事に疎くて物事にこだわらない者は、無駄に歩兵、物資、食糧を輸送させるのである。

⑤身分や地位が低い歩兵ならば、様々なこだわりを持った者が増加するのである。

⑥謙遜して、さらに度量がある者は、様々なこだわりに合わせて歩兵を慰労するのである。

⑦軍事に疎ければ、様々なこだわりを持った歩兵が原因となって軍隊が緩む原因となるのである。

⑧軍事に疎ければ、虚が生じる原因を増加させる要因となるのである。
其九4-7
①暇な様子で細い枝を届ける者は、薪を摘み取る者である。

②役に立たたないために薪を摘み取っている敵兵を見抜く者は、能力及び適性に応じて敵兵を分類するのである。

③気晴らししながら薪を採る敵兵から間者候補を選び出す者は、能力及び適性に応じて敵兵を分類して報告する者である。

④気晴らししながら薪を採る敵兵から間者候補を選び出せば、奇策部隊が潜み隠れる場所まで薪を採る敵兵を到達させることを進言する者がいるのである。

⑤細い枝をばら撒いて、さらに全て細長く秩序立てる者は、薪を採る敵兵を集める者である。

⑥奇策部隊が潜み隠れたならば、薪を採る仕事をやり遂げようとする敵兵が出現して、薪を採る敵兵を到達させた場所に攻め取る奇策部隊がいるのである。

⑦慎まずに薪を採る敵兵を奇策部隊が出現して攻め取り、能力及び適性を見極めて間者として選んで取得する、生きたまま敵を取得する間者が登場するのである。

⑧間者として起用した敵兵を解き放てば、敵陣営を燃やすための薪を集めさせる、寝返らせても敵と親しく交流する間者を誕生させて火攻めを成し遂げる要因となるのである。
其九4-8
①若者が木材等を送り届けて戻って来る要因は、敵の陣営を建造する者のである。

②わずかな人数で印を立てて木材等の置き場所を定める者がこちらに来て過ぎ去って行くのは軍隊を統率する者がいるのである。

③昔から副官であり兵士を慰労する者は、印を立てて位置を定めて軍隊を配置する者である。

④力量が不足して死者を出した原因をつくれば、軍隊の配置について弁解する副官がいるのである。

⑤不満があって敵陣営から逃亡して自軍に帰順させる兵士が出現する要因は、軍隊を統率する副官を疑って迷うことにある。

⑥若者ならば他国からの未来ある招きに惹きつけられる者が出現し、自分が属する軍隊を謀る者が出現するのである。

⑦若者に未来を与えて帰順させる自軍の副官は、兵士の生計を立てて軍隊を編制する者である。

⑧未来ある若者が惹きつけられて軍隊に付き従う要因は、兵士を管理する副官にあるのである。
其九4-9
①跪いて別れを告げれば、自軍の優れた点を予め防ぐ者であり、敵に前進させる要因となるのである。

②謙虚に命令して、ことごとく自軍の優れた点となることを出し尽くすのである。

③屋根の低さが気にかかれば、屋敷後部の塀の高さを増やして補おうとする者が出現するのである。

④謙虚に命令すれば、警戒心にみなぎる者は、優れていない点について諫めの言葉を進上するのである。

⑤跪いてはばかり遠慮して諫めの言葉を進上しないが、貢物を献上させようとする者には用心するのである。

⑥跪いて言葉で咎めて防御や長い武器を増やそうとする者が出現すれば、推挙するのである。

⑦跪いて推挙を断っても全力を尽くして役に立つ者は大事な人材に加えるのである。

⑧屋根が低い大事な人材の家を気にかけて、豊かな収入を得る者として役立てるのである。
其九4-10
①強く命令して駆り立てて前進することは、敵を後退させる要因になるのである。

②強く命令して退却する敵は、しんがり部隊を差し出して速く走るのである。

③励まして別れを告げれば、追撃部隊を遠ざけるしんがり部隊は全力を尽くして導くのである。

④極力はばかり遠慮して、しんがり部隊に迫って諫めの言葉を進上する追撃部隊は、へりくだるのである。

⑤頑固に自軍からの提案を断って、速く走って前進するしんがり部隊は、本軍に戻るのである。

⑥しんがり部隊が強い言葉で咎めて礼物を強要すれば、不用になって敵軍から打ち捨てられたのである。

⑦無理に言葉で咎めるが消極的な様子のしんがり部隊が存在すれば、礼物で自国に寝返ることを強要するのである。

⑧告発する内容が優れているならば、本軍に戻らせる敵兵を推挙して、敵から寝返らせても敵と親しく交流する間者に導くのである。
其九4-11
①先に軽戦車が現れて占拠して測量している要因は、敵が陣営を設置することにある。

②身分が低くて若い操縦士が先制して国を離れて職務に就き、陣営地に身を置く者は、そこに住んで陣営を設置するのである。

③昔から身分が低くて若い兵士が岸辺の市場まで出掛けて買い入れ貯える時は、陣営内に広布して必要な物を募るのである。

④身分が低くて若い兵士は、産物を貯えて寝床の側部に並べて置くことを第一にするのである。

⑤身分が低くて若い兵士の最も重要な仕事は、定めた支出を不安定にする兵士を上の者に申し述べることである。

⑥昔から価値のない産物を買い入れ貯えて支出を不安定にする兵士は、財貨を出し尽くす要因になるのである。

⑦浅はかな兵士を先鋒にする策を立て、先鋒の任務に努めさせる陣列をつくるのである。

⑧身分が低くて若い操縦士が普通に過ごしていて、門から建物に至る道から便所に行けば、拉致して敵軍との関係を断ち切らせて間者に導くのである。
其九4-12
①窮乏の状態では無いにも拘わらず、自国に講和を求める要因は、敵の計略なのである。

②仮に、相互に文字による誓いを立てても、戦争をやめた後に謁見する相手国は、計略を計画しているのである。

③もしも、講和した相手国の使者がまとわりついて仲良くすることを求めるならば、自国について質問してくる者である。

④もしも、講和した相手国の使者の質問が要領を得て簡明ならば、挨拶はしても打ち解け合うことは慎むのである。

⑤交友関係が一定範囲を超えないように引き締めることを軽んじれば、「どうか一緒に歌や演奏に合わせて歌うのをお許しください」と求める使者が出現するのである。

⑥もしも、敵が無駄を省いて切り詰めている様子で自軍に講和を求めるならば、講和について考慮するのである。

⑦もしも、相互に文字による誓いを立てて、そのうえ、講和した相手国の使者が程よく穏やかな様子で教えを請えば、相談に応じるのである。

⑧まとわりついて相手に求めることなく、自国に追従する国のために働くのである。
其九4-13
①敵陣営において、下僕が急いで走り、武器を並べている理由は、敵将軍が自軍とせめぎ合うことを決めることを決めたからである。

②戦術を使う将軍は、疾走する馬を走らせ、戦術を広布して勝算が高いと期待させるのである。

③下僕は束縛せず気ままにさせておき、軍隊は陣列をつくれば待機しておくのである。

④急いで走って、合戦を始める時間を軍隊に広布する走り使いが出現するのである。

⑤合戦を始める時間を聞いた後、下僕が逃げる要因は、敵が合戦を始める時間、戦術を自軍に申し述べることを約束した間者だからである。

⑥自軍の将軍は筆を走らせて急いで使者を赴かせて、敵に災いがあることを申し述べて敵将軍と会うことを約束するのである。

⑦急ぎ赴かせた使者は、敵の戦術について説明し尽くして走って逃げることを希望するのである。

⑧敵をくつがえして追い払えば、戦略、戦術を使う将軍は「敵が恐れをなして逃げた」と必ず広布するのである。
其九4-14
①敵の一部隊が前進する要因は、自軍を誘き出そうとすることにある。

②その一部隊は敵軍が差し出したおとり部隊であり、自軍をそそのかしているのである。

③自軍をそそのかしてくるおとり部隊は、意図的に勢力を削いで捧げられたのである。

④意図的に勢力を削いで捧げられたおとり部隊は、自軍を惑わすのである。

⑤この時、意図的に勢力を削いだおとり部隊を自軍から捧げれば、逆に、敵を惑わすのである。

⑥意図的に勢力を削いだ自軍のおとり部隊を敵軍の罠に飛び込ませて、敵の奇策部隊を誘き出すのである。

⑦意図的に勢力を削いだ自軍のおとり部隊は、自軍の獲物となった敵おとり部隊を誘導して奇策部隊が隠れている場所まで連れていくのである。

⑧奇策部隊が敵おとり部隊を攻め取った後、諫めの言葉を進上して教え導けば、攻め取った元敵兵達を隊列の真ん中に配置するのである。
其九4-15
①杖をついて身を起こしている者が出現する理由は、食物がなく食べられない状態だからである。

②食物がなく食べられない状態ならば、棍棒を頼りに盗賊をして生存しようとするのである。

③飢えている者は棍棒を手に持って脅迫し、自軍の兵士を留めようとするのである。

④腹が減って留めようとする者は、自軍の兵士を食糧の拠り所にしているのである。

⑤自軍の兵士はすぐに飢えている者から棍棒を奪うのである。

⑥食糧の拠り所にされた自軍の兵士は、飢えている者を改心させて忠誠を誓わせるのである。

⑦飢えていた者は自国を生活の拠り所にして一人前になるのである。

⑧将軍は、食物がなく食べられない状態だった者に仕事を与えて頼りにするのである。
其九4-16
①国境を守る兵士が、下男に井戸から水を汲ませても先に飲んでしまう要因は、水が枯れていることにある。

②喉が渇いている兵士は、下男が井戸水を汲み入れた桶を奪い取って先に飲むのである。

③昔から、家畜や馬の飲み水が枯れれば、下男が井戸から水を汲んで家畜や馬に水を飲ませるのである。

④徴兵された国境を守る兵士には、枯れた井戸の問題を放置して、酒を飲むことを第一にする者がいるのである。

⑤辺境・国境を守る兵役に就いたら、最も重要な国境警備に没入することを切実な要求とするのである。

⑥水が枯れた時は、井戸から水を汲む下男が脱水症状で死ぬ状況に陥っても隠そうとする兵士が出現するのである。

⑦最も重要な問題を隠して露わにしない国境を守る兵士を急いで連行することを公用の労役として服させる者がいるのである。

⑧連行された国境を守る兵士に対して、切実な要求として任務に耐え忍ぶことを指導するのである。
其九4-17
①敵里の人民が利を得る理由を詳しく聞いても、里を陣地として差し出さない理由は、ひどく緊張した状態になっても、まじめに努めているからである。

②ひどく緊張した状態になってもまじめに努める敵里の人民は、自軍に対して、都合が良い敵国の見解を持っており、里を陣地として差し出さないのである。

③ひどく緊張した状態になった敵里の人民が疲れた時、将軍は大いなる礼物を敵里の人民に享受させる見解を利点として用いるのである。

④敵里の代表者を招いて対面し、将軍が大いなる礼物を利点として用いれば、その財力によって敵里の代表者を悩ませるのである。

⑤敵里の代表者に富を目視させて出し尽くすことが無ければ、まじめに里を守ろうとする考えを変えさせるのである。

⑥敵里の代表者にまじめに里を守ろうとする考えを変えさせれば、敵里の人民と会見して、将軍は大いに巧みな諫めの言葉を進上するのである。

⑦大いに巧みな諫めの言葉を進上できる将軍は、敵里の人民一人ひとりに状況を悟らせるのであり、ひどく残念がる人民達を慰労するのである。

⑧ひどく残念がる人民達を慰労すれば、将軍は敵里の代表者に提示した大いなる富を出し尽くして、人民達に思いやりを享受させるのである。
其九4-18
①鳥が集まる要因は、その場所に誰もいないことにある。

②誰もいない場所をつくれば、多種多様な鳥が集まって入り混じるのである。

③集まった多種多様な鳥達が乱れている理由は、上辺だけの集まりだからである。

④乱れた多種多様な鳥達の集まりであれば、その集まりには隙間が生じているのである。

⑤隙間のある部隊は、多種多様な種類が入り混じって乱れている鳥達であり、獲物となる敵部隊である。

⑥獲物となる敵部隊が整っていないならば、びくびくしているのである。

⑦獲物となる敵部隊がびくびくしているならば、見かけだけを取り繕うのである。

⑧獲物となる敵部隊は見かけだけを取り繕っても、脆い敵軍である。
其九4-19
①夜行する時、大声で呼び立てる兵士は、怖がっているのである。

②怖がっている兵士は、夜行する時に横柄な態度になるのである。

③横柄な態度で夜行する兵士達は、正体不明の何かを心配しているのである。

④正体不明の何かを心配して夜行している兵士達であれば、大声で叫べば、その兵士達の士気は殺がれるのである。

⑤夜行中に大声で呼び立てている敵兵達は、自軍の奇策部隊が出現することを怖がっているのである。

⑥自軍の奇策部隊が、夜行中に大声で呼び立てている敵兵達を威嚇すれば、驚いて大声で叫ぶのである。

⑦驚いて大声で叫ぶ敵兵達が出現すれば、夜行している敵軍は正体不明の何かを怖がるのである。

⑧正体不明の何かを怖がる敵軍が存在すれば、自軍の奇策部隊は大声で叫んで敵兵達を威嚇するのである。
其九4-20
①兵士達が猿のように浮ついている理由は、将軍を尊重していないからである。

②兵士達が将軍を尊重していない理由は、将軍に対して犬のように忠実に仕える兵士達が驚く軍事を行ったからである。

③将軍に対して犬のように忠実に仕える兵士達が驚く軍事を行えば、将軍に服従しない兵士達を増やすのである。

④将軍に服従しない兵士達を増やせば、猿のように兵士達を口車に乗せて軍隊を統率するのである。

⑤猿のように兵士達を口車に乗せて軍隊を統率する将軍は、きっと兵士達に厳しくしないであろう。

⑥兵士達に厳しくしない将軍が、兵士達の上に立って導こうとする時、その軍事は犬のようにころころ変わるのである。

⑦軍事が犬のようにころころ変わる将軍は、軍隊から去る兵士達を大いに増やすのである。

⑧軍隊から去る兵士達を大いに増やす将軍は、猿のように知恵の無い軍事を行ったのである。
其九4-21
①旗印が揺れている理由は、軍隊が秩序を失ったからである。

②旗印の仕事をする兵士は、軍隊を正し治めるのである。

③正し治める兵士は、旗を静止状態から動かす変化によって合図を示すのである。

④合図を示す兵士が、自軍を動かして敵軍を掻き乱すのである。

⑤旗の仕事をする敵兵は、はっきり目立つように寝返った功績を褒め称えて正気を失わせるのである。

⑥正気を失った旗の仕事をする敵兵は心を揺さぶられた状態で、合図を示すのである。

⑦敵軍の旗印を掻き乱す理由は、旗の仕事をする敵兵を驚かせたからである。

⑧敵軍の旗印を掻き乱せば、敵全軍の兵士達を恐れ震えさせるのである。
其九4-22
①役人を怒らせる理由は、兵士達が雑務を怠るからである。

②兵士達が雑務を怠れば、役人の勢力が強くなるのである。

③役人の勢力が強くなれば、ふんぞり返って尊大な態度を取る役人が出現するのである。

④役人の勢力が強過ぎれば、兵士達を雑務で疲労させるのである。

⑤ふんぞり返って尊大な態度を取る役人が出現すれば、腹を立てる兵士達が出現するのである。

⑥ふんぞり返って尊大な態度を取る役人が仕事を怠れば、腹を立てる兵士達の中から、その役人を叱責する者が出現するのである。

⑦役人を叱責する者が出現すれば、ふんぞり返って尊大な態度を取っていた役人はうずくまって反省するのである。

⑧ふんぞり返って尊大な態度を取っていた役人をうずくまって反省させる者は、役人にして奮い立たせるのである。
其九4-23
①兵士達の食糧と軍馬用の餌が不足し、水を入れて吊るしてある壷が無い状態で陣取る将軍が、自軍を自国に撤退させずに、敵軍に矢を発射して攻撃すれば、敵国に侵略しても行き詰まるのである。

②穀物、家畜の馬、宴を生活の根拠にして、敵の軍事において軽視されている地方の敵里にいる人民は、国に不平不満を言うことなく家屋を立てて定住する者であり、略奪しても貧しいのである。

③穀物で馬を飼育して筋肉をつけさせて、軍事上の都合を無視して馬を商品として掲示する敵里の者は、自軍に大々的に販売しても刑罰を免れている者であり、頼るべき身寄りがなく苦しい生活をしており、徒党を組んで悪事を働く賊なのである。

④敵の軍事において軽視されている地方の敵里を統治下に置く将軍は、このように困らせる人民が存在しても刑罰を免除して、乱暴をしないで融通を利かせるのであり、穀物を耕作して家畜の馬を飼育するのである。

⑤互いに距離がかけ離れていない敵里に陣取っていく将軍は、陣地を増やして穀物の実を租税に取って生活にあてて、自軍に服従させた敵里を敵に放棄させれば、敵国に侵略しても、完全な状態に保って消耗し尽くさせないのである。

⑥敵軍馬の無き声を察知して悪寒を感じた時、敵里からかけ離れた場所に陣取って敵軍に自軍を無視させる将軍は、敵軍が休んでいる時に自軍をその敵里に戻して、その敵軍を大いに苦しい境遇に追い込む者である。

⑦陣地にした敵里を維持する将軍は、敵に無視させる奇策部隊を敵里に滞在させておくのであり、大いに苦しい境遇に追い込まれた敵軍は奇策部隊が武力で攻め取って、敵国を捨てさせて自国に寝返らせるのであり、大きな俸禄を受け取らせて自軍に編制して強化するのである。

⑧開拓した敵里を繋げて陣地を広げても敵将軍に自軍を侮らせる将軍は、正攻法部隊の周囲を奇策部隊で取り囲むことを実践して自軍を配置し、獲物となった敵兵達に悪寒を感じさせて兵士数を増やすのである。このように完全な状態に保って敵国を抑えつけて大いに家屋を立てて定住すれば、敵国への侵略戦争が終わるのである。
其九4-24
①心を込めて飽きることなく丁寧に教えて、時間をかけてゆとりある心持ちの様子で、ゆっくり歩きながら兵士達に何かを説いている者が出現する理由は、敵軍において離脱する兵士達の人数が増えているからである。

②軍と兵士の関係について心を込めて教えて、離脱したい気持ちが治まるように働きかけて、穏やかに兵士達に誓うことは、多分、過去に犯したあらゆる過ちを見逃すことである。

③しばらくの間、心を込めて教えて働きかけても、やがて、どうでもよくなって兵士達に告げることは、多分、数多くの我慢できない事柄である。

④心を込めて教えて離脱しないように働きかけても仲違いして無駄になれば、そろそろと自軍から告げることは、敵軍から離反しようとする兵士が沢山存在していることである。

⑤自軍と敵軍の違いについて心を込めて教えてこっそり支援して、自軍の将軍には思いやりがあることを知らせて安らかにさせれば、敵軍から離反しようとする兵士の人数を増やすのである。

⑥しばらくの間支援して、逃亡する時期について心を込めて教えるのであり、やがて離反しようとする兵士達に号令をかければ、多くの兵士達が敵軍から消えるのである。

⑦離反した兵士達を敵軍からそろそろと遠ざけて関係の断絶を手伝えば、離反したその兵士達が敵に関するあらゆる事柄を自軍に告げる時、飽きることなく教え続ける存在となるのである。

⑧敵軍から離反した兵士達が間者になって習熟すれば、やがて敵の群臣にしくじらせる情報を将軍に告げるのであり、心を込めて教えて将軍を助けてくれる存在となるのである。
其九4-25
①敵の隊長が、度々、褒美を与えている理由は、敵軍が困難な状況に陥っているからである。

②困難な状況に陥った敵の隊長は、褒美の品を一つひとつ挙げて兵士達に説明するのである。

③しかし、褒美の金額を一つひとつ計算してみると、財貨が乏しくなりそうなのである。

④財貨が乏しくなりそうになった敵の隊長は、褒美を与えないために、一つひとつの罪状を数え挙げて兵士達を責めることを尊重するのである。

⑤優れた将軍は、困難な状況に陥れば、戦略、戦術を尊重するのである。

⑥戦略、戦術の真価を認める将軍は、敵軍を困難な状況に追い込むのである。

⑦自軍の将軍が、困難な状況に追い込まれていく敵軍を観賞している理由は、考えていた計画が実現していく必然性があるからである。

⑧将軍が占いを尊重すれば、自軍が困難な状況に追い込まれるのである。
其九4-26
①敵の隊長が、度々、兵士を鞭打っている理由は、鞭打たれている兵士達の過ちによって、敵軍が行き詰まっているからである。

②行き詰まっている敵の隊長は、一つひとつの罪状を数え挙げて責めてから鞭打つのである。

③一つひとつの罪状を数え挙げて責めてから鞭打つ敵の隊長は、疲れるのである。

④鞭打つ敵の隊長は、鞭打たれた兵士達に取り囲まれる運命である。

⑤自軍が兵士達の過ちによって行き詰まれば、規律に従って罰金を取るのである。

⑥一つひとつ計算して罰金を取れば、過ちを犯した兵士達は貧しくなるだけである。

⑦過ちを犯した兵士達は貧しくなれば、最も地位や身分が高そうな武将を誅殺するのである。

⑧褒美を明らかにした規律と規律に対応した罰則があれば、敵軍を苦難の境地に追い込むのである。
其九4-27
①荒々しく敵里に向かって前進しても、遅れてくる敵軍を怖がっている理由は、徹底的に鍛えられた選り抜きの兵士のいない軍隊で敵里に到着したからである。

②徹底的に鍛えられた選り抜きの兵士がいない軍隊が奪い取った敵里をぶち壊すことを第一にすれば、能力や地位が劣る敵里の人民は災難によって死ぬ者が多く、敵軍の怒りは最も極まった状態に達するのである。

③既に他界した敵里の人民を野外で風雨にさらして、敵国の人々に敬服することを重視しない品位の高くない兵士達は、敵軍の怒りを最も極まった状態にさせるのである。

④昔から、敵国の人々を虐げて敬服することを重視しない者が、武芸において、この上なく熟練の域に達したことはないのである。

⑤急いで敵里に向かって前進して、遅れて到着する敵軍を脅かす軍隊は、徹底的に鍛えられた選り抜きの兵士を大いに任用して敵里に到着するのである。

⑥徹底的に鍛えられた選り抜きの兵士は周到に行き届いており、敵国の人々を虐げる兵士達を指導して敬虔の心を継承して、純粋で精神力のある性格の兵士にするのである。

⑦大いに純粋で精神力のある性格に達した兵士は、敵軍に対する恐怖心をさらけ出しても、敵里に向かって前進して恐怖心は後回しにして考えず、敵里に到着するのである。

⑧最も重要なことは、兵士達に、敵軍に対する荒々しい闘争心を湧かせて恐怖心は後回しにして考えさせなければ、大いに活気溢れた勢いが最も極まった状態に達するのである。
其九4-28
①敵軍から使者がやって来て贈り物を献上して休戦を申し入れる理由は、休戦して休息することを必要としているからである。

②一呼吸を置く程度の短期間だけでも休息したがる敵軍は、精彩を欠いた様子で使者がやって来て過ちを認めて詫びるのである。

③精彩を欠いた様子で庇護を望んで過ちを認めて詫びてくる敵軍には、自軍につき従わせてねぎらうのである。

④休戦した後、敵軍が休戦に応じた自軍に対して礼を言うことを積み重ねれば、平安と繁栄を望むのである。

⑤敵軍から使者がやって来て贈り物を献上して休戦を申し入れても、自軍からの申し出を受け入れなければ、休戦して逃亡したいのである。

⑥自軍からの申し出を受け入れない敵将軍は、逃亡する原因を衰えた部隊に責任転嫁し、その部隊を見捨てて今にも逃亡しそうなのである。

⑦前線で戦って衰えてしまったため、敵将軍に投げ捨てられて庇護を望む敵部隊は、自国に寝返らせることで自軍は兵士数が増えるのである。

⑧前線で戦って衰えた敵部隊は、庇護を望んで自国からの助けや好意に対して礼を言い、将来、子供を産んで人民を増やすのである。
其九5-1
①兵士達を奮い立たせて互いに敵軍と対峙しても、長く留まったまま交戦せず、さらに互いに戦線から離れないのは、きっとこの対峙している戦況を慎重に扱って十分に調べてから次の行動を選択するからである。

②出撃して戦闘することを選択して武器で敵兵を殺して怒らせれば、この戦況を厳しくすることは明白と断定するのであり、将軍は長期間に渡って大々的な交戦をするうえに、さらに互いの軍隊は大々的な損害を被るのである。

③将軍の選択が災いなった時は叱責を受けるのであり、将軍は、過去の自分の選択と照らし比べて寛容することなく、この戦況を用心深く考察することを必ず実行し、大いに観察して次第に未来を予測するようになっていくのである。

④戦死者は将軍を奮い立たせて導くのであり、将軍は大いに戦況が一致する過去の戦争事例から未来を予測するうえに、さらに過去の勝ち戦を大いに鑑定し、その勝ち戦を恭しく細部まで再現することを決行する。

⑤武器で自軍の兵士達を殺された時に腹を立てても、将軍は自分の人相を見て怒りの感情を受け入れて覆い隠して交戦しない、しかし、同盟を結んだ諸侯に遣わす使者は相手から大いに人相を見られるので、必ず恭しく礼儀正しい使者を推挙しなければならない。

⑥将軍の戦略を雄健な筆勢で記して会盟を世話する使者を遣わして、将軍と大いに気持ちが通じ合い、その上、必ず恭しく将軍の戦略に了解し、敵軍を除き去るために大々的に協力してくれる古い付き合いの諸侯を迎えて連れて来させるのである。

⑦将軍が順々に逆算して対峙している戦況を見抜き、厳密に敵軍を防いで自軍の有利を確固たるものにする理由は、時間をかけて兵士達の士気を旺盛にする戦術で自軍は勢いを強くして、将軍は大いに諸侯と連合して、その上、大いに諸侯と力を合わせて敵軍を除き去るからである。

⑧将軍は、派遣した側近によって古い付き合いの諸侯を迎えて連れて来て、将軍の戦略である合従策を実行して敵軍より優勢になっても、自軍から交戦することが無い、しかし、大いに損なうと敵将軍に鑑定させるのである。このように厳密に敵軍を防いで敵将軍に既に敗北している状態を見抜かせて、自軍の有利を確固たるものにする。
其九5-2
①軍隊は兵士数が多いことを利点とせず、強大な武力を掲げて前進してはならない。十分な備えをして戦力を一つにまとめた時、敵軍を挑発して獲物となる敵部隊を出現させて攻め取ることで敵軍の兵士数を減らすのである。

②誤った戦術は利点として賛美してはならない。猛々しく前進して兵士達の脚力と共に戦力が尽きれば、敵軍になぶられて兵士達を攻め取られて戦闘が終わるのである。

③武器で敵兵を殺すことは誤りと考えて、敵軍から獲物となる敵兵達を次々と出現させることを重視するのである。将軍は過去の戦争事例を統計するのであり、意図的に勇猛さを削いだおとり部隊を差し出して、敵軍から獲物となる敵部隊を引き出した時、山のように動かず静止したまま存在に気付かれない奇策部隊は、その敵部隊を攻め取って敵軍の兵士数を減らすことに尽力するのである。

④敵将軍に、自軍の奇正の戦術を錯誤させて戦争での手柄を増やすのである。下僕で隊列を揃えて山の麓から登らせて足跡を残しておくことで、敵に奇策部隊の隠れ場所を誤って推量させるのであり、将軍は、獲物となった敵部隊をその場に停止させた時、奇策部隊に攻め取らせるのである。

⑤戦術の過ちを不必要に増やして実現した計画の数を上回ってはならない。過剰に過去の戦争事例を出し尽くし、無理をしなければ再現できない事例は取り除いて戦術を考えるのである。将軍が、奇策部隊の隠れ場所を誤って推量させた敵部隊を獲物として引き出した時、生きたまま敵を取得する間者は任務を成し遂げるのである。

⑥戦術の過ちによって災いが起こった時は、その災いを一層深めておびただしくしてはならない。正攻法部隊を構成する各部隊を前線に出す時、度を越えて怪我の酷い兵士は除外することを認めるのであり、将軍は思いやりを持ってその兵士を治療して、自軍を整えて敵軍と対峙することを求めるのである。

⑦悪口を言って災いを起こす兵士達は、溢れ出る水に等しくどんどん士気を旺盛にすることを重視するのである。軍事に優れて、災いを起こす兵士達に諫めの言葉を進上できる選り抜きの兵士を起用するのであり、下僕も隊列を整えさせずに管理させれば、災いを起こす兵士達を採用する自軍は敵軍を退けるのである。

⑧災いを起こす兵士達に利益をもたらせば、悪口を言うこと無く、将軍が行う軍事を賛美するのである。人民の収入を満足させる国家事業を行い、下僕までも対等な存在として筋道を正して善悪を整え、男性一人ひとりが妻を得ることで戦争は完全に終わるのである。
其九5-3
①そもそも、憂えることなく敵を見くびる隊長は、必ず敵将軍に生け捕りにされるのである。

②この敵将軍に生け捕りにされる隊長は自説にしがみつくのであり、大抵は考えること無く、簡単に攻撃しがちである。

③簡単に攻撃する兵士達は成年に達して役務や肉体労働に従事する者であるから、深く考えること無く軽率であり、自説にしがみつく隊長が原因となってどうしても捕虜になる。

④成年に達して役務や肉体労働に従事する兵士達は、仮に敵に憂えても常軌を失う存在であり、必ず敵軍に打ち勝とうとするのである。

⑤この必ず敵軍に打ち勝とうとする兵士達は、もしも、犯罪の経歴を調べれば、災いをなす存在が蔓延しているのである。

⑥この災いをなす存在となる兵士達は、占いの官のように協議することを蔑ろにするのであり、必ず、徹底的に鍛えられた選り抜きの兵士によって、敬虔の心を継承して純粋で精神力のある性格にして従わせなければならないのである。

⑦この占いの官に等しい兵士達は、戦略、戦術の計画を無視して自説にしがみついて、敵将軍に生け捕りにされるのである。

⑧成年に達して役務や肉体労働に従事する兵士達は戦略、戦術の計画を無視するとはいえ、将軍が変化させて敵軍に対峙させれば、敵軍に打ち勝つ条件を確固たるものにするのである。
其九5-4
①今まで自分で直接に教育して兵士達を処罰したことがない下級役人は、法規を実行しないのであり、実行しないのであれば兵士達が法規を遵守する可能性はほとんどないのである。

②今まで下級役人に教育されたことがない兵士達は、法規に大人しく従うことが無く、罰を引き受けないのが道理であり、処罰しようとする下級役人に接近して反駁の説を奉るのである。

③反駁の説を奉る兵士達は、下級役人をわずかに慕うことも、模範として感心することもない。将来、こじつけた理由で接近してきて誅殺するのである。

④それならば、将来、下級役人を誅殺しようとする兵士達には、下級役人から接近して詰め寄って責めること無く屈伏させて、法規について大いに学習させて遵守させるのである。

⑤まだ何事も生起していない時から法規を遵守する兵士達は、指導する下級役人が法規を改定すれば、大いに適応して法規には大人しく従うのであり、下級役人が兵士達を処罰しても反駁して罰を退けられることがないのである。

⑥今までに具体的な現象として反駁して罰を退けたことがない兵士達は、下級役人の信頼する人として名簿に登録し、法規について大いに学習させて大いに慣れさせて、法規に則って処罰するのである。

⑦まだ何事も問題を起こしていない時から兵士達を分類して名簿の記録を更新するのであり、等級として法規を守らなかった兵士への処分に使うことにして、施行して大いに等級を習慣化させた時、反駁して罰を退けさせること無く、兵士達を治めるのである。

⑧将来、兵士達の親類を名簿に登録すれば、下級役人が法規を守らなかった兵士への処分に使うならば大いに兵士達を任務に従事させることになり、大々的に施行すれば人民が恐れをなす働きがあるのである。
其九5-5
①中隊を編制する兵士達が、もはや下級役人から処罰されることなく任務に従事しているならば、大いに法規を遵守しているのである。

②法規を大いに遵守する中隊は、中隊長と下級役人が厳格過ぎて兵士達の心が離れて去っていくため、処罰したことが無いだけである。

③中隊長が可愛がる兵士が存在することを理由にして、その中隊を処罰することが無ければ、やがてその中隊は法規を遵守しなくなるだろう。

④法規を遵守しない中隊は、下級役人を除外して慣れ合っているのであり、将軍は大いに巡視させて罰金を取るのである。

⑤将軍によって罰金を取られた中隊は、これまでの慣れ合いを大いに改心して、やがて大いに力を尽くして模範となるだろう。

⑥兵士を鞭打ったことがない決まりが広まって、将軍を信頼する志願者が集まった時は大いに採用するのである。

⑦将軍を信頼する志願者が集まった新参の兵士達は、古参の行動を模範として処罰されること無く、大いに力を尽くすのである。

⑧自国の法規に上手く適合できずに去った兵士が出現すれば、親類を集めて大いに罰金を取るのである。
其九5-6
①法規の賞罰制度を使って切羽詰まって衰えた状態に対応し、兵士を鞭打ったことがない決まりが広まれば兵士数を増やすのである。全ての志願者を必ず採用し、自軍の兵士数を増やさなければならない。

②戦争を起こす時は、将軍は過去の戦争事例を使用して全ての志願者で大軍十万を編制し、一斉に率いて敵国に侵入する。どんな戦争事例でも必ず引き出して、直面している戦争に適合する事例を採用しなければならない。

③直面している戦争と一致する過去の戦争事例を採用して、将軍を戦術に長けていると認めている諸侯を利用するのである。この教えを消化して身につけて、必ず気持ちが通じ合う諸侯を連れて来なければならない。

④気持ちが通じ合う諸侯と連合して分岐路にある瞿地に至らせて留めた時、敵軍の進路を妨害することで自軍が敵里を陣地にする戦略を援助して、その上、自軍の武力を強大にする。正確な判断を行って、気持ちが通じ合う諸侯を連れて来て軍隊規模を強大にすれば、自軍の立場を確固たるものにするのである。

⑤敵将軍は侵略した自軍と諸侯に対応しようとするが、もはや切羽詰まった状態で動けなくなり、戦術に長けた将軍は敵里を奪い取って統治するのである。敵里を奪い取る戦略を決行した時は、自軍で統治して陣地を増やすのである。

⑥敵里を開拓して陣地として結び付ければ、敵将軍は敗北したことを認めるのである。行き来させる自国の人民を増やし、大いに家屋を立てて侵略を成し遂げた成果とする。開拓した陣地を自国の領地にして定住するに至れば、きっと自国の人民は妻を得るだろう。

⑦両国の人民は習慣として男女で連れ合いとなり、そして、子供を産んで人口が増えて、奪った元敵国領地を継いでいこうと考えるのである。敵国は、奪われた領地が自国に領地にされたことを肯定して、統治権の正当性を認めてしまうだろう。

⑧敵国が互いに援助する関係に同意して講和すれば、敵国を完全な状態に保って自国に統一するに至るのである。確かに自国の統治下に入ったと断定した時、自国の武力に加わったと見なすのである。
其九6-1
①法規や決まりは、日頃から政治による教化を行うものであり、敵国の人間にまで広まれば、敵国の奴隷が感心するのである。

②奴隷は命令を実行する役割なので、仮に人民が指示するならば大人しく従うのである。

③士官もせず身分もなく貧しい奴隷に、指摘される原因となる行動があれば、敵国の人民が奴隷に罰を引き受けさせる存在である。

④名義だけで実質や実権を備えておらず、その時々で作成される指令文書を法規や決まりと見なして、敵国の人民は奴隷に処罰を実行するのである。

⑤名義だけで実質や実権を備えて処罰命令は、指摘された奴隷が敵国を去ってゆく原因となり、人間として扱われることに憧れるのである。

⑥人間として扱われることに憧れる奴隷は、流れてきた真心のある法規や決まりを心に留め、やはり主人である人民にその法規や決まりを伝えるだろう。

⑦広まった真心のある法規や決まりによって敵国の人民を教え導けば、その人民は奴隷と共に降服してくるのである。

⑧真心のある法規や決まりを流布して、政治による教化を敵国にまで及ぼせば、敵国の人民と奴隷を取得できる将軍になるだろう。
其九6-2
①真心を持って奴隷を扱わない人民に、奴隷は大人しく従わないのである。

②奴隷が大人しく従わない人民は、日頃から大いに奴隷を働かせるのである。

③大いに奴隷を働かせる人民は、奴隷に大いに無意味な罰を引き受けさせるのである。

④奴隷に大いに無意味な罰を引き受けさせる人民は無位無官であり、官職に採用されたことがないのである。

⑤官職に採用されない人民は、人間を探求して学習することがない。

⑥人間を探求して学習することがない者は、未来を予測して、前もって行動することがないのである。

⑦前もって行動することがない者に対して、人民は大人しく従わないのである。

⑧将軍が、未来を予測して前もって大いに行動すれば、兵士達は大いに感心して任務に従事するのである。
其九6-3
①真心のある法規や決まりが広まれば、自国は、味方になる多くの人々を次第に手に入れていくのである。

②味方になった者は、日頃から真心のある法規や決まりを広めるのであり、次第に味方の人数を増やしていくはずである。

③味方の人数を増やす者は立派な手紙を書くのであり、諸侯との会盟を世話する使者に相応しいのである。

④諸侯との会盟を世話する使者が立派な手紙を書けば、敵軍に対抗する諸侯の軍隊を手に入れるのである。

⑤手紙によって敵軍に対抗する諸侯の軍隊を分岐路にある「瞿地」に赴かせれば、あらゆる事柄を補佐することになるのである。

⑥前もって行動する将軍は、あらゆる事柄を補佐する同盟を結んだ諸侯に号令できるのである。

⑦前もって行動する将軍が号令した時は、あらゆる事柄において同盟を結んだ諸侯と力を合わせて戦略を実現するのである。

⑧真心のある法規や決まりを採用すれば、味方になる多くの人々と、互いに恩恵を施し合うのである。