孫子の兵法 目次

其一 計篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・戦争に対する考え方
・戦略、戦術の概要
四通り・戦争を容易にする5つの教え「道、天、地、将、法」について  
・知識と知恵の違い
四通り・敵の実情を得る道筋の基本
・勝利と敗北を識別する七項目
四通り・素直に学ぶ姿勢の大切さ
四通り・人を欺く戦略、戦術について
八通り・戦略、戦術の計画の大切さ
  1. 其一1-1 兵は国の大事なり。死と生の之く地、存と亡の之く道は、察せざる可からざるなり。
  2. 其一1-2 故を軽くするに五を以いて之いるなり、計を以えば効いて之いるなり。以て、其の請うこと索むなり。
  3. 其一2-1 一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。
  4. 其一2-2 道は、民と上の意を同じくせしむなり。
  5. 其一2-3 故に、之を与するものは死ぬ可きなり、之を与して生う可し。民は詭らざるなり。
  6. 其一2-4 天は、陰と陽あり、寒さと暑さあり、時を制するなり。順いて逆えれば、勝なる兵あるなり。
  7. 其一2-5 地は、高と下あり、広きと狭きあり、遠きと近きあり、険しきと易きあり、死すと生かすあるなり。
  8. 其一2-6 将は、知あり、信あり、仁あり、勇あり、厳あるなり。
  9. 其一2-7 法は、曲を制し、官として道き、主るに用いるなり。
  10. 其一2-8 凡そ此の五は、将の聞かざるもの莫し。之を知る者は勝たるも、知らざる者は勝たらず。
  11. 其一3-1 故に、計を以えば効いて之いるなり。以て、其の請うこと索むなり。
  12. 其一3-2 曰く、主は孰れか賢き、将は孰れか能たり、天と地は孰れか得し、令を法すること孰れか行い、兵を衆くすること孰れか強とし、士と卒は孰れか練り、賞と罰は孰れか明らかなり。
  13. 其一3-3 吾は此を以て勝ちと負けを知るなり。
  14. 其一4-1 将の吾が計を聴きて、之を用いれば勝たること必す。之を留めよ。
  15. 其一4-2 将の吾が計を聴かざれば、之を用いるも敗れること必す。之を去れ。
  16. 其一4-3 計は利と以いて聴かば、乃ち埶を為ぶに之り、其の外す佐けたりと以うなり。
  17. 其一4-4 埶は、因ねて利とすれば而ち権を制えるなり。
  18. 其一5-1 兵は、詭る道なり。
  19. 其一5-2 能は不いに能を之いて而く視る用は、而く視て不いに用らせしめばなり。近づけば而ち之を視べて遠ざからん、而に遠ざかるものは之あるを視れば近づくなり。
  20. 其一5-3 故するもの利として之を誘し、乱れしめて之を取り、実あれば而ち備えて之い、強なれば而ち避ければ之き、怒らせれば而ち譊いて之かせしむなり。
  21. 其一5-4 備えること無する其の攻めるに、其の意わざるに出るなり。此く之を兵して勝つに、不いに伝する可きなり。
  22. 其一6-1 夫れ、未に戦いあらんとするに而の廟に筭して勝ちあるは、筭を得ること多ければなり。
  23. 其一6-2 未に戦いあらんとするに而の廟に筭して勝ち不きは、筭を得ること少なければなり。
  24. 其一6-3 筭を多とするものは筭を少とするものより勝なり、筭を无すること而く況える乎。
  25. 其一6-4 吾を以いて此を観ることに之いれば、勝ちと負けを見す矣。

其二 作戦篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・侵略戦争に必要な人、物、金について
四通り・人、物、金が困窮すれば軍隊が疲弊すること
・軍隊は、戦地に長く留めてはならないこと
四通り・人、物、金が困窮する要因について
・敵国の里等を拠り所にすれば軍隊を疲弊させないこと      
四通り・敵兵を殺害して起こる災い
・敵兵を生け捕りにして得られる利点
八通り・戦地に長く留まる戦術について
・兵士となる人民は日頃から役人に管理させておくこと
  1. 其二1-1 孫子曰く、凡そ兵の之きて用いらしむ法は、馳せる車は千駟、革の車は千乗、甲は十万を帯びる。
  2. 其二1-2 千里にして而は糧を饋れば、則ち内の費えを外す。客に之いて賓とする用、膠と漆の財、車と甲の奉、日に千金なり。然る後に十万の師は挙げる矣。
  3. 其二2-1 其の戦いに用いて、勝つも久しくすれば則ち頓れる兵は、鋭は挫けるなり、城を攻めれば則ち力は屈きるなり、久しく師を暴さば則ち国の用は足らず。
  4. 其二2-2 夫れ、兵は頓れて鋭を挫き、力は屈して貨を殫くさば、則ち諸なる侯は乗ずるなり、其の弊れる而に起こさん。雖だ知る者は能たらず、其の善くすること後にするなり。
  5. 其二2-3 故に兵は、拙たるも速やかにすることを聞くも、未だ工みにするものの久しくすること睹ざるなり。
  6. 其二3-1 夫れ、兵を久しくせしめて国を利あらせしむ者は、未だ有らざるなり。
  7. 其二3-2 兵の害に之る用の知に於いて故を尽くさざる者は、兵を之いるに利ある用を得ること能わざるなり。
  8. 其二3-3 故より、善く兵を用いる者は、役は再び籍せず、糧は再びは載せしまず。
  9. 其二3-4 用は国に取り、糧は敵に因る。故に、軍は足りて食う可きなり。
  10. 其二3-5 師に国を貧に之らせしむ者は、遠ざかりて遠に輸れしむ者なり。遠ざかりて遠に輸れしむ者は、則ち百姓は貧し。
  11. 其二3-6 近づきて匝る者は貴く売らん、故に財は竭く。役は、急ぎ丘に及ぶことに則る。
  12. 其二3-7 原の中に力の屈きれば、家に於いてする虚しき内たり、生なる之は費らうことに百めるなり、十の六は其れ去らん。
  13. 其二3-8 家の公に用は之いるに、破る車と罷める馬あり、甲と冑あり、矢と弩あり、戟と楯あり、蔽う櫓あり、丘なる牛と大なりとせしむ車あり、十の七は其れ去る。
  14. 其二3-9 故を知る将は務めて敵に食む。敵の食一鍾は、吾が廿鍾に当たり、萁と秆一石は、吾が廿石に当たる。
  15. 其二4-1 故に適を殺す者は怒るなり、敵する之を取りて利ある者は貨うなり。
  16. 其二4-2 故に車を戦かせしめ、車十乗を得て上るに以べば、其の得る者を賞めて而も其の旌旗を更めて、車は雑えて乗うに之い、卒は共えて養えば之く。是を胃すれば敵に勝ちて而は強を益す。
  17. 其二5-1 兵は故より勝ちを貴ぶも、久しくすること貴さず。
  18. 其二5-2 故を知りて兵に之く将は、民の命を司いて、国に之いて、安くにか危うくする之あるかを主とするなり。

其三 謀攻篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・戦略、戦術の基本方針について
・完全な状態に保つ上策の意味、意義
四通り・戦略、戦術の分類と意味、意義
・不適切とする戦略、戦術について
四通り・軍隊規模に応じた戦略、戦術について
四通り・軍事機関で君主が起こす三種類の災い
四通り・君主による軍事の災いを抑制する5つの知恵          
八通り・表面的な知識と実践できる知恵の違い
  1. 其三1-1 孫子曰く、凡そ用いる兵の法は、国を全うすること上と為し、国を破るは之に次ぐ。軍を全うすること上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うすること上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うすること上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うすること上と為し、伍を破るは之に次ぐ。
  2. 其三1-2 百たび戦いて百そ勝たんとすれば故あるに是き、之を善しみて善なる者に非ざるなり。
  3. 其三1-3 戦うことなくして人の兵を屈するは、之を善しみて善なる者なり。
  4. 其三2-1 謀を伐つ兵を故より上とし、其の次なるは交を伐るなり、其の次なるは兵に伐るなり。其れ、下るは城を攻めるなり。
  5. 其三2-2 攻める城に之く法は、櫓と轒轀を脩めるに、而は三月止つ。
  6. 其三2-3 城に距りて闉するに、三月有つなり、然る後に已む。
  7. 其三2-4 将は心之きて忿ること勝えざれば、之に蟻の附く而く一に之いるなり、三分の士を殺さん。而も城を抜かざる者は、之を攻めて𢦏するなり。
  8. 其三2-5 善き故ありて兵を用いる者は、人の兵を詘らすも戦うこと非るなり、人の城を抜くも攻めること非るなり、人の国を破るも久しくすること非るなり。
  9. 其三2-6 必ず天下に全うして争うこと以む。故あるも兵を頓ること不くして利たりて全うす可し。此に謀を攻める法を之いるなり。
  10. 其三3-1 故を用いる兵の法は、十なれば則ち之を囲むなり、五なれば則ち之を攻めるなり、倍なれば則ち之を分かれしむなり、敵なれば則ち能く之と戦うなり、少なければ則ち能く之を逃れるなり、若かざれば則ち能く之を避けるなり。
  11. 其三3-2 故に小さい敵に之いて堅くし、大きい敵に之いて擒えるなり。
  12. 其三4-1 夫れ、将は国するに輔けを之いるなり。輔けの周たれば則ち国して強くすること必し、輔けの隙たれば則ち国は弱ると必す。
  13. 其三4-2 君の所に之くこと以うに、軍を患わす故は三者あり。
  14. 其三4-3 軍を知らざる之は、進む以に而の可かざるも、之に進めと謂う。軍を知らざる之は、退く以に而の可かざるも、之に退けと謂う。是を、軍を縻ぐものと謂う。
  15. 其三4-4 三軍の事を知らざるも、三軍の政を同にする者あらば、則ち軍する士は惑う矣。
  16. 其三4-5 三軍の権を知らざる而をして、三軍を同に之かせしむも任せれば、則ち士とする軍は疑う矣。
  17. 其三4-6 三の軍して既に惑いて既に疑わば、至る諸なる侯は難に之く矣。是を、軍を乱されて勝なるものが引くと謂う。
  18. 其三5-1 故に勝つ知は五有り。
  19. 其三5-2 而の可く戦い与而の可かざる戦いを知らしめて、勝つ。
  20. 其三5-3 衆きと寡きの用を知らしめて、勝つ。
  21. 其三5-4 下は同に欲すること上れば、勝つ。
  22. 其三5-5 虞らしむこと以めしめて、虞えること不く侍めれば、勝つ。
  23. 其三5-6 将の能たれば而ち君の御めること不く、勝つ。
  24. 其三5-7 此の五者の知は勝ち、之を道くなり。
  25. 其三6-1 故は、皮なる知は兵するも己の知とすれば、百戦するも殆うからず。
  26. 其三6-2 皮はぐ知不ければ、己に知ありて一めて勝る而は、一に負ける。
  27. 其三6-3 皮はぐ知不く、己を知らざるものは、戦う毎に殆うしと必す。

其四 刑篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・戦争に持ち堪えられる準備について
・敵国を負かすことができる状態について
四通り・戦争に持ち堪えられる準備の意味、意義
四通り・敵軍を抑える将軍と、敵軍を打ち破る将軍の違い        
八通り・お手本の重要性について
・敵軍を抑える軍事のお手本
  1. 其四1-1 孫子曰く、昔の善なる者は、不いに勝える可き為を先にして、以て適の勝つ可きに之くに侍める。
  2. 其四1-2 不いに勝える可きは己に在り、勝つ可きは適に在る。
  3. 其四1-3 故を善くする者は、不いに勝える可き為を能くし、不いなる能をして勝つ可きに適かせ使むなり。
  4. 其四1-4 勝つ可しと曰う故は智とするも、為す可からざるなり。
  5. 其四2-1 不いに勝える可きは守りなり、勝つ可きは攻みとするなり。
  6. 其四2-2 守る則は余るもの有つなり、攻める則は足らしめざるなり。
  7. 其四2-3 昔の善く守る者は、九地を之いて下らしむこと臧しとし、九天を之いて故を上えて動き、能く自ら葆ちて全うして勝つ。
  8. 其四3-1 衆なる人の知る所を不いに過ぎる勝ちを見さんとすれば、善なる者に非ざるなり。
  9. 其四3-2 戦いて勝つ而は、天下善すると曰うも、善なる者に非ざるなり。
  10. 其四3-3 秋ぶ亳を挙げるも力多しと為さず、日に月を視ても目明なりと為さず、霆あるに雷を聞くも耳葱なりと為さず。
  11. 其四3-4 所を胃して善なる者は、勝ち易きに勝つ者なり。
  12. 其四3-5 故に善なる者の戦いは、奇しき勝ちは無く、智とさるる名は無く、勇ましき功は無く、其の勝る故を貸さず。
  13. 其四3-6 貸うこと不き者は、其の所を敗りて錯かしめて勝つ者なり。
  14. 其四3-7 善なる者は敗れるに之らざる地に立ち、而して敵の敗を失わざるなり。
  15. 其四3-8 故に是れ、勝つ兵は勝を先んじて後に戦い、敗れる兵は戦うこと先にして勝を求むこと後れる。
  16. 其四4-1 故を善くする者は道を脩めて法を保ち、故より為して能く勝ちと敗を正めす。
  17. 其四4-2 法は、一に曰く度り、二に曰く量り、三に曰く数たり、四に曰く称げ、五に曰く勝る。
  18. 其四4-3 地は生じれば度ることあり、度ること生じれば量り、量れば数を生み、数を生じれば称げ、称げれば勝ちを生む。
  19. 其四4-4 勝つ兵は朱を称りて洫を以いる如く、敗れる兵は洫に称う朱を以う如し。
  20. 其四4-5 称げて勝つ者は民を戦かしむなり、千に於いてする水を積らしめば仞するに之りて罅けて決るに如くことに刑るなり。

其五 埶篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・軍隊を運用するための基本
四通り・奇正の戦術の基本
・虚実を生み出す考え方
四通り・奇正の戦術と虚実を連動させる基本
四通り・軍隊の勢いと虚実の関係
・軍隊の勢いと虚実を駆使した奇正の戦術の基本         
八通り・軍隊の勢いについて
・軍隊に勢いを生み出す道理と技術
・人心を動かす道理と技術
  1. 其五1-1 孫子曰く、寡を治める如くして衆を治めるは、是なりて分かつ数なればなり。
  2. 其五1-2 寡を闘めしむ如くして衆を闘めしむは、刑に名づけて是せしめばなり。
  3. 其五1-3 三軍の衆を、畢く使いて適を受ける可くして敗れること无きは、奇と正の是すればなり。
  4. 其五1-4 兵を之いて加える所は、投げらる卵を以いて段える如くするなり、実と虚を是すればなり。
  5. 其五2-1 凡そ戦いは、正を以いて合し、奇を以て勝つ。
  6. 其五2-2 善なる者の奇の出だすに、天と地の如く窮まること無きなり、河の海の如くして无されること謁うなり。
  7. 其五2-3 冬ありて復た始まるは、日と月の是なればなり。
  8. 其五2-4 死ぬも、復すもの生うは、四時の是なればなり。
  9. 其五2-5 声は五を過ぎること不く、五の声あるに之るは変なり、勝るものも聴く可からざるなり。
  10. 其五2-6 色は五たび過ぎざるなり、五たび色を之かしめば変して、勝ちて観る可からざるなり。
  11. 其五2-7 味は五あるも過えざるなり、五たび味わえば之も変わり、勝げて嘗める可からざるなり。
  12. 其五2-8 戦げしむ埶は正と奇を過ぎること不く、正と奇の変を之いるなり、不いに窮めれば勝つ可きなり。
  13. 其五2-9 正を環る奇の相て生ずるに、端を毋せしむ環を之いる如くするなり。孰する能は、之を窮めるなり。
  14. 其五3-1 水の疾きに之かしめ、至りに石を漂かすことは、埶なり。
  15. 其五3-2 鷙の鳥に之りて撃するに、至るを於し、毀ちて折けしむは、節あればなり。
  16. 其五3-3 故の是を善くして戦げしむ者は、埶あらしめて其の険しくして、節あらしめて其の短くす。
  17. 其五3-4 埶とは弩を彉る如くするなり、節とは幾しあるに発する如くするなり。
  18. 其五4-1 紛紛たるも紜紜なれば、闘めしむも乱れるなり、而は不いに乱める可し。
  19. 其五4-2 渾渾なるものありて沌沌なるに、円に刑れば而ち敗ることに可たること不し。
  20. 其五4-3 乱れるは治に生ずるなり、脅やかすものは勇ましきものに生み、弱きものは強きものに生むなり。
  21. 其五4-4 治を乱すは数あればなり、勇ましきものを脅かすは埶あればなり、強なるものに弱きあらしむは刑あればなり。
  22. 其五4-5 適を動かすこと善くする者は、刑を之いて之に適かしめて従わしむこと必するなり、之を予めするなり、適より之を取ること必するなり。
  23. 其五4-6 此を以いて之を動かし、侍を以いる卒を之いるなり。
  24. 其五5-1 故に善くして戦う者は、埶に之を求めるなり、人ごとに責めず。故より而任せて、埶ある人を能く択ぶなり。
  25. 其五5-2 埶ありて任する者は、民をして戦げしむなり、木と石の転ぶ如くするなり。
  26. 其五5-3 木と石の生は、安んずれば則ち静まり、危うくすれば則ち動き、方なれば則ち止まり、円なれば則ち行くなり。
  27. 其五5-4 人を戦げしむ善は、故を埶にして之いるなり、千仞の山に円き石を転ずる如くするは、埶あればなり。

其六 虚実篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・虚実の理解に繋がる事例
四通り・虚実を戦略、戦術に利用する基本的な考え方
四通り・防衛と虚実の関係について
12四通り・実戦的な虚実の教えと事例
四通り・虚実と「奇正、勢い、道理、お手本、計画、人心」との関係を総括
八通り・虚実を操る技術に繋がる道理と実践方法まとめ
  1. 其六1-1 処を戦いて地を先んずる而の侍めれば戦く者は失し、処を戦うも地に後れる而は趨たりて戦うことに労す。
  2. 其六1-2 善ありて故らしめて戦う者は、人を致すも人に致さること不し。
  3. 其六1-3 適をして自ら能く至ら使むは、利を之いればなり。
  4. 其六1-4 適をして至ら使むを得ること能わざるは、之を害なえばなり。
  5. 其六1-5 適に故るものあれば、労れる之を能く失し、飢なる之を能く飽かすは、其の所に必ず出づことに趨けばなり。
  6. 其六2-1 能の千里に行くも畏れること不きは、无人の地に行けばなり。
  7. 其六2-2 攻めれば而ち必ず取るは、其の守らざる所を攻むればなり。
  8. 其六2-3 守れば而ち固く必すは、其の攻めんとする所を必ず守ればなり。
  9. 其六2-4 故を善くして攻みとする者は、適ならしめて守る所を知らしめず。
  10. 其六2-5 善を守る者は、所を攻めて知り、不いに適うなり。
  11. 其六2-6 微なる乎、微かなる乎、刑を无せしめば至りを於せしめ、至りを於せしめば声を無せしむなり。能は故るを為すものあらしめば、適は司うこと命ずるなり。
  12. 其六3-1 進むも迎えて可たること不きは、其の虚しくして衝けばなり。
  13. 其六3-2 退くに可たりて止められること不きは、而く遠ざけて、及ぶ可からざればなり。
  14. 其六3-3 故より我の戦うこと欲すれば、適の塁を高くして溝を深くすと雖も、不いに我を戦かしめて与すること得ざるは、其の所に攻めしめて必ず救えばなり。
  15. 其六3-4 我の戦いを欲せざるに、地を画りて之る適を守るなり、不いに得て我と戦うものを与するは、其の所を膠して之らしめばなり。
  16. 其六4-1 故の善を将う者は、人を刑めて刑めること无せして、則ち我は槫して適を分かれしむなり。
  17. 其六4-2 我は槫して壱と為して、適は分けしめて十たら為むは、十たる是を以いて壱を撃てばなり。
  18. 其六4-3 我は寡なりて適の衆なれるも、能の寡を以いて衆より撃つは、我は則を之いて戦う所ある者は寡なくせして地たること不しと知らしむ可し、則ち備わる者ある所に適を之らしめて多ればなり。
  19. 其六4-4 備える所にある者多ければ、則ち戦う所ある者は寡なき矣。
  20. 其六4-5 前に備える者は後ろを寡とし、左に備える者は右を寡とすなり、備えを不いに无する者は、寡きものあるを不いに无するなり。
  21. 其六4-6 寡き者は、人を備える者なり。
  22. 其六4-7 衆は、人ごとに己を備え使む者なり。
  23. 其六4-8 戦う日に之ること知りて、戦いに之る地を知るに、千なる里ある而は戦かしむなり。
  24. 其六4-9 日に戦いあるに之くと知ること不く、戦う地に之きて知ること不ければ、前むものは後れて救うこと能わず、前むこと後にするものは救わんとするも能えず、救あらしむこと左にして右なるものに能ず、右せんとするも左されて救うこと能わず。数里の近き者より数十里の遠き者に皇あり。
  25. 其六4-10 以て、吾が度ること之いれば、越人は兵に之るも雖だ多きのみ、亦た奚ぞ勝ること益と於して𢦏することあらん。
  26. 其六4-11 曰に故あり、勝たらしめて可たらしむこと擅にするなり。
  27. 其六4-12 適の唯だ衆きのみならば、闘めること毋からしめて可とするなり。
  28. 其六5-1 故を之いて績ぐ而は動と静の理を知るなり、刑を之いる而は死と生の之く地を知るなり、計を之いる而は筭に之いて得と失を知るなり、角べる之は余るもの有てば不いに足りて処に之ること知るなり。
  29. 其六5-2 刑める兵は極まりて之かしむなり、至れば刑を无せしむを於す。
  30. 其六5-3 刑を无せしむに則れば、深くする閒は規ること能わざるなり、知ある者は弗うこと能く謀るなり。
  31. 其六5-4 因ねて刑める而は錯たらしむ衆に勝るなり、能は衆に知らしめざるなり。
  32. 其六5-5 刑を以せば人皆我を所と知らん、而れども、刑を制に以めば吾が所と知るもの莫し。
  33. 其六5-6 所を以いて勝てば復る者不し、而れども、刑に応ずるもの窮まること無し。
  34. 其六6-1 夫れ兵は水に象りて刑めるなり。
  35. 其六6-2 水の行くに、高を辟けて下に走るなり、兵の勝つに、実を辟けて虚を撃つなり。
  36. 其六6-3 水の故なして地を因ねれば而ち制を行わしむなり、敵を因らしめて兵たりて勝を制めるなり。
  37. 其六6-4 埶を成すも兵すること无く、恒くして刑を无せしめ、与にするものをして能く敵と化する。之を胃するものは神なり。
  38. 其六6-5 五なりて行いは无かしめば恒なりて勝つなり、四時を立てれば常ること无し。
  39. 其六6-6 日には短きと長き有り、月には死と生有り。

其七 軍争篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・先を争って敵里を陣地にする戦略(汙直の計)の基本      
四通り・無暗に先を争った時に生じる災いの事例
四通り・汙直の計を成功させるために必要な事柄
四通り・孫子兵法における基本戦略(汙直の計、合従策)
・孫子兵法における行軍方法(風林)
・孫子兵法における基本戦術(火山陰雷震)
四通り・軍隊に対する指示方法の基本
八通り・軍隊の統率力を左右する人心の操り方
・将軍に求められる合理的な行動について
  1. 其七1-1 孫子曰く、凡そ兵に之きて用いる法は、将は君に命を受けるに、軍を聚める衆に合い、交和すれば而ち舎めるも、難れしむこと莫りて争いて軍するを於す。
  2. 其七1-2 之を争いて軍すること難きは、直に迂なりて為めること以わしむに、利なりて患いを以むこと為せばなり。
  3. 其七1-3 其の途を迂す故は、而は之に誘うなり、以めしめて利あり。
  4. 其七1-4 人を後ぐに発わしめて、人より先んじて至る者は、汙たらしめて直に之く計を知る者なり。
  5. 其七1-5 争いて軍すれば為めて利たらしむなり、軍と争うものは危ぶみて為めるなり。
  6. 其七2-1 軍を挙げて争いて利れば、則ち師及ばず。
  7. 其七2-2 争いて利るに、而は軍に委ねれば、則ち重き輜は捐てらる。
  8. 其七2-3 故を是すも、甲を絭して趨ること利れば、日も夜も処らず、道を倍して行を兼ねるなり。百里にして利りて争えば、則ち上将を禽にせらる。
  9. 其七2-4 勁き者は先んずるも、罷れる者の後れれば、則ち十より一のみ以いて至るなり。
  10. 其七2-5 五十里にして利りて争えば、則ち上将は厥するなり、半ば至るも法されて以むなり。
  11. 其七2-6 三十里にして利りて争えば、則ち三に分れて之かしむに二は至るなり。
  12. 其七2-7 是なる軍も、故より、重き輜毋ければ則ち亡れるなり、食らう糧無ければ則ち亡れるなり、責めるも委无ければ則ち亡れるなり。
  13. 其七3-1 故を是とせしめて、諸なる候の謀を知せしめざる者は、予ら交むこと能わざるなり。
  14. 其七3-2 山と林にある、険なる阻、沮む沢を之く刑を知らざる者は、軍して行ること能わず。
  15. 其七3-3 郷に道りて用いざる者は、地を得ること利とすること能わず。
  16. 其七4-1 兵は、故より詐りを以て立つなり、利を以て動かしむなり、分を以いて合して変ぜしむことなり。
  17. 其七4-2 故に、其の疾きこと風の如く、其の徐きこと林の如く、侵して掠めること火の如く、動かざること山の如く、知るを難くすること陰の如く、動かすこと震えて雷す如し。
  18. 其七4-3 郷を掠めれば衆を分かち、地を廓て利を分かつなり、県けて権あれば而く動くなり。
  19. 其七4-4 汙たらしめて直に之く道を知りて、先んずる者は勝たらしむなり。此、争いて軍して之いる法なり。
  20. 其七5-1 是れ、軍の正は故より曰く、言は相い聞こえず、故に鼓の金を為す。視は相い見らしめず、故に旌を旗と為す。
  21. 其七5-2 是せしむ故は、昼の戦いは旌旗を多とし、夜の戦いは鼓金を多とすればなり。
  22. 其七5-3 鼓金と旌旗を所に以いる者は、民の耳と目を壱にせしむなり。
  23. 其七5-4 民を槫せしめて已に既べば、則ち勇ましき者は得て独り進むこと不く、怯なる者は独り退くを得ず。此、衆を用いて之かしむ法なり。
  24. 其七6-1 故なる三軍は気を奪う可く、軍する将は心を奪う可し。
  25. 其七6-2 是れ故は、朝の気は兌たり、昼の気は惰り、暮れの気は帰す。
  26. 其七6-3 是れ、故を善しみて兵を用いる者は、其の兌なる気なれば辟けて、其の惰と帰なれば撃つ。此、気に治する者なり。
  27. 其七6-4 以すに治する侍を乱すなり、以すに静かなる侍をして譁せしむなり。此、治して心なす者なり。
  28. 其七6-5 以すに侍う近きものに遠ざかしむなり、以すに失す侍に労たらしむなり、以すに飢なれば侍いて飽かすなり。此、治して力あらしむ者なり。
  29. 其七6-6 旗を之いる正す正を要える毋かれ、 陳を之いる堂の堂を撃つ毋かれ。此、変えて治する者なり。
  30. 其七6-7 故に、兵に用せしめて之いる法は、高に陵ぐものに郷かう勿かれ、丘に倍すものを迎える勿かれ、詳たる北に従う勿かれ、囲む師あるに闕くこと遺てるなり、帰せしめて師あらしむこと謁う勿かれ。衆の之るに此に法りて用いらしむなり。

其八 九変篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・敵国にいる軍隊に起こり得る9種類の異変
四通り・利点と都合が悪い点を組み合わせて異変に対処する考え方    
・利点と都合が悪い点を戦略、戦術に活かす方法
八通り・災いを起こす5種類の将軍について
  1. 其八1-1 孫子曰く、凡に用る兵の之いる法は、将の命を受けて君たりを於すも、衆を聚める軍に合わすに、泛地には舎くこと無く、瞿地は交わりに合わし、絶地には留まること無く、囲地あれば則ち謀るなり、死地なれば則ち戦うなり。
  2. 其八1-2 所の有る途は由ら不れ、所を有つ軍は撃た不れ、所を有つ城は攻め不れ、所を有つ地は争わ不れ、所を有つ君の令は行わ不れ。
  3. 其八1-3 故を通す将は、九変に於いてするも之を利とする者なり、用を知りて兵なす矣。
  4. 其八1-4 九変に於いてするに、之を利とすること通ぜざる将は、雖だ地の刑を知るのみ、地に之くに利を得ること能わざる矣。
  5. 其八1-5 兵を治めるに、九変に之る術を知らず、雖だ五は利しと知るのみなれば、人を用いて之を得ること能わざる矣。
  6. 其八2-1 是なる故あるも、智ある者は之を慮りて、利と害むに雑えて必するなり。
  7. 其八2-2 利に雑えるに、故より信ある可に務めるなり。
  8. 其八2-3 害むに雑えるに、故より憂える患いを解く可し。
  9. 其八2-4 是に故なして、諸なる侯を屈する者は害ましめて以めるなり、諸なる侯を役する者は業を以すなり、諸なる侯を趨かしむ者は利あるに以ぶなり。
  10. 其八2-5 故を用いる兵に之いる法は、其の来らざるを恃むこと毋かれ、待つ有を以いて吾ぐこと恃むなり。
  11. 其八2-6 其の攻めざるを恃むこと毋かれ、吾に之いて攻める可からざること恃むなり。
  12. 其八3-1 故なす将に五有り、危うくするなり。
  13. 其八3-2 必して死すこと可くものは殺すなり。必して生なるを可くものは虜にせらるなり。速くものの忿ること可くものは侮られるなり。廉なる潔きものを可くものは辱めらるなり。民を愛でること可くものは煩なるなり。
  14. 其八3-3 此の五者の凡は、将の過ちなり、兵の災いなり。
  15. 其八3-4 殺す軍を覆する将は、五を以して危うくするなり、必ず察せざる可からざるなり。

其九 行軍篇

段落句数解読文の数教えの概要
10四通り・四種類の場所「高くそびえた山、高くて平坦な土地、河川、乾燥地」
における軍事について
四通り・四種類の場所における軍事への補足事項
四通り・渓谷及び集落における軍事について
・奇策部隊(間者)の具体的な隠れ場所や心得
28八通り・戦争で生じる具体的な現象から導かれる道理や教え
八通り・対峙している戦況から未来を予測する方法
・兵士となる人民の属性と扱い方
八通り・真心のある法規や決まりの意味、意義
  1. 其九1-1 孫子曰く、凡そ、軍は敵を相て処するなり。
  2. 其九1-2 山を絶るに谷に依るなり、視て処る高を生むなり、戦いあるに降る毋かれ、登るなり。此、山を之く軍の処なり。
  3. 其九1-3 易なる処に、平らかなる陸あれば、而は右けて高を倍するなり、死を前にして後ろに生うなり。此、陸を之いて軍する処なり。
  4. 其九1-4 水を絶れば、必ず水より遠くするなり。
  5. 其九1-5 客の水を絶りて来たらんとするに、水の内に於いてして之を迎える勿かれ、半ばをして済らせ令めて利なりて之を撃つなり。
  6. 其九1-6 戦わんと欲す者あれば、水に附けるもの無くして客を迎えるなり。
  7. 其九1-7 生ずるものを視るものは高に処するなり、水に流して迎えること無し。此、水の上を之いて軍する処なり。
  8. 其九1-8 斥の沢を絶るに、留まること無く、惟れ亟やかに去る。
  9. 其九1-9 為し交なりて斥に軍すれば、沢いを中ちしめて之いるなり、草ある水に依りて衆き樹を倍するなり。此、斥に沢を之いて軍する処なり。
  10. 其九1-10 凡そ四なせば軍は利しく之くなり、黄帝は之なす所を以いて四帝に勝つなり。
  11. 其九2-1 凡の軍するに、高を好みて下を悪むなり、陽を貴びて陰は賤しむなり。
  12. 其九2-2 生を養いて処れば、実たるなり。是を謂えて必せしめば勝るなり、軍は百めて疾无し。
  13. 其九2-3 陵に丘して、隄に防げしむなり、其の陽を処らしめば而ち右して倍かしむ之あるなり。此く之を利とする兵は、地を之いて助けるなり。
  14. 其九2-4 上に雨ふりて水たりて、水の流の至るに、涉ること止めるなり。侍は其れ定めるなり。
  15. 其九3-1 澗を絶らんとして、天なる井、天なる窖、天なる離、天なる陥、天なる郄に遇うに、亟やかに之を去らしめば、近は勿きなり。
  16. 其九3-2 之に遠くする吾は、敵は之に近づかしむなり。吾は之に迎えるなり、敵を倍して之るなり。
  17. 其九3-3 険有りて、旁らに軍するに、潢なる井、葭より葦、小さき林、翳の澮に阻るなり。伏して匿せしむ可き者は、謹んで之を索めるも復すなり、姦に之いんとする所は処るなり。
  18. 其九3-4 敵の近づくも而の静まるは、其れ険たるものを恃めばなり。
  19. 其九3-5 敵を遠くせしむ而は人に挑むなり、人を之に進めしめんと欲すれば、其の所たらんと居く者を易せしめて利しきなり。
  20. 其九4-1 衆樹の動くは、来ればなり。
  21. 其九4-2 衆草の多く障たば、疑えばなり。
  22. 其九4-3 鳥の起つは、伏なればなり。
  23. 其九4-4 獣の駭すは、覆あればなり。
  24. 其九4-5 塵の高くして鋭きは、車の来たればなり。
  25. 其九4-6 卑くして広きは、徒の来たればなり。
  26. 其九4-7 散じて条を達ける者は、樵を採る者なり。
  27. 其九4-8 少にして往りて来るは、軍を営む者なればなり。
  28. 其九4-9 庳くして辞さば益を備える者なり、進めしめばなり。
  29. 其九4-10 強く辞して駆りて進むことは、退ければなり。
  30. 其九4-11 先づ軽車の出でて居りて廁るは、陳なればなり。
  31. 其九4-12 約の無けれども和すること請うは、謀なればなり。
  32. 其九4-13 走の奔りて兵を陳ねるは、期なればなり。
  33. 其九4-14 半なるものの進むは、誘えばなり。
  34. 其九4-15 杖つきて立つ者あるは、飢なればなり。
  35. 其九4-16 役の汲みせしむも先ず飲むは、渇なればなり。
  36. 其九4-17 郷の人の利あること見るも進めざるは、拳するも労たればなり。
  37. 其九4-18 鳥の雑まるは、虚なればなり。
  38. 其九4-19 夜するに嘑ぶ者は、恐れるなり。
  39. 其九4-20 軍の獶たるは、将を重んざればなり。
  40. 其九4-21 旌旗の動くは、乱なればなり。
  41. 其九4-22 吏を怒らすは、倦めばなり。
  42. 其九4-23 粟と馬の肉は食し、県ける甀無くして軍する者の、反さず其の舍てば、寇すも窮まるなり。
  43. 其九4-24 諄諄たりて閒閒として、徐して人ごとに言う者あるは、其の失う者の衆くすればなり。
  44. 其九4-25 数賞するは、窘しめばなり。
  45. 其九4-26 数罰すは、困しめばなり。
  46. 其九4-27 暴く先んずるも後れる其の衆を畏れるは、精を之いず至ればなり。
  47. 其九4-28 来たりて、委して謝するは、息みて休まらんことを欲すればなり。
  48. 其九5-1 兵を怒せしめて相い迎えるも、久しくして合せず、又た相い去らざるや、必ず此を謹みて察すればなり。
  49. 其九5-2 兵は多きを益とするに非ず、武にして進む毋かれ。足るを以て力を併せるに、敵を料して人あらしめて取りて已むなり。
  50. 其九5-3 夫れ、惟れ慮ること無くして敵を易る者は、必ず人に擒らえらるなり。
  51. 其九5-4 未だ親しく傅きて之を罰せざる卒は、則を服わざるなり、服わざれば則ち用い難きなり。
  52. 其九5-5 槫なる卒の、已に親しみに罰せらること不く行わば、則ち不いに用いるなり。
  53. 其九5-6 之を以いて交なりて故るに合わし、之の以べば武を済すなり。是なるものも必ず取りて胃する。
  54. 其九6-1 令は素より教えを以すものなり、其の民に行われば、民は服すなり。
  55. 其九6-2 素ありて行わざる者に、民は服わざるなり。
  56. 其九6-3 素なる令の行わば、与する衆を相い得るなり。

其十 地刑篇

段落句数解読文の数教えの概要
14四通り・六種類の戦地の型「通、挂、支、隘、険、遠」における奇正の戦術
四通り・敗北に達する六種類の災い「走、弛、陥、崩、乱、北」について
四通り・六種類の戦地の型と六種類の災いの実戦における心得
四通り・兵士を可愛がる将軍が起こす災いと対処方法
八通り・表面的な知識と実践できる知恵の違いの具体例
  1. 其十1-1 孫子曰く、地の刑には、通じる者有り、挂かる者有り、支かつ者有り、隘き者有り、険しき者有り、遠き者有り。
  2. 其十1-2 我は以いて往く可く、彼も以いて来る可ければ、通と曰う。
  3. 其十1-3 通に刑める者は、高き陽に居ること先にして、糧を道らしむ利ありて、以て戦うことに則りて利あらしむなり。
  4. 其十1-4 往かしめて以む可きも、返ること以し難ければ、挂と曰う。
  5. 其十1-5 挂に刑る者は、敵の備えること無くして出でんとすれば而ち之をして勝たしむなり。敵の若し備えを有ちて出れば而ち勝たざるなり、難き以は、返るもの不いに利たればなり。
  6. 其十1-6 我を出でしめば而ち利しからず、彼を出でしむに而の不いに利あれば、支と曰う。
  7. 其十1-7 支に刑る者は、敵の我を利すると雖も、我を出でしむこと無きなり。
  8. 其十1-8 引くも去る之は、敵をして半なるものを出で令めて利なりて撃つに之るなり。
  9. 其十1-9 隘に刑める者は、先んじて我を之らしめて居らしむなり、必ず以す之を盈たしめて敵を待つなり。
  10. 其十1-10 若し敵の先んじて之に居りて盈ちれば而ち従う勿かれ、盈ちるに不ざれば而ち従を之いるなり。
  11. 其十1-11 険に刑める者は、先んじて我を之らしめて居らしむなり、必ず陽らかなる高を以いて居り、敵を待つなり。
  12. 其十1-12 若し敵の先んじて之に居りて引けば而ち之より去らしむ勿かれ、従あるなり。
  13. 其十1-13 遠に刑める者は、難ありと以うに均しく埶えるなり、挑みて戦かしむなり。戦う而は、不いに利たらしむなり。
  14. 其十1-14 此の六者の凡は、地を之いる道なり。至る将は之を不いなる可として任するなり、不いに察するなり。
  15. 其十2-1 兵の故には、走ること有り、弛むこと有り、陥れること有り、崩れること有り、乱れること有り、北くこと有り。
  16. 其十2-2 此の六者の凡は、天の地之く災いに非ず、将の過ちなり。
  17. 其十2-3 夫は埶を均り、一に撃たれると以いて十たるは、走と曰う。
  18. 其十2-4 卒は強くして吏の弱きは、弛と曰う。
  19. 其十2-5 吏は強くして卒の弱きは、陷と曰う。
  20. 其十2-6 大吏は怒りて服せず、懟む敵に遇えば而ち戦い自りて、其の能たること知らざる将あれば、崩と曰う。
  21. 其十2-7 将は弱くして厳かに不く、教える道は明るからず、常を無する卒を吏として、兵の縦に陳せしめて横たるは、乱と曰う。
  22. 其十2-8 将は敵を料ること能わず、少を以て衆に合い、弱きを以て強きを撃ち、兵を無して鋒を選ぶは、北と曰う。
  23. 其十2-9 此の六者の凡は、敗に之る道なり。将は之に至れば任えて、察せざる可からざるなり。
  24. 其十3-1 夫の地に刑る者は、兵を之いるに助けしむなり。
  25. 其十3-2 敵を料りて勝を制えれば、険に阨せしめて遠ざかるに近あらしむ計なさん、上なる将は道を之いるなり。
  26. 其十3-3 此を知りて戦うこと用いる者は必して勝たしむなり。此を知らざるも戦うこと用いる者は必して敗れるなり。
  27. 其十3-4 戦かしむ故を道いて勝ちを必すれば、主は戦くこと無しと曰いて、戦いを必すること可くなり。
  28. 其十3-5 戦うこと道うに勝らずんば、主の戦いを必せよと曰うも、戦いに可くこと無きなり。
  29. 其十3-6 故に進くすこと不きも名を求め、退くも罪されること不いに避けんとして、唯だ人のみ是れ保み、利しく主に合わす而は、之を宝として国するなり。
  30. 其十4-1 児に嬰う如く卒を視れば、与する之と故に深き谿に赴く可し。
  31. 其十4-2 子として愛でる如くして卒を視れば、故あるに、之と倶に死に与たらしむ可し。
  32. 其十4-3 厚くして使うこと能わず、愛でて令すること能わずんば、乱して治めること能わず。譬すも驕る子の若し、用いる可からざるなり。
  33. 其十5-1 卒に之るに以せば撃つ可しと吾は知るも、而れども敵の撃たざる可に之かしむ知不ければ、之は勝えるも半たるなり。
  34. 其十5-2 之におりて可たれば撃つと敵は知り、卒に之るに以せば撃たざる可ありと吾は知らざれば、勝におられて之は半たるなり。
  35. 其十5-3 之に撃つ可しと敵は知りて、卒に之るに以せば撃つ可しと吾も知れば、而ち不いに地の刑を知りて、不いに可かしむ之は以して戦げしむなり、之は勝えんとするも半たるものあるなり。
  36. 其十5-4 故を知りて兵なす者は、動かせば而ち不いに迷わすなり、挙げしめば而ち不いに窮まらしむなり。
  37. 其十5-5 故に曰く、皮なる知を己の知とすれば、勝たりて乃ち殆うからず。
  38. 其十5-6 天を知りて、地を知りて、勝りて乃ち窮まること不きなり。

其十一 九地篇

段落句数解読文の数教えの概要
13四通り・侵略戦争で出現する9種類の戦地
「散、軽、争、交、瞿、重、泛、囲、死」について
八通り・自国が侵略される場合の対処方法
12八通り・戦地「死地」に至る過程に沿った実践的な教え
八通り・元敵人民と自軍の兵士と共に働かせる方法
八通り・旗の仕事をする敵兵を買収して敵将軍の計画を無効にする方法
・元敵人民と自軍の兵士を合わせた軍隊を自在に動かす道理
17八通り・「九変、地刑、九地」で登場した「地」の類型を基礎にした、  
あらゆる「地」に対する実践的な教え
八通り・合従策で連携する諸侯の扱い方、指導方法
・敵国及び城壁に囲まれた敵都市を攻め落とす方法
八通り・戦地「死地」に突入させる軍隊に対して講じる処置
八通り・戦地「死地」で兵士達に全力を尽くさせる処置
・城壁に囲まれた敵都市の門を突破する方法
・各戦略、戦術を組み合わせて同時に展開する事例
  1. 其十一1-1 孫子曰く、兵に用るに、散地有り、軽地有り、争地有り、交地有り、瞿地有り、重地有り、泛地有り、囲地有り、死地有り。
  2. 其十一1-2 諸の侯に其の戦げしむ地は、散と為す。
  3. 其十一1-3 人の地に入るも深からざれば、軽と為す。
  4. 其十一1-4 我は得れば則ち利あり、彼の得るも亦た利あれば、争と為す。
  5. 其十一1-5 我は以いて往く可くも、彼も以いて来る可ければ、交と為す。
  6. 其十一1-6 諸なる侯の地の三属まりて、先んじて至れば而ち得て天を下す衆に之けば、瞿と為す。
  7. 其十一1-7 人の深き地に入りて、多き城と邑を倍すれば、重と為す。
  8. 其十一1-8 山と林に行くに、沮む沢あれば、凡そ之を行きて道ること難しとすれば、泛と為す。
  9. 其十一1-9 由る所は入る者を隘てて、従う所は帰す者は汙におりて、寡き彼は衆き吾を撃つ可しと以うならば、囲と為す。
  10. 其十一1-10 疾ければ則ち存ち、疾きに不ざれば則ち亡れれば、死と為す。
  11. 其十一1-11 故に是くに、散地ならば則ち戦かしむこと毋かれ、軽地ならば則ち止まること毋かれ、争地ならば則ち攻めしむこと毋かれ、交地ならば則ち絶すこと毋かれ、瞿地ならば則ち交わりと合せよ、重地ならば則ち掠めろ、泛地ならば則ち行れ、囲地ならば則ち謀れ、死地ならば則ち戦え。
  12. 其十一1-12 善き古を胃する所き者は戦うなり、能は適う人をして前めて後れ使むなり、不いに相い及ぶなり。衆と寡は不いに相い恃むなり、貴と賤は不いに相い救うなり、上と下は不いに相い収めるなり、卒は離ねれば而ち不いに集んずるなり、兵を合わせて不いに斉うなり。
  13. 其十一1-13 合わして利の於いてすれば而ち動き、合わすも利の於いてせざれば而ち止たしむなり。
  14. 其十一2-1 敢えて問う、適の衆なりて正を以いて、将に来たらんとす。侍は之に若何せん。
  15. 其十一2-2 曰く、其の愛でる所を奪えば則ち聴う矣。
  16. 其十一2-3 兵あれば之は主に数を請げるなり、人も之を乗りて不いに給うなり。虞かんとする之あれば由ること不く道くなり、其れ所の攻めれば不いに戒めるなり。
  17. 其十一3-1 凡そ客の之いる道を為せば、深くするものの入らしめて則ち専らにせしめて、人を不いに克つこと主とせん。
  18. 其十一3-2 饒かな野を掠めて於いてすれば、三軍の食は足らん。
  19. 其十一3-3 謹んで養いて労すること勿くんば、気を并てて積なすに力めるなり。兵を運らしめて計を謀るなり、不いに為べば可に賊あらんや。
  20. 其十一3-4 之は往く所毋きに投れば、死たり且つ北かざるなり。死に不いに得るなり、士と民は尽く力めるなり。
  21. 其十一3-5 兵に士を甚だしきに陥れれば則ち不いに懼れるなり、往く所の無ければ則ち固めるなり。
  22. 其十一3-6 深きに入れば則ち拘らえるなり、往かう所の無ければ則ち闘するなり。
  23. 其十一3-7 故に是くに、不いに調りて戒めるなり、不いに求めて得るなり、不いに約して親らするなり、不いに令して行くなり。
  24. 其十一3-8 禁して祥ければ去ること疑うなり、死に至るに、之は所を無するなり。
  25. 其十一3-9 吾が士に余る財無ければ、非とするも貨に悪なすなり。
  26. 其十一3-10 死に余の無ければ、悪しと非りて寿からんとするものあるなり。
  27. 其十一3-11 令を発する日の之れば、士は、坐る者は涕いて襟を霑すなり、卧する者は涕いて頤に交わるなり。
  28. 其十一3-12 之を往く所無きに投らしむ者は、勇ましく諸なる歳を之いるなり。
  29. 其十一4-1 故に善くして軍を用いる者は、辟けしむ如くして衛ること然りとするなり。
  30. 其十一4-2 然えて衛る者は、山の蛇たれば恒たるなり。其の首を撃てば則ち尾は至りて、其の尾を撃てば首は至り、其の中の身を撃てば則ち首と尾は俱に至るなり。
  31. 其十一4-3 敢えて問う、賊も使う可きに然える衛りの若き虖。曰く、可きなり、越人と呉人は相い悪るなり、其の同じくすると当てれば周して済むなり、相い救うは左右の手の若し。
  32. 其十一4-4 故なす是あらば、馬して方ちて輪に埋めるも、恃むに足らざるなり。斉かつ勇を一つに若らしむに、正は道を之いるなり。柔らげるもの皆得て剛くするは、地に之くに理めればなり。
  33. 其十一4-5 故を善しみて軍を用いる者は、手を携えるも一りの人を使う若し、不いに已むを得るなり。
  34. 其十一4-6 之を軍する将の事は、以を幽して静めるなり、以を治めて正すなり。
  35. 其十一5-1 能は、士の耳と目を愚かとするなり、使を無するに之かしむなり。
  36. 其十一5-2 其の易わらしむ事なせば、其の謀を革めんとするも、民を使わす識は無きなり。
  37. 其十一5-3 易わる其の居くも、其の于く途に、民を使わして得ること不くして慮るなり。
  38. 其十一5-4 帥は之の与すること期するなり、如ち登せて高くして梯する其の去らしむなり。帥は之を与せしめて深くして、諸なる侯の地を入りて、其の発すること幾うなり。
  39. 其十一5-5 羊の群れは駆れば若うも、駆りて往かしめ、駆りて来たらしむなり、之る所を知る莫し。
  40. 其十一5-6 之に衆くする三軍を聚めて、之を険に投らしむなり。軍する将は、此く謂いて事に之くなり。
  41. 其十一5-7 之は変わらしめて地に九めるなり、之は利に信いの詘せしむなり、理は之に人を請うなり、不いに可たりて不いに察するなり。
  42. 其十一6-1 凡そ客は、深ければ則ち槫するなり、浅ければ則ち散ると為す。
  43. 其十一6-2 去る国を越えるに竟わりて師あれば、絶地にあるなり。
  44. 其十一6-3 四を徹せしむ者は、地に瞿るものあらしむなり。
  45. 其十一6-4 入れて深き者は、重地にあるなり。
  46. 其十一6-5 入りて浅ければ、軽地にあるなり。
  47. 其十一6-6 固きを倍して、前めるに隘てれば、囲地なり。
  48. 其十一6-7 固きを倍して、適に前者は、死地にあるなり。
  49. 其十一6-8 往く所の毋き者は、窮まる地たるなり。
  50. 其十一6-9 散地に是なりて故なすに、吾が将は、其の志を壱ならしむなり。
  51. 其十一6-10 軽き地に、吾が将は、僂を使いとして之かしむなり。
  52. 其十一6-11 地を争うに、吾が将は、使わして不いに留めるなり。
  53. 其十一6-12 地に交うなり、吾が将は、結びて其の固めるなり。
  54. 其十一6-13 地に瞿るなり、吾が将は、其の謹むこと恃むなり。
  55. 其十一6-14 地は重んずるなり、吾が将は、其の後ぎて趣らしむなり。
  56. 其十一6-15 地あれば泛すなり、吾が将は、其の途に進めしむなり。
  57. 其十一6-16 地に囲むなり、吾が将は、闕あらしめて其の塞がしむなり。
  58. 其十一6-17 地に死たるなり、吾が将は、之ありと示して、以て不いに活かすなり。
  59. 其十一7-1 諸の、侯に之いて故を請げて、遝ばしめば則ち禦ぐなり、已に不いに得れば則ち闘わすなり、過ぎれば則ち従うなり。
  60. 其十一7-2 諸の、侯に是なりて故を知らしめざるも之を謀れば、交予ること能わざるなり。
  61. 其十一7-3 山のごとくにして林たること知らしめざれば、険たること阻い、沢す刑を之いること沮る者は、軍を行うこと能くせざるなり。
  62. 其十一7-4 道を郷けて用いざる者は、利しき地を得ること能わざるなり。
  63. 其十一7-5 四と五は、一を智らざれば、覇たる王の兵に非ざるなり。
  64. 其十一7-6 覇たる王の兵を之いる彼は、大いなる国を伐てば、則ち其の衆を聚めること得せしめざるなり、適に威を加えれば、則ち其の交わりと合せしめて得せしめざるなり。
  65. 其十一7-7 故に是くに、天は交わりを不いに事とせしめて之を下らしむなり、天に下りて権する之に不いに養うなり、己の之を私すること信ぜしめて、威を加えれば適うを於す。
  66. 其十一7-8 故に其の国は抜く可き也、城は隋たる可きなり。
  67. 其十一8-1 法を之いて賞めること无く、正を無して令に之れば、三軍の衆は犯すなり、人の一を使うに若るなり。
  68. 其十一8-2 犯に之を以わしめて事とせしむに、言以に告げる勿かれ。
  69. 其十一8-3 之を犯すに以の害れるも、利なす以を告げる勿かれ。
  70. 其十一8-4 亡される地を芋に之いて、然して而と后は存つなり、之の陥るに地は死ぬも、然る后に生まれるなり。
  71. 其十一8-5 夫を衆くして陥れば害れる於あらしむなり、然る後に敗る為を能くするなり。
  72. 其十一9-1 兵を為して之に事とせしむに、適の意を詳らかにして、於の在を順するなり。
  73. 其十一9-2 幷びに敵は一に向けしめて、千里にして将より殺ぼすなり。此を胃すれば、事は巧たるなり。
  74. 其十一9-3 是なりて故なすに、正は日に与を之らしむなり、其の通ぜ使む毋かれ。
  75. 其十一9-4 郎を厲わしめて上めしむに、其の誅つは事と以うなり。
  76. 其十一9-5 適し、人の闠を開けば、必ず之を亟やかに入らしむ。
  77. 其十一9-6 其の所を先んずれば、愛しみて、微たりて与に之くこと期するなり。墨を践みて適わしめば随うなり、以て事の決まれば戦うなり。
  78. 其十一9-7 故に是く始めより、女と処る如くして人を適しましめて、戸を開けしむ後、兎の脱する如くして適えば、距むこと及がざるなり。

其十二 用閒篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・敵の実情を得る価値について
・君主、人民の考え方を正す方法
四通り・5種類ある間者の使い道について
四通り・間者を扱える将軍について
四通り・敵の実情を得る具体的な手順
・複数の間者が連携する実践的な方法
八通り・過去の戦争事例から学ぶ間者の使い道             
・間者の使い道と各戦略、戦術との関係
・戦争が終わる流れについて
  1. 其十二1-1 孫子曰く、凡そ、十万の師を興して、千里にして師を出だせば、生に之いる費は百たりて、家の公に之いる奉は、日に千金を費やすなり。
  2. 其十二1-2 内より騒して外に動かすに、得ざりて操すること事とする者は、七十万を家して、相い守らしむに数年あり、争うこと以めしめて一つにして、日に之を勝たらしむなり。
  3. 其十二1-3 而の爵に百金を禄すること愛しめば、之を適わしめて請うこと知らざる者なり。之は、至って仁不きなり。
  4. 其十二1-4 非なる民は将いて之かしむなり、也た非なる主は佐けて之らしむなり。之あれば、注ぎて非を勝つなり。
  5. 其十二1-5 故を明らかにして主を賢とする将は、所を以いて動かして人に勝つなり。衆に出だして功の成る者は、知ること先にするなり。
  6. 其十二1-6 先だつ知あれば、神なる鬼に不いに取る可くして、事を不いに象る可くして、度に不いに験す可くして、必して於を取るも人を知らしむ者たり。
  7. 其十二2-1 故に、間の用は五有り。
  8. 其十二2-2 郷と有とする間あり、内と有とする間あり、反くも有とする間あり、有ちて死す間あり、生きながら有つ間あり。
  9. 其十二2-3 五ある間を俱に起こして、其の道を知りて莫るなり。是を胃する神は紀するなり、人ある君は之を葆むなり。
  10. 其十二2-4 間いて生する者は、報げて反かしむ者なり。
  11. 其十二2-5 間いて死す者は、誑して於を事する為は外なり、吾は間をして之を知れ令むなり。而して、敵することを待つなり。
  12. 其十二2-6 間かに反す者は、敵に因りて、間えて用いる者なり。
  13. 其十二2-7 間く郷けしむ者は、其の因りて、人を郷けしめて用いらしむ者なり。
  14. 其十二2-8 内を間える者は、其の官の人に因りて用いらしむ者なり。
  15. 其十二3-1 故に、三軍の親しみの、間より親しむもの莫し、賞は間より厚くするもの莫し、事は間より密かなること莫し。
  16. 其十二3-2 聖に非ざれば間を用いること能わず、仁に非ざれば間れしめて使うこと能わず、微に妙なるに非ざれば間の葆を得ること能わざるなり。
  17. 其十二3-3 密に𢦏するなり、密なるものより𢦏せんとすること毋かれ。間を用いれば、不いに所あらしむなり。
  18. 其十二3-4 未だ発せざる間の事を聞きて、間からんとして与する所を告げる者あれば、皆死すなり。
  19. 其十二4-1 凡なるものは、城に之いて所あること欲して攻めるなり、人に之いて所あること欲して殺するなり。必ず、其の将ける守、右に左して謁う者、門る者、舍てらる人、之の姓と名を知ること先にするなり。吾は間に、必ず之を索めて知れと令するなり。
  20. 其十二4-2 人は之を間てて適わしむこと必ず索めるなり。間に我に来す者は、因りて利あらしめて之かしむなり、導けば而ち舍るに之るなり。
  21. 其十二4-3 反す間は、故に得て可ければ而ち用いるなり。因って、是して之を知るなり。
  22. 其十二4-4 郷けしむ間の故たれば、間に内を得て使う可きなり、是に因れば而く之を知るなり。
  23. 其十二4-5 死す間は、故より、誑す為を事とするなり、可を使いて敵ありと告げしむなり。是に因れば而ち之は知れるなり。
  24. 其十二4-6 故なすに、生する間は、期する如くして使う可きなり。
  25. 其十二4-7 五の間の事は、必ず之を知らしめて知に之らしむなり。在る於に必ず反かしめて間たらしむなり、反す間たれば故に厚くせざる可からざるなり。
  26. 其十二5-1 殷の興るに之くは、伊摯の夏を在ればなり。
  27. 其十二5-2 周は、殷に在る呂牙を之いて興きるなり。
  28. 其十二5-3 ◇之興也、𧗿師比在陘(解読不能)
  29. 其十二5-4 燕は、斉に在る蘇秦を之いて興きるなり。
  30. 其十二5-5 唯だ明るき主は将を賢とするのみ、能は上なる智を以いて間に為せしむ者にして、必して大なる功は成すなり。
  31. 其十二5-6 此く之は兵の要なり、三軍の之くに、所に恃みて動かしむなり。

其十三 火攻篇

段落句数解読文の数教えの概要
四通り・巧みに仕掛ける5種類の火災について
・巧みに仕掛ける火災に必要な準備
四通り・巧みに仕掛ける火災の実戦方法
四通り・巧みに仕掛ける火災を利用した奇正の戦術について
・水の流れるような勢いある突撃について
八通り・信念や理想のために命を捨てる兵士を作り出す方法       
・道理を悟った君主と善良な将軍の在り方について
  1. 其十三1-1 孫子曰く、凡そ攻みとする火は五有り。
  2. 其十三1-2 一に曰く人を火き、二に曰く漬を火き、三に曰く輜を火き、四に曰く庫を火き、五に曰く隊を火く。
  3. 其十三1-3 火を有らしむに行に因るなり。因て、素より具わりて必するなり。
  4. 其十三1-4 火を有らしむに時いて発するなり、火けること起こす日有るなり。
  5. 其十三1-5 時は、天の燥きなり。
  6. 其十三1-6 日なす者は、月なる箕、壁、翼、軫に在るなり。凡そ、此の四者は、風の起こる日に之るなり。
  7. 其十三2-1 則は、内に火を発こせしむに、応ちに軍は外より之るなり。
  8. 其十三2-2 火を発こせしむに、其の兵の静まれば而ち攻める勿かれ、極める其の火は央きるなり。従う而は之に可を従わしむなり、不いに従わしむ可ければ而ち之に止まらしむなり。
  9. 其十三2-3 火く可を外に発すれば、内に寺は毋からん。時いて以せば、之を発らしむなり。
  10. 其十三2-4 風の上がるに火を発するも、下る風たれば攻める勿かれ。
  11. 其十三2-5 昼の風は久しきなり、夜の風は止まらんなり。
  12. 其十三2-6 凡そ軍は、五ある火に、変に之らしむこと知れば必するなり、数を以えば、之を守るなり。
  13. 其十三3-1 故らしむに、火を以て攻みなりて佐ける者は明るきなり、水を以て攻めるを佐める者は強いるなり。
  14. 其十三3-2 水を以いる可は絶つことなり、火を以いれば可を奪うなり。
  15. 其十三3-3 夫れ、戦いて攻みなる勝ちを取る者は得るなり、不いに其の隋ちて功とする者は凶いするなり。之に命じれば、費なりて曰く留まる。
  16. 其十三4-1 故曰く、慮りて之いれば明るき主たり、随いて之いれば良き将たり。
  17. 其十三4-2 利きに非ざれば動かざるなり、得に非ざれば用いざるなり、危うきに非ざれば不いに戦うなり。
  18. 其十三4-3 主は怒りを以て軍を興す可からず、将は温を以て戦う可からず。
  19. 其十三4-4 合する乎、利あらしめば而ち用いるなり、不いに合わせれば而ち止まらん。
  20. 其十三4-5 怒るものは喜ぶこと復す可きなり、温たるに悦びて復する可きなり。
  21. 其十三4-6 亡びる国は復して存らしむ可からず、死ぬ者は復して生かしむ可からず。
  22. 其十三4-7 曰く、故を明らかにする主は之を慎むなり、良は敬みて之いて将ける。此は、安き国に之る道たるなり。
<備考>
当サイトの原文は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」に従うことを基本とし、適宜、孫子(講談社)、新訂孫子(岩波)、七書孫子を参考にしています。