其七3-2
不知山林、險阻、沮澤之刑者、不能行軍。
bù zhī shān lín、xiǎn zǔ、jù zé zhī xíng zhě、bù néng xíng jūn。
解読文
①高くそびえた山と樹木が群がる林にある川等が危険で交通困難な険しい場所や、行く手を阻む水の溜まった窪地に赴く隊列の型を理解していない将軍は、軍隊を統率して行軍させることができない。 ②軍隊を統率して行軍させることができない将軍は、高くそびえた山と樹木が群がる林にある川等が危険で交通困難な険しい場所や、行く手を阻む水の溜まった窪地に直面した時は、隊列の型が変わることを理解していないのである。 ③大いに隊列の型が変わる将軍は、高くそびえた山と樹木が群がる林において、川等が危険で交通困難な険しい場所や、行く手を阻む水の溜まった窪地があると識別すれば、大いに有能な兵士を使って見回らせるのである。 ④大いに有能な兵士を使って見回らせて、高くそびえた山と樹木が群がる林において、川等が危険で交通困難な険しい場所や、行く手を阻む水の溜まった窪地が無いと識別した進路があれば、隊列の型を整えて進軍するのである。 |
書き下し文
①山と林にある、険(けん)なる阻(そ)、沮(はば)む沢(たく)を之(ゆ)く刑を知らざる者は、軍して行(や)ること能わず。 ②軍して行(や)ること能わざる者は、山と林にある険(けん)なる阻(そ)と沮(はば)む沢(たく)あるに、刑の之(ゆ)くこと知らざるなり。 ③不(おお)いに刑の之(ゆ)く者は、山と林に険(けん)なる阻(そ)と沮(はば)む沢(たく)ありと知れば、不(おお)いに能なる軍をして行(めぐ)らしむなり。 ④不(おお)いに能なる軍をして行(めぐ)らしめて、山と林に、険(けん)なる阻(そ)と沮(はば)む沢(たく)不(な)しと知ることあれば、刑(おさ)めて之(ゆ)くなり。 |
<語句の注>
・1つ目の「不」は①②~しない、③大いに、④無い、の意味。 ・「知」は①②理解する、③④識別する、の意味。 ・「山」は①②③④陸地の隆起し高くそびえたった所、の意味。 ・「林」は①②③④群がってはえている樹木、の意味。 ・「険」は①②③④山川が危険で交通困難な難所、の意味。 ・「阻」は①②③④険しい場所、の意味。 ・「沮」は①②③④阻む、の意味。 ・「沢」は①②③④水の溜まった窪地、の意味。 ・「之」は①赴く、②③変わる、④赴く、の意味。 ・「刑」は①②③鋳型、④整え治める、の意味。 ・「者」は①②③助詞「もの」、④助詞「こと」、の意味。 ・2つ目の「不」は①②~しない、③④大いに、の意味。 ・「能」は①②~することができる、③④有能な、の意味。 ・「行」は①②行かせる、③見回る、④道路、の意味。 ・「軍」は①②軍を統率する、③④兵士、の意味。 |
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「不知山林、險阻、沮澤之形者、不能行軍。」と「形」を「刑」とするが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。 ・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。 <①について> ・「刑」の“鋳型”は、鋳物を鋳造するための型であり、これは全く同じ鋳物を生産できる物である。また、其四4-5⑧「解読の注」で“鋳型”は過去の戦争事例を統計した“成否の類型(パターン)”だと考察している。 また、他句では「陣形の型」等と解読することとの整合を考慮すれば、「隊列の型」と指すと考察できる。結果、「隊列の型」と解読。②③も同様に解読。 ・「行」の“行かせる”は、軍隊を前進させること解釈できるため「行軍させる」と言い換えた。②も同様に解読。 <②について> ・特に無し。 <③について> ・特に無し。 <④について> ・「刑」の“整え治める”は、「隊列の型」を整えることと考察。結果、「隊列の型を整える」と解読。 |