是せしむ故は、昼の戦いは旌旗を多とし、夜の戦いは鼓金を多とすればなり。

其七5-2

是故、晝戰多旌旗、夜戰多鼓金。

shì gù、zhòu zhàn duō jīngqí、yèzhàn duō gǔ jīn。

解読文

①兵士達に正確な判断させる要因は、昼間の戦闘は旗印を重視し、暮れ時の戦闘は太鼓の音を重視するからである。

②戦闘に至れば、昼間の戦闘では旗印を重視して敵兵達を恐れ震えさせるのであり、暮れ時の戦闘では太鼓の音を重視して敵兵達を恐れ震えさせるのである。

③敵軍を衰えた状態に追い込む時は、昼間の戦闘は褒美の品を示した上で旗を使って羊の集まりを導くように軍隊を動かすのであり、深夜には進攻の合図である太鼓を打ってその音をおびただしくすれば敵兵達を恐れ震えさせるのである。

④兵士達を力づける道理を正しいと認めて兵士達に褒美の品を示せば、旗を揺れ動かす昼間の戦闘は敵軍より優勢になるのであり、深夜に進攻の合図である太鼓を打ってその音を鳴らせば恐れ震える敵兵を余計に多くするのである。
書き下し文
①是(ぜ)せしむ故(ゆえ)は、昼の戦いは旌旗(せいき)を多とし、夜の戦いは鼓金(こきん)を多とすればなり。

②故に是(ゆ)けば、昼に旌旗(せいき)を多として戦(おのの)かしむなり、夜に鼓金(こきん)を多として戦(おのの)かしむなり。

③故(ふ)るに是(ゆ)かしむに、昼は多(いさお)を旌(あらわ)して旗(き)に戦(そよ)げしむなり、夜に鼓(う)ちて金(きん)多(おお)くすれば戦(おのの)かしむなり。

④故を是(ぜ)として旌(あらわ)せば、旗(き)を戦(そよ)げしむ昼は多(まさ)るなり、夜に鼓(う)ちて金(きん)あらしめば戦(おのの)くもの多(ま)すなり。
<語句の注>
・「是」は①正確な判断、②③至る、④正しいと認める、の意味。
・「故」は①原因、②事変、③衰える、④道理、の意味。
・「昼」は①②③④日の出から日没までの時間、の意味。
・1つ目の「戦」は①争い、②(恐れや寒さのために)震える、③④揺れ動く、の意味。
・1つ目の「多」は①②重視する、③戦争での手柄、④越える、の意味。
・「旌」は①②旗の通称、③④表示する、の意味。
・「旗」は①②印、③④各種の旗の総称、の意味。
・「夜」は①②暮れ時、③④深夜、の意味。
・2つ目の「戦」は①争い、②③④(恐れや寒さのために)震える、の意味。
・2つ目の「多」は①②重視する、③数量がおびただしい、④余計に多くする、の意味。
・「鼓」は①②太鼓、③④進攻の合図に太鼓を打つ、の意味。
・「金」は①②③④鐘やどらの音、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「是」の“正確な判断”は、其七5-1②「故」で記述された「軍隊を統率する時は、兵士達に正確な判断をさせた上できちんと整える」の意味を積み上げていると考察。結果、「是せしむ」で「兵士達に正確な判断させる」と解読。

<②について>
・「昼」の“日の出から日没までの時間”は、①「昼」の「昼間の戦闘」の意味を積み上げていると考察。結果、「昼間の戦闘」と解読。③④も同様に解読。

・「夜」の“暮れ時”は、①「夜」の「暮れ時の戦闘」の意味を積み上げていると考察。結果、「暮れ時の戦闘」と解読。

<③について>
・「多」の“戦争での手柄”は、其十一5-5⑥「兵士達を力づける道理を理解した将軍は、駆り立てれば慰労するのであり、強要すれば褒美の品を贈呈する」に基づけば、褒美の品と解釈できる。結果、「褒美の品」と解読。

・「戦」の直訳は“揺れ動く”は、其十一5-5⑥「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」を指すと考察。結果、使役形で「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」と解読。

<④について>
・「故」の“道理”は、③「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」に基づけば、其十一5-5⑤「兵士達を力づける道理」を指すと考察できる。結果、「兵士達を力づける道理」と補って解読。

・「旌」の“表示する”は、③「旌」の「褒美の品を示す」の意味を積み上げていると考察。結果、「褒美の品を示す」と解読。

・1つ目の「多」の“越える”は、自軍が敵軍よりも優勢になった状態を指すと考察し、「敵軍より優勢になる」と解読。

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