去る国を越えるに竟わりて師あれば、絶地にあるなり。

其十一6-2

去國越竟而師者、絕地也。

qù guó yuè jìng ér shī zhě、jué dì yĕ。

解読文

①自国領地と奪い取った陣地を隔てている他国を通過する時、尽き果てた大軍十万が存在すれば、領地からかけ離れた「絶地」にいるのである。

②領地からかけ離れた「絶地」にいる兵士達は、領地の境界を踏み越えて自国を離れた時、将軍を模範とするである。

③将軍を模範とする兵士達が、あろうことか敵国の町、村、里、集落で略奪して敵人民を殺害すれば、その町、村、里、集落から絶交されるのである。

④自国と絶交した敵国の町、村、里、集落の敵人民は、猛獣の獅子のように荒々しい態度を取るのであり、「尽き果てた自軍が出現して自分達の里等を損なった」と伝え広めるのである。

⑤敵国の町、村、里、集落を損なったと伝え広めれば、最後には自国を尊び従う陣地にした元敵里等も絶交するのである。

⑥陣地にした元敵里等が自国と絶交すれば、自軍の兵士達は猛獣の獅子のように荒々しい態度になって、とうとう敵国の町、村、里、集落を損なうのである。

⑦敵国の町、村、里、集落を略奪して損なえば、尽き果てた自国の大軍十万はひたすら枯渇するのである。

⑧ひたすら枯渇する兵士達を問い詰めれば、将軍を真似したのである。その将軍は、地位を剥奪することで国内に封じて軍隊から取り払うのである。
書き下し文
①去る国を越えるに竟(お)わりて師あれば、絶地にあるなり。

②絶地にある者は、竟(けい)を越えて国を去るに、而(なんじ)に師(なら)うなり。

③而(なんじ)に師(なら)う者、竟(つい)に国に越(えつ)して去れば、地に絶たれるなり。

④絶つ地の者は師(し)たるなり、竟(お)わる而(なんじ)ありて国を去ると越(つた)えるなり。

⑤国を去ると越(つた)えれば、竟(つい)に而(なんじ)に師(したが)う地も絶つなり。

⑥地の絶てば、而(なんじ)は師(し)たりて、竟(つい)に国を越(えつ)して去るなり。

⑦国を越(えつ)して去れば、竟(お)わる而(なんじ)の師(し)は、地(た)だ絶えるなり。

⑧地(た)だ絶える者は竟(きわ)めれば、而(なんじ)に師(なら)うなり。越(えつ)して国して去るなり。
<語句の注>
・「去」は①隔てる、②離れる、③殺す、④⑤⑥⑦損なう、⑧取り払う、の意味。
・「国」は①②独立した国家、③④⑤⑥⑦地区、⑧国に封じる、の意味。
・「越」は①通過する、②踏み越える、③略奪する、④⑤伝え広める、⑥⑦略奪する、⑧強奪する、の意味。
・「竟」は①尽きる、②境界、③あろうことか、④尽きる、⑤最後には、⑥とうとう、⑦尽きる、⑧問い詰める、の意味。
・「而」は①順接の関係を表す接続詞、②③④⑤⑥⑦⑧あなた、の意味。
・「師」は①其二1-2①「師」、②③模範とする、④猛獣のシシ、⑤尊び従う、⑥猛獣のシシ、⑦其二1-2①「師」、⑧まねる、の意味。
・「者」は①仮定表現の助詞、②③④助詞「もの」、⑤⑥⑦仮定表現の助詞、⑧助詞「もの」、の意味。
・「絶」は①②其八1-1①「絶」、③④⑤⑥絶交する、⑦⑧枯渇する、の意味。
・「地」は①②其一2-5①「地」、③④⑤⑥其一2-5④「地」、⑦⑧ひたすら、の意味。
・「也」は①②③④⑤⑥⑦⑧断定の語気、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は「◇國越竟而師者、絕地也。」と一文字目が欠落しているため、孫子(講談社)及び新訂孫子(岩波)の原文を採用した。また、孫子(講談社)は「竟」を「境」とするが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文を採用した。
・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「去る国」の直訳は“隔てる独立した国家”となる。これは侵略戦争を仕掛けて敵里等を陣地にしていく時、その陣地が自国領地に隣接した状態で増えていくことが其七4-3①「開拓した陣地を繋ぎ止めて全軍の権勢が生じる」で説く基本と思われる。この基本に反して、自国領地に隣接せず、奪い取った陣地が飛地になった状態は、自国領地と陣地の間を敵国(他国)で隔てており、常に背後に憂いを残した状況と言える。結果、「自国領地と奪い取った陣地を隔てている他国」と解読。

・「師」は、其二1-2①「師」の「大軍十万」の意味を積み上げていると考察。結果、「大軍十万」と解読。⑦も同様に解読。

・「絶地」は、其八1-1①「領地からかけ離れた「絶地」」を指すと考察。結果、「領地からかけ離れた「絶地」」と解読。②も同様に解読。なお、其八1-1だけでは「絶地」の意味は一意に決まらないが、この其十一6-2で明らかになる。

<②について>
・「竟」の“境界”は、①「自国領地と奪い取った陣地を隔てている他国を通過する時」に基づけば、自国領地及び陣地の境界を指すと考察できる。結果、「領地の境界」と補って解読。

<③について>
・「国」の“地区”は、其一2-5④「地」の「敵国の町、村、里、集落」を指すと同意と考察。結果、「敵国の町、村、里、集落」と解読。⑤⑥⑦も同様に解読。

・「去」の“殺す”は、「敵国の町、村、里、集落」を奪い取る時、その人民を殺害することと考察。結果、「敵人民を殺害する」と補って解読。

・「地」は、其一2-5④「地」の「敵国の町、村、里、集落」と考察。結果、話の流れに合わせて「その町、村、里、集落」と解読。④⑤も同様に解読。

<④について>
・「地」は、其一2-5④「地」の「敵国の町、村、里、集落」と解読。⑤も同様に解読。

・「絶つ地の者」は、「地」を「敵国の町、村、里、集落」と解釈すれば“絶交された敵国の町、村、里、集落の者”となる。これは自国と絶交した敵里等の人民を指すと考察。結果、「自国と絶交した敵国の町、村、里、集落の敵人民」と補って解読。

・「師」の“猛獣のシシ”は、猛獣のシシのように荒々しい態度を取る「自国と絶交した敵国の町、村、里、集落の敵人民」の喩えと考察。結果、「師たり」で「猛獣の獅子のように荒々しい態度を取る」と解読。

・「国」の“地区”は、③同様に「敵国の町、村、里、集落」と解釈。但し、話の流れに合わせて、ここでは「自分達の里等」と解読。

<⑤について>
・「而に師う地」は、「地」を「敵国の町、村、里、集落」と解釈すれば“あなたを尊び従う敵国の町、村、里、集落”となる。これは其十一5-6②「聚」の「陣地にした敵里等」を指すと考察。結果、「自国を尊び従う陣地にした元敵里等」と解読。

<⑥について>
・「地」は、其一2-5④「地」であり、⑤「地」の「陣地にした敵里等」を指すと考察。結果、「陣地にした元敵里等」と解読。

・「師」の“猛獣のシシ”は、猛獣のシシのように荒々しい態度を取る「自軍の兵士達」の喩えと考察。結果、「師たり」で「猛獣の獅子のように荒々しい態度になる」と解読。

<⑦について>
・特に無し。

<⑧について>
・「越して国して去る」の直訳は“強奪することで国に封じて取り払う”となる。これは文意より将軍の地位を剥奪して国に封じて軍隊を任せないことと考察。結果、「その将軍は、地位を剥奪することで国内に封じて軍隊から取り払う」と補って解読。

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