冬ありて復た始まるは、日と月の是なればなり。

其五2-3

冬而復始、日月是。

dōng ér fù shǐ、rì yuè shì。

解読文

①冬が訪れて、さらに春が訪れる要因は、太陽と月が規則正しく動くからである。

②太陽と月が規則正しく動けば、冬は植物を枯らすけれども植物が芽生える準備をする。

③月を出現させるに至る太陽は、植物が芽生える準備ができたことを告げる冬のように、隠れている奇策部隊が出撃する準備を整える正攻法部隊である。

④昼間にも規則正しく動いている月は、植物が芽生える準備を意識させない冬のように、出撃する準備を整えて敵に無視させる奇策部隊である。
書き下し文
①冬ありて復(ま)た始まるは、日と月の是(ぜ)なればなり。

②日と月の是(ぜ)なれば、冬は復(くつがえ)すも而(しかる)に始めあり。

③月あらしむに是(ゆ)く日は、始めを復(もう)す冬の而(ごと)きなり。

④日の是(ぜ)なる月は、始めを復(ふく)す冬の而(ごと)きなり。
<語句の注>
・「冬」は①②③④四季の一つ、の意味。
・「而」は①順接の関係を表す接続詞、②逆接の関係を表す接続詞、③④~のように、の意味。
・「復」は①さらに、②滅ぼす、③告げる、④覆う、の意味。
・「始」は①新たに行う、②③④はじまり、の意味。
・「日」は①②③太陽、④昼間、の意味。
・「月」は②②③④月球、の意味。
・「是」は①②正しい、③至る、④正しい、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「終而復始、日月是也。」と「冬」を「終」とし、「也」が入るが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「始」の“新たに行う”は、冬が訪れた後に行われる事柄であるため四季の流れを指すと考察し、「春が訪れる」と解読。

・「日と月の是なればなり」の直訳は“太陽と月が正しいからである”となる。この“正しさ”は、四季の流れを生む要因と考察できるため「太陽と月が規則正しく動くからである」と補って解読。②も同様に解釈。

<②について>
・「冬は復すも而に始めあり」の直訳は“冬は滅ぼすけれども、はじまりをつくる”となる。これは、冬は植物を枯らすが春に植物が芽生える準備をすること描写していると考察。結果、「冬は植物を枯らすけれども植物が芽生える準備をする」と解読。

<③について>
・「始めを復す冬の而き」の直訳は“はじまりを告げる冬のように”となる。この“はじまり”は、②「植物が芽生える準備」を指すと考察できるため、“植物が芽生える準備ができたことを告げる冬のように”と言い換えることができる。この描写を軍隊に置き換えると、土の中で隠れていた“植物”が芽生えることは、“隠れていた奇策部隊が出撃すること”と解釈できる。その解釈に基づけば、準備ができたことを告げる“冬”は、敵部隊を奇策部隊が隠れている場所まで誘導していく“正攻法部隊”と解釈できる。結果、「植物が芽生える準備ができたことを告げる冬のように隠れている奇策部隊が出撃する準備を整える正攻法部隊」と解読できる。この解読文より、「日」の“太陽”は「正攻法部隊」の喩えであることが明示される。

蛇足だが、其五2-4で“春・夏・秋・冬”は、それぞれ正攻法部隊を構成する一部隊の喩えだと確定するため、其五4-5①「敵を動かすことに熟練した将軍は、お手本を使って意図的に勢いを削いだおとり部隊に心を向かわせて追わせることを必ず実行するのであり、おとり部隊は予め準備するのであり、敵軍から獲物となる敵部隊を引き出すことを必ず実行するのである」より、植物が枯れている冬は勢力を意図的に削いだ「おとり部隊」を表現していることがわかる。さらに、正攻法部隊としての“春”は、奇策部隊が攻め取った敵兵を編制すること勢力を強めた(回復した)部隊を指すと解釈できる。

<④について>
・「日の是なる月」の直訳は“昼間の正しい月”となる。「是」の“正しい”を①②「是」の「規則正しく動く」と同意と考察すれば、「昼間にも規則正しく動いている月」と解読できる。

・「始めを復す冬の而き」の直訳は“はじまりを覆う冬のように”となる。この“はじまり”は、②③「植物が芽生える準備」を指すと考察、また、“覆う”は「植物が芽生える準備」は土の中で行われているため、その準備を多くの人は意識しないと説いたと考察すれば、“植物が芽生える準備を意識させない冬のように”と言い換えることができる。
この描写を軍隊に置き換えると、“植物が芽生える準備”は“(隠れている)奇策部隊が出撃する準備”であり、“意識させない”は其五2-2①「銀河のまとまりに等しく存在を意識されないようにして敵軍に無視されることを奇策部隊に求める」に基づき、“無視させる”と解読。結果、「植物が芽生える準備を意識させない冬のように出撃する準備を整えて敵に無視させる奇策部隊」と解読できる。この解読文より、「月」の“月球”は「奇策部隊」の喩えであることが明示される。

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