其十一3-9
吾士無餘財、非惡貨也。
wú shì wú yú caí、feī è huò yĕ。
解読文
①自軍の兵士達に残った金銭が無ければ、誤りと思っても価値ある物品で悪事を行うのである。 ②誤りと思っても悪事を行う兵士達は、自軍のあり余る価値ある物品を売り出して無くすのである。 ③悪事を行う兵士達が自軍の価値ある物品を売り出して無くせば、他の兵士達は、非難するが価値ある物品をうらめしく思うのである。 ④価値ある物品をうらめしく思う他の兵士達は、誤りと思っても自軍の残った価値ある物品を売り出して無くすのである。 ⑤残存する価値ある物品が自軍に無ければ、役人が、価値ある物品を売り出した悪人を非難するのである。 ⑥価値ある物品を売り出した悪人を非難する役人は、売り出す隙を無くす処置をして悪事を防ぐのである。 ⑦兵士達の悪事を防ぐことを蔑ろにしてあり余る価値ある物品を買い入れる役人が存在すれば、「過ちである」と中傷するのである。 ⑧敵国に過ちを中傷された役人が存在して、あり余る金銭が無ければ、将軍は金品で買収するのである。 |
書き下し文
①吾が士に余る財無ければ、非とするも貨(たから)に悪なすなり。 ②非とするも悪なす士は、吾が余る財を貨(う)りて無くすなり。 ③吾が財を無くせば、余(よ)なる士は、非(そし)るも貨(たから)を悪(にく)むなり。 ④貨(たから)を悪(にく)む士は、非とするも吾が余る財を無くすなり。 ⑤余る財の吾に無ければ、士は、貨(う)る悪を非(そし)るなり。 ⑥悪を非(そし)る士は、貨(う)る余(よ)無くすこと財(さば)きて吾(ふせ)ぐなり。 ⑦吾(ふせ)ぐこと無(なみ)して余る財を貨(か)う士あれば、非なりと悪(そし)るなり。 ⑧非を悪(そし)られる士ありて、余る財無ければ、吾は貨(まいな)うなり。 |

<語句の注>
・「吾」は①②③④我々の、⑤我々、⑥⑦防御する、⑧私、の意味。 ・「士」は①②③④軍人、⑤⑥⑦⑧役人、の意味。 ・「無」は①②③④⑤⑥無い、⑦蔑ろにする、⑧無い、の意味。 ・「余」は①残る、②有り余るさま、③他の、④残る、⑤残存する、⑥暇、⑦⑧有り余るさま、の意味。 ・「財」は①金銭、②③④⑤金銭と財産として価値ある物品、⑥処置する、⑦金銭と財産として価値ある物品、⑧金銭、の意味。 ・「非」は①②誤りと思う、③非難する、④誤りと思う、⑤⑥非難する、⑦⑧過ち、の意味。 ・「悪」は①②悪事、③④うらめしく思う、⑤⑥悪人、⑦⑧中傷する、の意味。 ・「貨」は①価値ある物品、②売り出す、③④価値ある物品、⑤⑥売り出す、⑦買い入れる、⑧金品で買収する、の意味。 ・「也」は①②③④⑤⑥⑦⑧断定の語気、の意味。 |
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する ・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。 <①について> ・特に無し。 <②について> ・「財」の“金銭と財産として価値ある物品”は、悪事を働く兵士達が売り出す物であるため「価値ある物品」と解読。③④⑤⑦も同様に解読。 <③について> ・「吾が財を無くす」は、「財」を「価値ある物品」と解釈すれば“我々の価値ある物品を無くす”となる。これは②「誤りと思っても悪事を行う兵士達は、自軍のあり余る価値ある物品を売り出して無くすのである」の意味を積み上げていると考察。結果、「悪事を行う兵士達が自軍の価値ある物品を売り出して無くす」と補って解読。 <④について> ・「士」の“軍人”は、②「他の兵士達」を指すと考察。結果、「他の兵士達」と解読。 ・「無」の“無い”は、③同様に「売り出して無くす」と補って解読。 <⑤について> ・「貨」の“売り出す”は、話の流れを踏まえて「価値ある物品を売り出す」と補って解読。 <⑥について> ・「悪」の“悪人”は、⑤「悪」の「価値ある物品を売り出した悪人」の意味を積み上げていると考察。結果、「価値ある物品を売り出した悪人」と補って解読。 ・「吾」の“防御する”は、価値ある物品を売り出す兵士達の悪事を防ぐことと考察。結果、「悪事を防ぐ」と補って解読。 <⑦について> ・「吾」の“防御する”は、⑥「吾」で記述された「売り出す隙を無くす処置をして悪事を防ぐ」の意味を積み上げていると考察。結果、「兵士達の悪事を防ぐ」と補って解読。 <⑧について> ・「非を悪られる士あり」の直訳は“過ちを中傷された役人が存在する”となる。これは、過ちを中傷された敵国の役人を指すと考察。結果、「敵国に過ちを中傷された役人が存在する」と補って解読。 |
