時は、天の燥きなり。

其十三1-5

時者、天之燥也。

shí zhě、tiān zhī zào yĕ。

解読文

①火が上がって燃えることを援助する好機とは、天気の乾燥した状態である。

②火が上がって燃えることを援助する好機を狙う将軍は、自然にある植物を乾燥させて、火災を仕掛ける道具として使わせるのである。

③自然にある植物は、昼間に並べておけば乾燥させるのである。

④不自然な植物伐採や人為的な火事によって、敵人民に自然の摂理による災いを心配させたならば、新たに植物を栽培するのである。
書き下し文
①時は、天の燥(かわ)きなり。

②時(うかが)う者は、天なるものを燥(かわ)かして之(もち)いるなり。

③之は、天に時(お)らしめば燥(かわ)かすなり。

④之に天を燥すれば、時(じ)するなり。
<語句の注>
・「時」は①好機、②機会を狙う、③(ある状況に)おく、④栽培する、の意味。
・「者」は①~とは、②助詞「もの」、③④仮定表現の助詞、の意味。
・「天」は①天気、②人為が加わらずに自然のままにあるさま、③昼間、④人の意思を反映し得ない自然の摂理、の意味。
・「之」は①助詞「の」、②使う、③代名詞、④彼ら、の意味。
・「燥」は①空気などが乾燥した状態、②③乾燥させる、④心配させる、の意味。
・「也」は①②③④断定の語気、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「時」の“好機”は、其十三1-4②「火が上がって燃えることを援助する好機」を指すと考察。結果、「火が上がって燃えることを援助する好機」と補って解読。

<②について>
・「時」の“機会を狙う”の“機会”は、①「時」の「火が上がって燃えることを援助する好機」を指すと考察。結果、「火が上がって燃えることを援助する好機を狙う」と補って解読。

・「者」の“助詞「もの」”は、好機を狙う将軍と考察。結果、「将軍」と簡潔に解読。

・「天」の“人為が加わらずに自然のままにあるさま”は、自然にある植物を指すと考察。結果、「天なるもの」で「自然にある植物」と解読。

・「之」の“使う”は、「自然にある植物」を其十三1-3②「火災に利用する道具」として使うことと考察。結果、使役形で「火災を仕掛ける道具として使わせる」と補って解読。

<③について>
・「之」は、②「天」の「自然にある植物」を指示する代名詞と解読。

・「時」の“(ある状況に)おく”は、「自然にある植物」を乾燥させる行いであるため、並べておくことと考察できる。結果、「並べておく」と言い換えた。

<④について>
・「之」の“彼ら”は、其十三1-3①「俗世間に火事を起こす時は、敵から寝返らせても敵と親しく交流する間者を頼みとする」から続く話の流れを踏まえると、俗世間の人民(敵里等の人民)を指すと考察できる。結果、「敵人民」と解読。

・「之に天を燥する」は、「之」を「敵人民」と解釈すれば“敵人民に自然の摂理を心配させる”となる。これは「火災を仕掛ける道具」として「自然にある植物」を伐採すること、人為的に火事を起こすことが自然の摂理に反すると考えて、災いに至ることを敵人民が心配することと解釈できる。結果、わかりやすく「不自然な植物伐採や人為的な火事によって、敵人民に自然の摂理による災いを心配させる」と補って解読。なお、解読文で「心配させた」と過去形になっている理由は、敵人民は事前に「俗世間に火事を起こす」戦術が行われることを知らず、実行後の話と解釈できるためである。

・「時」の“栽培する”は、不自然な植物伐採や人為的な火事によって消えてしまった植物を補うために、新たに植物を栽培することと考察。結果、「新たに植物を栽培する」と補って解読。

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