君の所に之くこと以うに、軍を患わす故は三者あり。

其三4-2

故君之所以患軍者三。

gù jūn zhī suǒ yǐ huàn jūn zhě sān。

解読文

①君主が軍事機関に赴くことを認めた時、軍事の災いとなる理由には三種類ある。

②特に、何度も軍事機関に赴く君主は、軍隊を統率する将軍を心配していると見なす。

③何度も軍隊を統率する将軍を心配する君主は、自軍が衰えた時は、諸侯にとって望ましい状態に変わると考えているのである。

④君主が軍隊を統率する将軍を何度も心配する理由は、自軍が衰えた時は自国に虚が生じて諸侯が自国に来襲することにあるのである。
書き下し文
①君の所に之(ゆ)くこと以(おも)うに、軍を患(わずら)わす故は三者あり。

②故(ことさら)に、三たび所に之(ゆ)く君は、軍する者を患(うれ)えると以(おも)う。

③三たび軍するものを患(うれ)える者は、故(ふ)るに、君の所に之(ゆ)くと以(おも)うなり。

④軍する者を三たび患(うれ)える以(ゆえ)は、故(ふ)るに所ありて君は之(いた)ればなり。
<語句の注>
・「故」は①理由、②特に、③④衰える、の意味。
・「君」は①②統治者の通称、③④諸侯、の意味。
・「之」は①②赴く、③変わる、④ある地点や事情に達する、の意味。
・「所」は①②官署や公的機関の事務を取り扱う所、③よろしき状態、④道理、の意味。
・「以」は①認める、②見なす、③考える、④理由、の意味。
・「患」は①害を与える、②③④心配する、の意味。
・「軍」は①軍事、②③④軍隊を統率する、の意味。
・「者」は①~種、②③④助詞「もの」、の意味。
・「三」は①数の名、②③④何度も、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文は「…所以患軍…」。欠落している前後は、孫子(講談社)の原文を採用して補った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「所」の“官署や公的機関の事務を取り扱う所”は、具体的な内容が定かではないが、記述内容を踏まえて暫定的に「軍事機関」と解読する。

<②について>
・特に無し。

<③について>
・「諸侯にとって望ましい状態に変わる」は、其二2-2①「軍隊が疲弊して勇猛果敢な気勢が打ち砕かれ、軍隊の勢いが尽き果てて財貨をことごとく出し尽くせば、すぐに多くの諸侯がこの機会を利用するのであり、敵となった諸侯は疲れ苦しむ自国に向けて軍隊を動員するだろう」と同意と考察。

<④について>
・「所」は“道理”の意味を採用しているが、虚実の「虚」又は「実」の代名詞として解釈している。一般化して考えると、虚実の代名詞は場合の数が四通りあるため、虚実の代名詞「所」は「自国の実、自国の虚、敵国の実、敵国の虚」のいずれかに該当すると考察できる。
この解読文④で簡単に説明すると、“諸侯が自国に来襲する道理”は、言い換えれば、「自国の虚(=道理)」があることで諸侯が来襲するとなる。結果、「所」は「自国の虚」と解読する。

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