吾は此を以て勝ちと負けを知るなり。

其一3-3

吾以此知勝負矣。

wú yǐ cǐ zhī shèng fù yǐ。

解読文

①私は、これら七項目の比較によって勝利と敗北を識別するのである。

②私は、これら七項目の比較を実践できる知恵によって、敵よりも優勢になることを頼りにするのである。

③これら七項目の比較に関する知識を得て考えることを嫌がれば、戦う前から敗北した状態であり、戦争では劣勢になるだろう。

④私は、これら七項目の比較を実践できる知恵の真価を認めて、不注意による誤りが生じることを抑制するのである。
書き下し文
①吾は此を以て勝ちと負けを知るなり。

②吾は此の知を以て勝(まさ)ること負(たの)むなり。

③此を知りて以(おも)うこと吾(ふせ)げば、勝(しょう)たりて負けんとす。

④吾は此の知を以(おも)いて負あるに勝つなり。
<語句の注>
・「吾」は①②私、③防御する、④私、の意味。
・「以」は①②~によって、③④認める、の意味。
・「此」は①②③④代名詞、の意味。
・「知」は①識別する、②其一2-6①「知」、③知識を得る、④其一2-6①「知」、の意味。
・「勝」は①勝利、②越える、③既に滅ぼされたさま、④抑制する、の意味。
・「負」は①敗北、②頼る、③争いなどで劣勢となる、④過失、の意味。
・「矣」は①②肯定の語気、③将来の語気、④肯定の語気、の意味。
<解読の注>
・この句は中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従うが、孫子(講談社)の原文とも一致する
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「吾」の“私”は、孫子兵法の前半では孫武が自分自身を指す場合に多用する代名詞である。但し、後半では「将軍」を指す場合もあるため、都度注釈を入れてある。

・「此」は勝敗の行方を理解するためのものであるため、其一3-2①「主孰賢、將孰能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明」の代名詞と解釈。そのまま解読文に入れると冗長なため、「これら七項目の比較」と簡潔にする。

<②について>
・「此」は勝敗の行方を理解するためのものであるため、其一3-2①「主孰賢、將孰能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明」の代名詞と解釈。そのまま解読文に入れると冗長なため、「これら七項目の比較」と簡潔にする。

・「知」は、其一2-6①「知」同様に「実践できる知恵」と解読。④も同様に解読。

・「勝」の“越える”は、自軍と敵軍の優劣を比較して、自軍が優勢になることと解釈し、「敵よりも優勢になる」と解読。

<③について>
・「此」は勝敗の行方を理解するためのものであるため、其一3-2①「主孰賢、將孰能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明」の代名詞と解釈。そのまま解読文に入れると冗長なため、「これら七項目の比較」と簡潔にする。

・「吾」の“防御する”は、知識を得て考えることを“防御する”ことから「嫌がる」と解読した。

・「勝」の“既に滅ぼされたさま”は、戦いが始まっていなくても、既に敵に滅ぼされた状態に等しいことと解釈できる。結果、「戦う前から敗北した状態」と解読。

<④について>
・「此」は勝敗の行方を理解するためのものであるため、其一3-2①「主孰賢、將孰能、天地孰得、法令孰行、兵衆孰強、士卒孰練、賞罰孰明」の代名詞と解釈。そのまま解読文に入れると冗長なため、「これら七項目の比較」と簡潔にする。

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