諸の侯に其の戦げしむ地は、散と為す。

其十一1-2

諸侯戰其地、為散。

zhū hoú zhàn qí dì、wéi sǎn。

解読文

①将軍が、諸侯によって敵軍を揺れ動かす状態は、敵軍を散らして戦闘に至ることがない戦地「散地」と言える。

②多くの諸侯が出現して戦争を仕掛けるように装えば、ひたすら敵軍を分断させるのである。

③分断された敵軍は出現した多くの諸侯を敵と見なすが、兵士数を比較させれば、その敵軍を散らし消すのである。

④出現した多くの諸侯が、ひたすら分断された敵軍を恐れ震えさせれば、自軍の兵士達には実際の職務が無い状態と言えるのである。
書き下し文
①諸の侯に其の戦(そよ)げしむ地は、散と為す。

②諸なる侯ありて戦わんと為せば、地(た)だ其の散らしむなり。

③諸は侯を其の為すも、地を戦わしめば、散(さん)するなり。

④侯の地(た)だ其の戦(おのの)かしめば、諸は散たりを為(な)すなり。
<語句の注>
・「諸」は①あなた、②多くの、③④彼ら、の意味。
・「侯」は①②③④諸侯、の意味。
・「戦」は①揺れ動く、②戦をする、③優劣を争う、④(恐れや寒さのために)震える、の意味。
・「其」は①②③④敵の代名詞の意味。
・「地」は①状態、②ひたすら、③状態、④ひたすら、の意味。
・「為」は①~言える、②装う、③見なす、④~と言える、の意味。
・「散」は①其十一1-1①「散」、②分かれる、③散らし消す、④実際の職務がないさま、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「諸侯戰其地者、為散」と「者」が入るが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には四通りの書き下し文と解読文がある。①②③④と付番して、以下、それぞれについて解説する。

<①について>
・特に無し。

<②について>
・「散」の“分かれる”は、多くの諸侯に対応するために敵軍が分断すること解釈できるため、使役形で「敵軍を分断させる」と解読。

<③について>
・「諸」の“彼ら”は、②「敵軍を分断させる」に基づき、「分断された敵軍」と解読。

・「侯」には、②の「多くの諸侯が出現する」の意味が積み上げられていると解釈。結果、「出現した多くの諸侯」と解読。④も同様に解読。

・「地を戦う」の直訳は“状態の優劣を争う”となる。これは「分断された敵軍」が「出現した多くの諸侯」と優劣を比較すると解釈。分断された敵軍は兵士数が少なく、出現した各諸侯は分断していないため十分な兵士数を備えていると推察できるため、“優劣を争う”事柄は兵士数と解釈できる。結果、使役形で「兵士数を比較させる」と解読。

<④について>
・「戦」の“(恐れや寒さのために)震える”は、「出現した多くの諸侯」が③「分断された敵軍」を恐れ震えさせることと考察。結果、「分断された敵軍を恐れ震えさせる」と補って解読。

・「諸」の“彼ら”は、出現した多くの諸侯が分断された敵軍を散らし消す結果、敵軍と戦闘することがない者と考察。結果、「自軍の兵士達」と解読。

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