之に撃つ可しと敵は知りて、卒に之るに以せば撃つ可しと吾も知れば、而ち不いに地の刑を知りて、不いに可かしむ之は以して戦げしむなり、之は勝えんとするも半たるものあるなり。

其十5-3

知敵之可擊、知吾卒之可以擊、而不知地刑之不可以戰、勝之半也。

zhī dí zhī kĕ jī、zhī wú zú zhī kĕ yǐ jī、ér bù zhī dì xíng zhī bù kĕ yǐ zhàn、shèng zhī bàn yĕ。

解読文

①戦地の型「険」によって相手軍を容易く打ち破ることができると敵将軍が理解しており、戦地の型「険」に該当する高く険しい山に到達した時に戦地の型「険」を占拠すれば相手軍を容易く打ち破ることができると自軍の将軍も理解しているならば、大いに戦地の型「険」のお手本を理解して、直面している状況に大いに適合させた側の将軍が羊の集まりを導くように相手軍を動かすのであり、相手軍は持ち堪えようとするが本軍から分断された部隊が出現するのである。

②本軍から分断された部隊は攻め取ることができると敵将軍が理解しており、敵軍が戦地の型「険」から離れる時に奇正の戦術を行えば本軍から分断された部隊を攻め取ることができると自軍の将軍も理解しているならば、大いに兵士達を管理してひたすら軍隊を整え治めた側の将軍が相手軍による奇正の戦術の実行を許すことが無いのであり、奇策部隊の任務を失敗させて相手軍を恐れ震えさせるのである。

③奇正の戦術を行った時は攻め取った兵士達を離反させることができると敵将軍が理解しており、礼物によって兵士達は心変わりして自国との関係を断ち切って離反すると自軍の将軍も理解しているならば、国土を豊かに整え治めて人民を管理している側の将軍が大いなる礼物や収入を使って攻め取った兵士達の心を揺さぶるのであり、相手国の中途半端な礼物や収入を上回るのである。

④礼物によって離反した兵士達は褒美によって相手の将軍を殺害すると敵将軍が理解しており、褒美を使えば本軍から分断された部隊が攻め取られてもその兵士達が突き刺して敵将軍が死ぬと自軍の将軍も理解しているならば、大いなる褒美を採用することで誅殺する武将の地位を競わせた側の将軍が攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達の人数を盛大にするのであり、格式の高い家柄になると感じさせて相手の将軍を殺害させるのである。

⑤攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達はその思いを断ち切らせなければならないと敵将軍が理解しており、攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達が存在すれば人民の生活を支える役人を使って年貢等を免除する利点を実行してその思いを断ち切らせなければならないと自軍の将軍も理解しているならば、その兵士達を町、村、里、集落に封じて扶養しながら自国の人民と交流させて整え治めた側の将軍が殺害実行を許すこと無く豊かさを競わせるのであり、町、村、里、集落の真ん中で繁栄すれば心変わりして将軍殺害の思いが消えるのである。

⑥将軍殺害を狙う兵士達が繁栄すればその思いを断ち切らせることができると敵将軍が理解しており、人民の生活を支える役人を使って将軍殺害を狙う兵士達が繁栄すればその思いを断ち切らせることができると自軍の将軍も理解しているならば、ひたすら鞭打つ処罰を行うこと無く軍隊を治める側の将軍が、真心が足りない相手国の法規や決まりと比して優れた、大いに真心のある法規や決まりを採用して兵士数を競うのである。

⑦真心のある法規や決まりによって相手国から兵士を奪い取ることができると敵将軍が理解しており、大いに真心のある法規や決まりを採用すれば相手国の人民や奴隷が降伏してきて相手国から兵士を奪い取ることができると自軍の将軍も理解しているならば、国土内に真心のある法規や決まりを知らせることに大いに成功した側の将軍が大いに兵士を採用することができて兵士数が凌駕するのであり、戦地の型「険」のお手本を使えば、羊の集まりを導くように相手軍を動かして本軍から分断された部隊を出現させるのである。

⑧本軍から分断された部隊を出現させれば攻め取ることができると敵将軍が理解していても、大いに知恵のある将軍は戦地の型「険」に該当する高く険しい山によって防御するのであり、兵士数が凌駕した軍隊で対峙すれば「自軍に殺される」と敵兵達に考えさせることを理解しているのである。ひたすら兵士数が凌駕した軍隊を整え治めれば、敵軍による奇正の戦術の実行を許すことが無く、敵兵達を恐れ震えさせるのであり、敵本軍から分断された部隊を出現させた時、自軍の奇策部隊が出現してその敵部隊を打ち破るのである。
書き下し文
①之に撃つ可しと敵は知りて、卒(そつ)に之(いた)るに以(な)せば撃つ可しと吾も知れば、而(すなわ)ち不(おお)いに地の刑を知りて、不(おお)いに可(き)かしむ之は以(な)して戦(そよ)げしむなり、之は勝(た)えんとするも半たるものあるなり。

②之は撃(げき)す可しと敵は知りて、卒(そつ)より之(ゆ)くに以(な)せば撃(げき)す可しと吾も知れば、而(すなわ)ち不(おお)いに知りて地(た)だ刑(おさ)める之は以(な)すこと可(き)くこと不(な)きなり、勝(た)える之を半たらしめて戦(おのの)かしむなり。

③之なすに撃たしむ可しと敵は知りて、可を以て卒(そつ)は之(ゆ)きて撃つと吾も知れば、而(すなわ)ち不(おお)いに地を刑(おさ)めて知る之は不(おお)いなる可を以(もち)いて戦(そよ)げしむなり、半なる之に勝(まさ)るなり。

④之は可に撃つと敵は知りて、可を以(もち)いれば撃(げき)されるも之は卒(しゅっ)すと吾も知れば、而(すなわ)ち不(おお)いなる可を以(もち)いて戦わしむ之は半なる之を勝(しょう)たるなり、不(おお)いなる地ありと知らしめて刑せしむなり。

⑤之は撃たしむ可しと敵は知りて、之あれば卒(そつ)をして以(な)して撃たしむ可しと吾も知れば、而(すなわ)ち地におらしめて不(おお)いに知らしめて刑(おさ)める之は以(な)すこと可(き)くこと不(な)く戦わしむなり、半に勝(しょう)たれば之(ゆ)くなり。

⑥之なせば撃つ可しと敵は知りて、卒(そつ)を以(もち)いて之なせば撃つ可しと吾も知れば、而(すなわ)ち地(た)だ刑(けい)すること不(な)く知る之は、半なる之より勝(まさ)りて、不(おお)いなる可を以(もち)いて戦うなり。

⑦之に撃(げき)す可しと敵は知りて、以(な)せば卒(そつ)の之(いた)りて撃(げき)す可しと吾も知れば、而(すなわ)ち地に知(ち)すること不(おお)いに刑(な)る之は不(おお)いに以(もち)いる可くして勝(まさ)るなり、之なせば戦(そよ)げしめて半たるものあらしむなり。

⑧之あらしめば撃(げき)す可しと敵は知るも、不(おお)いに知ある而(なんじ)は卒(そつ)に吾(ふせ)ぐなり、之に可(あ)たれば撃たれると以(おも)わしむこと知るなり。地(た)だ之を刑(おさ)めれば、以(な)すこと可(き)くこと不(な)く戦(おのの)かしむなり、半たるものあらしむに之ありて勝つなり。
<語句の注>
・1つ目の「知」は①②③④⑤⑥⑦⑧理解する、の意味。
・「敵」は①②③④⑤⑥⑦⑧戦争や競争で対抗する相手、の意味。
・1つ目の「之」は①②③④⑤⑥⑦⑧代名詞、の意味。
・1つ目の「可」は①②③~できる、④長所、⑤~しなければならない、⑥⑦⑧~できる、の意味。
・1つ目の「撃」は①叩く、②強奪する、③断ち切る、④殺す、⑤⑥断ち切る、⑦⑧強奪する、の意味。
・2つ目の「知」は①②③④⑤⑥⑦⑧理解する、の意味。
・「吾」は①②③④⑤⑥⑦私、⑧防御する、の意味。
・「卒」は①②(山が)高く険しいさま、③兵士、④死ぬ、⑤⑥下級役人、⑦兵士、しもべ、⑧(山が)高く険しいさま、の意味。
・2つ目の「之」は①ある地点や事情に達する、②赴く、③変わる、④⑤⑥代名詞、⑦ある地点や事情に達する、⑧彼ら、の意味。
・2つ目の「可」は①②~できる、③④長所、⑤~しなければならない、⑥⑦~できる、⑧対する、の意味。
・1つ目の「以」は①②事を行う、③~によって、④使用する、⑤事を行う、⑥使用する、⑦事を行う、⑧考える、の意味。
・2つ目の「撃」は①叩く、②強奪する、③断ち切る、④強奪する、⑤⑥断ち切る、⑦強奪する、⑧殺す、の意味。
・「而」は①②③④⑤⑥⑦仮定条件の接続詞、⑧あなた、の意味。
・「不」は①②③④⑤大いに、⑥無い、⑦⑧大いに、の意味。
・3つ目の「知」は①理解する、②③司る、④感じる、⑤交わる、⑥司る、⑦知らせる、⑧知恵、の意味。
・「地」は①其一2-5②「地」、②ひたすら、③国土、④家柄、⑤地区、⑥ひたすら、⑦国土、⑧ひたすら、の意味。
・「刑」は①手本、②③整え治める、④殺す、⑤整え治める、⑥罰する、⑦成功する、⑧整え治める、の意味。
・3つ目の「之」は①②③④⑤⑥⑦彼、⑧代名詞、の意味。
・「不」は①大いに、②無い、③④大いに、⑤無い、⑥⑦大いに、⑧無い、の意味。
・3つ目の「可」は①適合するさま、②許す、③④長所、⑤許す、⑥長所、⑦~できる、⑧許す、の意味。
・2つ目の「以」は①②事を行う、③使用する、④採用する、⑤事を行う、⑥⑦採用する、⑧事を行う、の意味。
・「戦」は①揺れ動く、②(恐れや寒さのために)震える、③揺れ動く、④⑤⑥優劣を争う、⑦揺れ動く、⑧(恐れや寒さのために)震える、の意味。
・「勝」は①持ち堪える、②忍ぶ、③越える、④盛大な、⑤盛んな、⑥⑦越える、⑧敵を打ち破る、の意味。
・4つ目の「之」は①②彼ら、③代名詞、④彼ら、⑤変わる、⑥⑦代名詞、⑧彼ら、の意味。
・「半」は①大きな欠片のさま、②③④不完全な、⑤真ん中、⑥不完全な、⑦⑧大きな欠片のさま、の意味。
・「也」は①②③④⑤⑥⑦⑧断定の語気、の意味。
<解読の注>
中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」は地刑篇全て欠落しているため、孫子(講談社)及び新訂孫子(岩波)の原文を採用した。なお、「刑篇」同様に「形」は「刑」と置き換えた。
・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・1つ目の「之」は、其十5-1⑧「卒」の「戦地の型「険」」を指示する代名詞と解読。

・1つ目と2つ目の「撃」の“叩く”は、其五1-4①「段」の“槌(つち)で打つ”と同意と考察。其五1-4①「自分の方に投げられた脆い卵を目にとめて固い木槌で打つに等しく自軍に向かって来る脆い敵軍を認識して固い自軍で打ち破る」の虚実の教えに基づき、「容易く打ち破る」と解釈。結果、一般化して「相手軍を容易く打ち破る」と解読。

・「卒」の“(山が)高く険しいさま”は、漢字の意味より其十1-1①「地勢が険しく堅固に守れる戦地の型「険」」を指すと考察。結果、「戦地の型「険」に該当する高く険しい山」と解読。⑧も同様に解読。

・1つ目の「以」の“事を行う”の“事”は、其十1-11①「地勢が険しく堅固に守れる戦地の型「険」で軍隊を整え治める将軍は、先制して自軍を到達させて占拠させる」の占拠を指すと考察。結果、「戦地の型「険」を占拠する」と解読。

・「地」は、其一2-5②「地」の「戦地」と解釈した上で「卒」の「戦地の型「険」」を指すと考察。結果、「戦地の型「険」」と解読。

・3つ目の「可」の“適合するさま”は、話の流れより「戦地の型」を直面している状況に適合させることと考察。結果、「不いに可かしむ」で「直面している状況に大いに適合させる」と補って解読。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・「以して戦げしむ」の直訳は“事を行って揺れ動かす”となる。この“揺れ動かす”は相手軍を思い通りに動かすことと解釈すれば、“事を行う”は其十一5-5⑥「羊の集まりを導くように軍隊を動かす」を指すと考察できる。結果、「羊の集まりを導くように相手軍を動かす」と解読。

・4つ目の「之」の“彼ら”は、3つ目の「之」で条件に合致しなかった側の軍隊を指示する代名詞と考察。結果、話の流れに合わせて「相手軍」と解読。⑦も同様に解読。

・「半たるもの」は、其十5-2②③「半」同様に「本軍から分断された部隊」と解読。

<②について>
・1つ目の「之」は、①「半」の「本軍から分断された部隊」を指示する代名詞と解読。

・1つ目の「撃」の“強奪する”は、奇正の戦術によって獲物となった部隊を攻め取ることと考察。結果、「攻め取る」と言い換えた。⑧も同様に解読。

・「卒」の“(山が)高く険しいさま”は、①「卒」同様に「戦地の型「険」に該当する高く険しい山」と解釈するが、ここでは簡潔に「戦地の型「険」」と解読。

・2つ目の「之」の“赴く”は、戦地の型「険」の教えとして記述された其十1-12②「自軍に向けて弓を引き絞ることでその場から離れさせて、奇策部隊が隠れている場所に自軍を引き寄せようとする」で記述された“その場から離れさせる”ことと同意と考察。“その場”は「卒」の「戦地の型「険」」と解釈し、「敵軍が戦地の型「険」から離れる」と補って解読。

・1つ目の「以」の“事を行う”の“事”は、戦地の型「険」から離れる時に行う事柄であるため、其十1-12②「自軍に向けて弓を引き絞ることでその場から離れさせて、奇策部隊が隠れている場所に自軍を引き寄せようとする」より奇正の戦術とわかる。結果、「奇正の戦術を行う」と解読。

・2つ目の「撃」の“強奪する”は、奇正の戦術によって「本軍から分断された部隊」を攻め取ることと考察。結果、「本軍から分断された部隊を攻め取る」と補って解読。

・3つ目の「知」の“司る”は、将軍が兵士達を管理することと考察。結果、「兵士達を管理する」と補って解読。

・「刑」の“整え治める”は、将軍が軍隊を整え治めることと考察。結果、「軍隊を整え治める」と補って解読。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・2つ目の「以」の“事を行う”は、1つ目の「以」同様に「奇正の戦術を行う」と解釈。但し、話の流れに合わせて「以すこと」で「相手軍による奇正の戦術の実行」と解読。

・「勝える之を半たらしむ」の直訳は“忍ぶ彼らを不完全にさせる”となる。これは「相手軍による奇正の戦術の実行」を許さなかった結果、相手軍の奇策部隊の任務を失敗させたことと考察できる。結果、「奇策部隊の任務を失敗させる」と解読。

<③について>
・1つ目の「之」は、②「以」の「奇正の戦術を行う」を指示する代名詞と解釈。結果、「之なす」で「奇正の戦術を行う」と解読。

・1つ目の「撃」の“断ち切る”は、奇正の戦術によって攻め取った兵士達を相手国から断ち切って離反させることと考察。また、其十5-2③「大いなる礼物によって兵士達は心変わりして自国との関係を断ち切って離反する」に基づけば、その手段は「礼物」とわかる。結果、使役形で「攻め取った兵士達を礼物によって離反させる」と補って解読。

・2つ目の「可」の“長所”は、其十5-2③2つ目の「」の「礼物」を指すと考察。結果、「礼物」と解読。

・2つ目の「之」の“変わる”は、礼物によって兵士達が心変わりすることと考察。結果、「心変わりする」と解読。

・2つ目の「撃」の“断ち切る”は、礼物によって心変わりした兵士達が自国との関係を断ち切って離反することと考察。結果、「自国との関係を断ち切って離反する」と解読。

・「地を刑めて知る」の直訳は“国土を整え治めて司る”となる。これは、其十二5-2②「呂牙は、殷王朝の役所に仕えており、殷国全土に広く行き渡って国家事業を始めたのである」及び其十二5-2③「呂牙は、仕えていた役所で殷国を観察して、あまねく歩き回って殷国を栄えさせたのである」に基づけば、国家事業等によって国土を豊かにして人民を管理したことと考察できる。結果、「国土を豊かに整え治めて人民を管理している」と補って解読。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・3つ目の「可」は、2つ目の「可」の「礼物」や其十5-1⑥1つ目の「可」の「どんどん増える収入という利点」を指すと考察。結果、「礼物や収入」と解読。

・「戦」の“揺れ動く”は、「礼物等」によって攻め取られた兵士達の心を揺さぶることと考察。結果、使役形で「攻め取った兵士達の心を揺さぶる」と補って解読。

・4つ目の「之」は、3つ目の「可」の「礼物や収入」を指示する代名詞と解読。

・「半なる之に勝る」は、「之」を「礼物や収入」と解釈すれば“不完全な礼物や収入を越える”となる。この“不完全”は相手国の中途半端な礼物や収入を上回ることと解釈できるため、「相手国の中途半端な礼物や収入を上回る」と解読。

<④について>
・1つ目の「之」は、③「卒」の「兵士達」を指示する代名詞と解釈。この兵士達は、解読文③より、奇策部隊に攻め取られた時、礼物によって心変わりして自国との関係を断ち切って離反したことわかる。結果、「礼物によって離反した兵士達」と解読。

・1つ目と2つ目と3つ目の「可」の“長所”は、其十5-2④2つ目の「可」で記述された「大いなる褒美を採用すれば仕返しする覚悟を持って離反した兵士達が突き刺して敵将軍が死ぬ」の「褒美」と同意と考察。結果、「褒美」と解読。

・1つ目の「撃」の“殺す”は、其十5-2④「大いなる褒美を採用すれば仕返しする覚悟を持って離反した兵士達が突き刺して敵将軍が死ぬ」に基づき、「相手の将軍を殺害する」と補って解読。

・2つ目の「撃」の“強奪する”は、奇正の戦術によって「本軍から分断された部隊」が攻め取られることと考察。結果、受身形で「本軍から分断された部隊が攻め取られる」と補って解読。

・2つ目の「之」は、「敵」の「敵将軍」を指示する代名詞と解読。

・「之は卒す」は、「之」を「敵将軍」と解釈すれば“敵将軍は死ぬ”となる。これは、其十5-2④「卒」で記述された「大いなる褒美を採用すれば仕返しする覚悟を持って離反した兵士達が突き刺して敵将軍が死ぬ」の意味を積み上げていると考察。結果、「その兵士達が突き刺して敵将軍が死ぬ」と補って解読。

・「戦」の“優劣を争う”は、大いなる褒美を採用することで兵士達が優劣を争うことであり、其九4-26⑦「過ちを犯した兵士達は貧しくなれば、最も地位や身分が高そうな武将を誅殺するのである」に基づけば、誅殺する相手の高位さについて優劣を競うのだと考察できる。結果、使役形で「誅殺する武将の地位を競わせる」と補って解読。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・「半なる之」の直訳は“不完全な彼ら”となる。これは、其十5-2④「半なる之」の「仕返しする覚悟を持って離反した兵士達」を指すと考察。但し、話の流れは敵将軍の殺害を狙う場合に限定されていることを踏まえて、「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」と解読。

・「勝」の“盛大な”は、「仕返しする覚悟を持って離反した兵士達」の人数を盛大にすることと考察。結果、「勝たり」で「人数を盛大にする」と解読。

・「不いなる地あり」の直訳は“大いなる家柄を得る”となる。これは出世して家柄が良くなることと解釈できるため、「格式の高い家柄になる」と言い換えた。

・「刑」の“殺す”は、話の流れより、使役形で「相手の将軍を殺害させる」と補って解読。

<⑤について>
・1つ目と2つ目の「之」は、④4つ目の「之」の「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」を指示する代名詞と解読。

・1つ目と2つ目の「撃」の“断ち切る”は、「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」の相手の将軍を殺害しようという思いを断ち切らせることと考察。結果、使役形で「その思いを断ち切らせる」と補って解読。⑥も同様に解読。

・「卒」の“下級役人”は、其二5-2③「リーダーとなって物事を処理する役人は、人民の生活を支える職務を主管し、災いする人民と交流して馴染みになり、危害を与えようとする自国に仕返ししたい人民を町、村、里、集落に封じるに至るのである」及び其二5-2④「人民が生活する町、村、里、集落に赴き、人民の生計を偵察して扶養すれば、自国に仕返ししたい人民が自国に順応する道理である」で登場する役人と考察。結果、「人民の生活を支える役人」と解読。⑥も同様に解読。

・1つ目の「以」の“事を行う”の“事”は、其十5-1④2つ目の「可」で記述された「大いに心変わりさせる年貢等を免除する利点」を指すと考察。結果、「年貢等を免除する利点を実行する」と解読。

・「地におらしめて不いに知らしめて刑める」の直訳は“地区に配置して大いに交わらせて整え治める”となる。これは、其二5-2③「リーダーとなって物事を処理する役人は、人民の生活を支える職務を主管し、災いする人民と交流して馴染みになり、危害を与えようとする自国に仕返ししたい人民を町、村、里、集落に封じるに至るのである」及び其二5-2④「人民が生活する町、村、里、集落に赴き、人民の生計を偵察して扶養すれば、自国に仕返ししたい人民が自国に順応する道理である」で記述された統治を行うことと考察。結果、「その兵士達を町、村、里、集落に封じて扶養しながら自国の人民と交流させて整え治める」と補って解読。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・2つ目の「以」の“事を行う”の“事”は、「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」の“将軍殺害”と考察。結果、「以すこと」で「殺害実行」と解読。

・「戦」の“優劣を争う”は、其十5-1⑥「どんどん増える収入という利点」及び「扶養しながら自国の人民と交流させて整え治める」からの流れを踏まえれば「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」に豊かさを競わせることと考察できる。結果、使役形で「豊かさを競わせる」と補って解読。

・「半」の“真ん中”は、「町、村、里、集落」の真ん中を指すと考察。結果、「町、村、里、集落の真ん中」と補って解読。

・「勝」の“盛んな”は、「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」に豊かさを競わせた結果、栄えた意味と解釈。結果、「勝たり」で「繁栄する」と解読。

・4つ目の「之」の“変わる”は、「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」の感情が変化して将軍殺害の思いが消えることと考察。結果、「心変わりして将軍殺害の思いが消える」と補って解読。

<⑥について>
・1つ目と2つ目の「之」は、⑤「勝」の「繫栄する」を指示する代名詞と解釈。主語が「攻め取られても将軍殺害を狙う兵士達」であることを踏まえて、「之なす」で「将軍殺害を狙う兵士達が繁栄する」と解読。

・「刑」の“罰する”は、其九4-26②「行き詰まっている敵の隊長は、一つひとつの罪状を数え挙げて責めてから鞭打つのである」を行うのだと考察し、「鞭打つ処罰を行う」と補って解読。

・3つ目の「知」の“司る”は、「鞭打つ処罰を行う」こと無く司ることを考慮すると「軍隊を治める」と補って解読できる。

・3つ目の「之」の“彼”は、「敵将軍」と「自軍の将軍」のいずれか条件に合致する方を指示する代名詞と考察。結果、「~側の将軍」と解読。

・4つ目の「之」は、後述される3つ目の「可」を指示する代名詞と解釈。但し、話の流れを考慮して「法規や決まり」と解読。

・「半なる之」は、「之」を「法規や決まり」と解釈すれば“不完全な法規や決まり”となる。この“不完全”は、両国を比較した時、相対的に真心が足りないことと解釈できる。結果、「真心が足りない相手国の法規や決まり」と解読。

・3つ目の「可」の“長所”は、其一2-7①「法」の「法規やお手本」と同意と解釈。ここでは特に其十一7-7②「好き勝手にする敵人民にも真心のある法規や決まりを与えて誠実に実行すれば、自国に対する思いを厚くするのである」等で記述される「真心」の表現が適当と判断し、「真心のある法規や決まり」と解読。

・「戦」の“優劣を争う”は、「真心のある法規や決まり」を採用して競う事柄であるため、其七4-4④「真心のある法規や決まりを使えば、軍隊は兵士数で差を出して権勢を生じる」に基づけば、「兵士数を競う」と補って解読できる。

<⑦について>
・1つ目の「之」は、⑥3つ目の「可」の「真心のある法規や決まり」を指示する代名詞と解読。

・1つ目と2つ目の「撃」の“強奪する”は、其九6-1⑦「広まった真心のある法規や決まりによって敵国の人民を教え導けば、その人民は奴隷と共に降服してくるのである」に基づいて解読部⑥の内容を踏まえれば、相手国から兵士を奪い取ることと考察できる。結果、「相手国から兵士を奪い取る」と補って解読。

・1つ目の「以」の“事を行う”は、⑥「大いに真心のある法規や決まりを採用する」を指すと考察。結果、「大いに真心のある法規や決まりを採用する」と解読。

・「卒」は、真心のある法規や決まりに憧れて自国に降伏してくる者であるため、其九6-1⑦「広まった真心のある法規や決まりによって敵国の人民を教え導けば、その人民は奴隷と共に降服してくるのである」に基づいて、“兵士”と“しもべ”の掛け言葉と解釈。但し、“兵士”はその属性である人民と言い換えて、また、“しもべ”は其九6-1⑦に合わせて奴隷と言い換えることとし、「相手国の人民や奴隷」と解読。

・2つ目の「之」の“ある地点や事情に達する”は、其九6-1⑦「広まった真心のある法規や決まりによって敵国の人民を教え導けば、その人民は奴隷と共に降服してくるのである」に基づき、「降伏してくる」と解読。

・3つ目の「知」の“知らせる”は、国土に「真心のある法規や決まり」を知らせることと考察。結果、「真心のある法規や決まりを知らせる」と補って解読。

・「勝」の“越える”は、兵士数を比較した結果であるため、「兵士数が凌駕する」と言い換えた。

・「戦」の“揺れ動く”は、①「戦」で記述された「羊の集まりを導くように相手軍を動かす」の意味を積み上げていると考察。結果、「羊の集まりを導くように相手軍を動かす」と解読。

・4つ目の「之」は、①「刑」の「戦地の型「険」のお手本」を指示する代名詞と解読。

・「半たるもの」は、①「半」同様に「本軍から分断された部隊」と解読。

<⑧について>
・1つ目の「之」は、⑦「半」の「本軍から分断された部隊」を指示する代名詞と解読。

・2つ目の「之」の“彼ら”は、⑦「兵士数が凌駕する」の記述を踏まえると相手軍と比して兵士数が凌駕した自軍と考察できる。結果、「兵士数が凌駕した軍隊」と解読。

・3つ目の「之」は、2つ目の「之」の「兵士数が凌駕した軍隊」を指示する代名詞と解読。

・2つ目の「以」の“事を行う”は、②2つ目の「以」同様に「相手軍による奇正の戦術の実行」と解釈。但し、話の流れに合わせて「以すこと」で「敵軍による奇正の戦術の実行」と解読。

・「半たるもの」は、①「半」同様に「本軍から分断された部隊」と解釈。但し、話の流れに合わせて「敵本軍から分断された部隊」と解読。

・4つ目の「之」の“彼ら”は、話の流れより自軍の奇策部隊が「敵本軍から分断された部隊」を打ち破る文意と考察。結果、「自軍の奇策部隊」と解読。

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