故に、兵に用せしめて之いる法は、高に陵ぐものに郷かう勿かれ、丘に倍すものを迎える勿かれ、詳たる北に従う勿かれ、囲む師あるに闕くこと遺てるなり、帰せしめて師あらしむこと謁う勿かれ。衆の之るに此に法りて用いらしむなり。

其七6-7

故用兵之法、高陵勿郷、倍丘勿迎、詳北勿從、圍師遺闕、歸師勿謁。此用衆之法也。

gù yòng bīng zhī fǎ、gaō líng wù xiāng、bèi qiū wù yíng、xiáng beǐ wù cóng、wéi shī yí quē、guī shī wù yè。cǐ yòng zhòng zhī fǎ yĕ。

解読文

①きちんと整った敵の正攻法部隊が出現した時に、軍隊に従い守らせて使うお手本は、高い所に登っている敵軍に向かって行ってはならない、小さな土山を背にする敵軍に出向いて迎撃してはならない、落ち着いた様子の敗走者を追ってはならない、防御している敵大軍が出現した時は撤退させることは放棄するのであり、各部隊を一カ所に集合させて大軍十万を出現させることを求めてはならない。敵の多人数部隊が来襲した時は、これをお手本として上手く適合させるのである。

②だから、お手本を使って自軍が力を尽くす時は、敵軍が存在しない高い所があれば前もって自軍が上に登るのであり、敵軍が存在しない小さな土山があれば自軍が背にして敵軍から出向かせて迎撃させるのであり、落ち着かない様子の敗走者が出現すれば追うのであり、防御している敵大軍が出現した時は各部隊を一カ所に集合させて大軍十万を出現させること無く、敵将軍に面会して品物を贈って自軍を侮る欠点を生じさせるのである。お手本を使う群臣は、このように力を尽くすのである。

③平素から群臣は軍律を守って軍隊を治めるのであり、高貴な地位の群臣が軍律に厳密であれば指示に対して兵士達からの反発が無い。自国に寝返った元敵兵達を受け入れて廃墟を存在させず、兵士達が従順であれば好きにさせるのである。戦術として包囲した敵部隊を打ち破って自国に寝返らせた時は、模範となる兵士に付き従わせて目上の者に面会させることが無い。このように多くの人民を治める時は、真心のある法規や決まりを使うのである。

④真心のある法規や決まりを使えば、災いとなる元敵兵を上手く自国に適合させるのであり、里の高貴な地位の群臣を侮る者は存在しない。一つひとつ細かく未来を予測しない元敵兵が里で裏切って謀反を起こしても、謀反に加わる者は存在しない。猛獣の獅子のように荒々しい元敵兵達は一カ所に集めて模範となる人民達によって取り巻くのであり、自国に仕返しする覚悟を忘れさせれば、元敵兵達から告発されることは無い。このように真心のある法規や決まりを使って元敵兵を上手く自国に適合させれば、正攻法部隊に編制するのである。

⑤元敵兵達が真心のある法規や決まりに適合して馴染みの関係になれば、正攻法部隊に採用して侮ること無く尊ぶのである。陣地にした元敵里の耕作地を増やして、兵士達に反発させなければ元敵兵達は自軍からの徴兵を受け入れるのであり、区別すること無く公平に接すれば元敵兵達は指示を聞き入れるのである。猛獣の獅子のように荒々しい元敵兵達は一カ所に集めて、攻め取った元敵兵の世話役によって取り囲むのであり、荒々しい元敵兵達に告発を狙ったでたらめを言わせることが無ければ欠点を無くすのである。これが、正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本である。

⑥正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本を使う自軍は、敵里を経由して陣地にする戦略を使って敵軍を衰えさせるのである。敵将軍に侮らせて自軍の正攻法部隊に対して脅威を感じさせなければ、敵軍が出向いて迎撃してくることが無いのである。敵里を奪い取れば正攻法部隊の規模が大きくなるのであり、広範囲に敵里を自国に寝返らせれば、敵軍は率いる兵士が存在しない。敵里に破損している壁があった時は専門職の役人によって修理すれば、敵里の人民達は自国に帰属して告発することが無い。このように敵里の人民達を治めれば、正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本を実行した状態に至るのである。

⑦正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本を実行した状態に至った自軍が戦術を使う時は、必ず兵士達の士気を激しく旺盛にして切れ味の鋭い武器となった自軍を出現させて、敵軍の存在しない小さな土山を背にして自軍に向かって来る敵軍を存在させないのである。敗走者のふりをする敵部隊が出現して自軍から出向かせて迎撃させようとしても追うことは無く、戦術として敵軍を包囲した時に隙間を与えて、説明すること無く獲物となる敵部隊を一カ所に集まらせるのである。このように多くの人々に働く道理に合致させて戦術を使うのである。

⑧多くの人々に働く道理を施して戦術を使うお手本は、兵士達の士気を激しく旺盛にして切れ味の鋭い武器となった自軍に対して恐れおののく敵部隊を自軍が存在しない場所に向かって行かせるのである。敗走者の好きにさせること無く、攻め取る場所を予測して、誰もいないと見せかけている奇策部隊に対して背を向けさせて送り渡すのである。敵本軍から切り離した敵部隊は、奇策部隊が包囲して攻め取るのであり、家や故郷に戻ること無く自国に従うことを求めるのである。群臣は、真心のある法規や決まりを使って攻め取った敵兵達を治めるのである。
書き下し文
①故に、兵に用せしめて之(もち)いる法は、高に陵(しの)ぐものに郷(む)かう勿(な)かれ、丘に倍(はい)すものを迎える勿(な)かれ、詳(しょう)たる北(ほく)に従う勿(な)かれ、囲む師あるに闕(か)くこと遺(す)てるなり、帰(き)せしめて師あらしむこと謁(こ)う勿(な)かれ。衆の之(いた)るに此に法(のっと)りて用いらしむなり。

②故に、法を之(もち)いて兵に用いるに、勿(な)き高あれば郷(さき)に陵(しの)ぐなり、勿(な)き丘あれば倍(はい)して迎えしむなり、詳(しょう)勿(な)き北(ほく)あれば従うなり、囲む師あるに帰(き)せしめて師あらしむこと勿(な)く、謁(まみ)えて遺(おく)りて闕(けつ)あらしむなり。法を之(もち)いる衆は此(か)く用いるなり。

③故(もと)より之は法して兵を用いるなり、高の陵(きび)しければ郷(きょう)勿(な)し。倍(そむ)くものを迎えて丘は勿(な)けしめ、詳(よ)ければ北(はい)すこと勿(な)く従うなり。囲む師を闕(か)きて遺(す)てしむに、師に帰(き)せしめて謁(まみ)えしむこと勿(な)し。此(か)く衆を用いるに法を之(もち)いるなり。

④法を之(もち)いれば、故たる兵を用せしむなり、郷の高を陵(しの)ぐもの勿(な)し。詳(つまび)らかに迎えること勿(な)きものの丘に倍(そむ)くも、北(そむ)くに従うもの勿(な)し。師は帰(き)せしめて師に囲むなり、闕(か)くこと遺(わす)れしめば、謁(つ)げらるること勿(な)し。此(か)く法を之(もち)いて用せしめば、衆たらしむなり。

⑤之に法(のっと)りて故たれば、兵に用いて陵(しの)ぐこと勿(な)く高しとするなり。丘を倍(ま)して郷勿(な)けしめば迎えるなり、北(はい)すこと勿(な)く詳(たい)らかなれば従うなり。師は帰(き)せしめて師に囲むのであり、謁(つ)げしむこと勿(な)ければ闕(けつ)を遺(うしな)うなり。此、之を衆(おお)くして用いる法なり。

⑥法(のっと)るものは、用(よ)る兵を之(もち)いて故(ふ)らしむなり。陵(しの)げしめて高勿(な)くんば迎えること勿(な)きなり。郷を倍(そむ)けしめば丘(きゅう)たるなり、詳(つまび)らかに北(そむ)けしめば従(したが)えるもの勿(な)し。闕(か)ける囲みあるに師に遺(うしな)えば、師(もろもろ)は帰(き)して謁(つ)げること勿(な)し。此(か)く衆を用いれば、法なすに之(いた)るなり。

⑦法をなすに之(いた)るものの兵を用いるに、故(もと)より高くして陵(みが)くものあらしめて、勿(な)き丘を倍(はい)して郷(む)かうもの勿(な)けしむなり。北(ほく)を詳(いつわ)るものありて迎えしめんとするも従うこと勿(な)く、師を囲むに闕(けつ)を遺(おく)りて、謁(つ)げること勿(な)く師を帰(き)せしむなり。此(か)く衆の用に法(のっと)らしめて之(もち)いるなり。

⑧故を用いて兵を之(もち)いる法は、高きものに陵(りょう)たるものは勿(な)きに郷(む)かわしむなり。北(ほく)に従うこと勿(な)く、丘(きゅう)を迎えて勿(な)きを詳(いつわ)るものに倍(はい)せしめて遺(おく)るなり。闕(か)ける師を囲むなり、帰ること勿(な)く師(したが)うこと謁(こ)うなり。衆は法を之(もち)いて此を用いるなり。
<語句の注>
・「故」は①事変、②だから、③平素から、④災い、⑤馴染み、⑥衰える、⑦必ず、⑧道理、の意味。
・1つ目の「用」は①従い守る、②力を尽くす、③治める、④上手く適合する、⑤採用する、⑥経由する、⑦使用する、⑧施す、の意味。
・「兵」は①②③軍隊、④戦士、⑤軍隊、⑥戦略、⑦⑧戦術、の意味。
・1つ目の「之」は①②使う、③代名詞、④使う、⑤代名詞、⑥使う、⑦ある地点や事情に達する、⑧使う、の意味。
・1つ目の「法」は①②手本、③法を守る、④其一2-7①「法」、⑤のりに適う、⑥手本とする、⑦⑧手本、の意味。
・「高」は①②高い所(山や丘を指す)、③④高貴な地位、⑤尊ぶ、⑥⑦⑧音声が大きくてよく響くさま、の意味。
・「陵」は①②上にあがる、③厳密なさま、④⑤⑥侮る、⑦砥石で刃物を鋭くする、⑧恐れおののくさま、の意味。
・1つ目の「勿」は①してはならない、②③④⑤存在しない、⑥しない、⑦⑧存在しない、の意味。
・「郷」は①前に向かって行く、②以前、③こだま、④里、⑤こだま、⑥里、⑦⑧前に向かって行く、の意味。
・「倍」は①②背にする、③④裏切る、⑤増やす、⑥外れる、⑦⑧背にする、の意味。
・「丘」は①②小さな土山、③廃墟、④人々が群居するところ、⑤周代の耕作地の区画単位、⑥大きい、⑦小さな土山、⑧墓、の意味。
・2つ目の「勿」は①してはならない、②③存在しない、④しない、⑤存在しない、⑥しない、⑦⑧存在しない、の意味。
・「迎」は①②出迎える、③受け入れる、④未来を予測する、⑤受け入れる、⑥⑦出迎える、⑧未来を予測する、の意味。
・「詳」は①②落ち着いたさま、③従順なさま、④一つひとつ細かい、⑤公平であるさま、⑥広範囲に、⑦ふりをする、⑧見せかける、の意味。
・「北」は①②敗走者、③分ける、④背反する、⑤分ける、⑥背反する、⑦⑧敗走者、の意味。
・3つ目の「勿」は①してはならない、②③しない、④存在しない、⑤しない、⑥存在しない、⑦⑧しない、の意味。
・「従」は①②追う、③好きにさせる、④加わる、⑤聞き入れる、⑥率いる、⑦追う、⑧好きにさせる、の意味。
・「囲」は①②防ぐ、③戦術として包囲する、④取り巻く、⑤周りを巡る、⑥壁、⑦戦術として包囲する、⑧包囲して捕らえる、の意味。
・1つ目の「師」は①②③軍隊、④⑤模範となる人、⑥専門的に特定の職域・職能を扱う官、⑦⑧軍隊、の意味。
・「遺」は①放棄する、②品物を贈る、③放棄する、④忘れる、⑤⑥無くす、⑦与える、⑧送り渡す、の意味。
・「闕」は①除く、②欠点、③④壊す、⑤欠点、⑥破損したさま、⑦隙間、⑧欠けて不完全なさま、の意味。
・「帰」は①②一カ所に集まる、③付き従う、④⑤一カ所に集まる、⑥帰属する、⑦一カ所に集まる、⑧家や故郷に戻る、の意味。
・2つ目の「師」は①②軍隊、③模範となる人、④⑤猛獣のシシ、⑥衆人、⑦猛獣のシシ、⑧尊び従う、の意味。
・4つ目の「勿」は①してはならない、②③④⑤⑥⑦⑧しない、の意味。
・「謁」は①求める、②③目上の人に面会する、④⑤⑥告発する、⑦説明する、⑧求める、の意味。
・「此」は①代名詞、②③④このように、⑤代名詞、⑥⑦このように、⑧代名詞、の意味。
・2つ目の「用」は①上手く適合する、②力を尽くす、③治める、④上手く適合する、⑤⑥治める、⑦事物の作用、⑧治める、の意味。
・「衆」は①多くの人々、②群臣、③④多くの人々、⑤数を増やす、⑥⑦多くの人々、⑧群臣、の意味。
・2つ目の「之」は①ある地点や事情に達する、②③④使う、⑤代名詞、⑥ある地点や事情に達する、⑦⑧使う、の意味。
・2つ目の「法」は①手本とする、②手本、③④其一2-7①「法」、⑤⑥手本、⑦合致する、⑧其一2-7①「法」、の意味。
・「也」は①②③④⑤⑥⑦⑧断定の語気、の意味。
<解読の注>
・孫子(講談社)の原文は「故用衆之法、高陵勿向、倍丘勿迎、佯北勿從、圍師遺闕、歸師勿遏。此用衆之法也。」と「郷」を「向」とし、「詳」を「佯」とし、「謁」を「遏」とするが、中國哲學書電子化計劃「銀雀山漢墓竹簡(孫子)」の原文に従った。
・この句には八通りの書き下し文と解読文がある。①②③④⑤⑥⑦⑧と付番して、それぞれについて解説する。

<①について>
・「故」の“事変”は、話の流れより、其七6-6①「きちんと整える敵の正攻法部隊」等の出現を指すと考察。結果、簡潔に「きちんと整った敵の正攻法部隊が出現」と解読。

・「迎」の“出迎える”は、自軍から敵軍に向かっていく行為と解釈できる。結果、「出向いて迎撃する」と解読。②⑥⑦も同様に解読。

・「落ち着いた様子の敗走者」は、おとり部隊の可能性があるため追ってはならないのだと考察できる。

・1つ目の「師」の“軍隊”は、其二1-2①「師」の「大軍十万」の意味を積み上げていると考察。但し、文意より敵軍とわかるため、また自軍との区別を考慮して「敵大軍」と解読。②も同様に解読。

・2つ目の「師」の“軍隊”は、其二1-2①「師」の「大軍十万」の意味を積み上げていると考察。結果、「大軍十万」と解読。②も同様に解読。

・「衆」の“多くの人々”は、其五1-1①「衆」等同様に「多人数部隊」と考察。但し、この軍隊は敵であるため、「敵の多人数部隊」と補って解読。

・「此」は、「故用兵之法、高陵勿郷、倍丘勿迎、詳北勿從、圍師遺闕、歸師勿謁」を指示する代名詞と解釈。ここでは「これ」と解読。

<②について>
・1つ目と2つ目の「勿」の“存在しない”は、①からの話の流れを踏まえると「敵軍が存在しない」と補って解読できる。

・「遺りて闕あらしむ」の直訳は“品物を贈って欠点を生じさせる”となる。これは、其十二5-4⑤「蘇秦は、穀物を献上して機嫌を伺うことで秦国に軽んじ侮らせた上で、秦国に立ち向かう諸侯を動員したのである」を実行することと考察。つまり、“欠点”とは自軍を軽んじ侮らせた状態と解釈できる。結果、「品物を贈って自軍を侮る欠点を生じさせる」と補って解読。

<③について>
・1つ目の「之」は、②「衆」の「群臣」を指示する代名詞と解読。

・1つ目の「法」の“法を守る”の“法”は、其一2-7②「法」の「法規」と同意と解釈。但し、ここでは軍隊に対する「法規」が主であるため「軍律」に限定し、「軍律を守る」と解読。

・「高」の“高貴な地位”は、軍律を守る群臣を指すと考察。結果、「高貴な地位の群臣」と解読。④も同様に解読。

・「郷勿し」の直訳は“こだまが存在しない”となる。“こだま”とは、山や谷で声や音が反響して聞こえてくるものであるため、群臣からの指示に対して兵士達からの反発がないことと考察できる。結果、「(指示に対して)兵士達からの反発が無い」と解読。⑤も同様に解釈。

・「倍くもの」の直訳は“裏切った者”となる。これは自国に寝返った元敵兵達を指すと考察。結果、「自国に寝返った元敵兵達」と解読。

・1つ目の「師」の“軍隊”は、文意より奇策部隊に攻め取られる敵部隊と考察。結果、「敵部隊」と解読。

・「闕」の“壊す”は、文意より、奇策部隊が敵兵を武力で打ち破ることと考察できる。結果、「打ち破る」と解読。

・「遺」の“放棄する”は、攻め取った敵兵に敵国を捨てさせて、自国に寝返らせることと考察。結果、使役形で「自国に寝返らせる」と解読。

・2つ目の「法」は、其一2-7①「法」の「法規やお手本」と同意と解釈。ここでは特に其十一7-7②「好き勝手にする敵人民にも真心のある法規や決まりを与えて誠実に実行すれば、自国に対する思いを厚くするのである」等で記述される「真心」の表現が適当と判断し、「真心のある法規や決まり」と解読。⑧も同様に解読。

<④について>
・1つ目と2つ目の「法」は、③2つ目の「法」同様に「真心のある法規や決まり」と解読。

・「兵」の“戦士”は、③「敵部隊を打ち破って自国に寝返らせた」兵士と考察。結果、「元敵兵」と解読。

・「丘」の“人々が群居するところ”は、「郷」の「里」と同意と解読。

・「倍」の“裏切る”は、元敵兵が裏切って謀反を起こすことと考察。結果、「裏切って謀反を起こす」と補って解読。

・「北」の“背反する”は、「裏切って謀反を起こす」の「謀反」を指すと考察。結果、「北く」で「謀反」と解読。

・2つ目の「師」の“猛獣のシシ”は、猛獣のシシのように荒々しい態度を取る其六4-3④「自国に仕返しする覚悟を持った元敵兵達」の喩えと考察。但し、ここでは簡潔に「猛獣の獅子のように荒々しい元敵兵達」と解読。⑤も同様に解読。

・「闕」の“壊す”は、「猛獣の獅子のように荒々しい敵兵達」の前提にある其六4-3④「自国に仕返しする覚悟を持った元敵兵達」を踏まえて、「自国に仕返しする」と言い換えた。

・「衆」の“多くの人々”は、其五1-1①「衆」等同様に「多人数部隊」と考察。さらに其五1-3②「全軍の正攻法部隊は多人数部隊」の記述も踏まえれば、「正攻法部隊」と解読できる。

<⑤について>
・1つ目の「之」は、④1つ目と2つ目の「法」の「真心のある法規や決まり」を指示する代名詞と解読。

・「兵」の“軍隊”は、④「衆」の「正攻法部隊」を指すと考察。結果、「正攻法部隊」と解読。

・「丘」の“周代の耕作地の区画単位”は単位だが、耕作地を指すと解釈。また、この耕作地は陣地にした敵里のものと解釈できるため、「陣地にした元敵里の耕作地」と補って解読。

・「迎」の“受け入れる”は、正攻法部隊への採用を元敵兵達が受け入れることと考察。結果、「元敵兵達は自軍からの徴兵を受け入れる」と補って解読。

・「従」の“聞き入れる”は、正攻法部隊に採用された元敵兵達が任務に関する指示内容を聞き入れることと考察。結果、「元敵兵達は指示を聞き入れる」と補って解読。

・1つ目の「師」の“模範となる人”は、其七6-4⑤等の「攻め取った元敵兵の世話役」と同意と考察。結果、「攻め取った元敵兵の世話役」と解読。

・「謁」の“告発する”は、其七6-4④「でたらめを言う元敵兵」が其七6-4⑦「他の兵士達に対する諫言を巧妙に偽ってでたらめを言う」行為と考察。結果、話の流れを踏まえて、使役形で「荒々しい元敵兵達に告発を狙ったでたらめを言わせる」と解読。

・「此」は、「故用兵之法、高陵勿郷、倍丘勿迎、詳北勿從、圍師遺闕、歸師勿謁」を指示する代名詞と解釈。ここでは「これ」と解読。

・2つ目の「之」は、「兵」の「正攻法部隊」を指示する代名詞と解読。

<⑥について>
・1つ目の「法」の“手本とする”の“手本”は、⑤2つ目の「法」の「正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本」を指すと考察。結果、「法るもの」で「正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本を使う自軍」と解読。

・「用る兵」の直訳は“経由する戦略”となる。其七3-3②「陣地を手に入れることを大いに利点と思う将軍は、都市以外の敵里を経由して大いに治めるのである」の敵里を経由して陣地にすることを指すと考察。結果、「敵里を経由して陣地にする戦略」と解読。

・「高勿し」の直訳は“音声が大きくてよく響くことがない”となる。この“音声”は、其四3-3②「稲光が走った時に雷の音が遠くから聞こえてこなければ耳が未成熟だと見なす」の“雷の音”を指すと考察。つまり、「高勿し」は敵軍の耳を未成熟にすることが狙いと解釈できる。また、其四3-3④「名声を得ている敵将軍に正攻法部隊の攻撃を恐れさせて敵軍に節目が生じた時機を見逃さず奇策部隊が動き出して攻め取った時は、自軍の将軍は大いに未熟であるとこっそり伝える間者の任務があったのである」に基づけば、遠くから聞こえてくる“雷の音”は正攻法部隊の”脅威“であり、敵将軍の耳を未熟にさせた状態とは敵将軍が自軍の正攻法部隊に警戒すること無く侮っている状態と考察できる。結果、「自軍の正攻法部隊に対して脅威を感じさせない」と解読。

・「倍」の“外れる”は、敵里が敵国から外れることであり、自軍が奪い取ることと考察。結果、使役形で「奪い取る」と解読。

・「丘」の“大きい”は、話の流れより正攻法部隊の兵士数が増えて大きくなることと考察。結果、「丘たり」で「正攻法部隊の規模が大きくなる」と解読。

・1つ目の「師」の“専門的に特定の職域・職能を扱う官”は、破損した壁を修理する役人と考察。結果、「師に遺う」で「専門職の役人によって修理する」と解読。

・2つ目の「師」の“衆人”は、話の流れより自軍が奪い取った敵里の人民を指すと考察。結果、「敵里の人民達」と解読。

・「衆」は、2つ目の「師」の「敵里の人民達」と同意と解読。

・2つ目の「法」の“手本”は、1つ目の「法」の “手本”の「正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本」を指すと考察。結果、「正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本」と解読。

<⑦について>
・1つ目の「法」の“手本”は、⑥2つ目の「法」の「正攻法部隊の人数を増やして治めるお手本」と同意と解読。

・「高」の“音声が大きくてよく響くさま”は、其七6-2④「早朝の切れ味の鋭い武器となる士気が激しく旺盛な軍隊の勢いに至らせる」の“士気が激しく旺盛な”状態を指すと考察。つまり、士気が旺盛になった兵士達の声量は大きくよく響くのだと解釈した。結果、「兵士達の士気を激しく旺盛にする」と解読。

・「陵」の “砥石で刃物を鋭くする”は、其七6-2④「早朝の切れ味の鋭い武器となる士気が激しく旺盛な軍隊の勢いに至らせる」の“切れ味の鋭い武器となる”を指すと考察。結果、「陵くもの」で「切れ味の鋭い武器となった自軍」と解読。

・「郷かうもの勿し」の直訳は“前に向かって行く者は存在しない”となる。これは「士気が激しく旺盛な軍隊の勢いに達した自軍」に向かって行く敵軍が存在しないことを指すと考察。結果、「自軍に向かって来る敵軍は存在しない」と解読。

・2つ目の「師」の“猛獣のシシ”は、敵軍を包囲した時に意図的につくった隙間に誘い込む獲物と考察。結果、「獲物となる敵部隊」と解読。

・「此」は、「故用兵之法、高陵勿郷、倍丘勿迎、詳北勿從、圍師遺闕、歸師勿謁」を指示する代名詞と解釈。ここでは「これ」と解読。

・2つ目の「用」の“事物の作用”は、多くの人々に働く道理を指すと考察。結果、「(多くの人々に)働く道理」と解読。

・2つ目の「之」の“使う”は、1つ目の「用」で記述された「自軍が戦闘において戦術を使う」の意味を積み上げていると考察。結果、「戦術を使う」と補って解読。

<⑧について>
・「故」の“道理”は、⑦「多くの人々に働く道理」の意味を積み上げていると考察。結果、「多くの人々に働く道理」と補って解読。

・「高」の“音声が大きくてよく響くさま”は、⑦「高」で記述された「兵士達の士気を激しく旺盛にして切れ味の鋭い武器となった自軍」の意味を積み上げていると考察。結果、「高きもの」で「兵士達の士気を激しく旺盛にして切れ味の鋭い武器となった自軍」と解読。

・1つ目の「勿」の“存在しない”は、「兵士達の士気を激しく旺盛にして切れ味の鋭い武器となった自軍」に恐れ慄く敵軍が向かう場所と考察。「勿き」で「自軍が存在しない場所」と補って解読。

・「丘を迎える」の直訳は“未来の墓を予測する”となる。これは、獲物となった敵部隊を奇策部隊が攻め取る場所を予測していることと考察。結果、「攻め取る場所を予測する」と解読。

・「勿きを詳るもの」の直訳は“存在しないと見せかける者”となる。これは正攻法部隊に誘導された敵を待ち受ける奇策部隊を指すと考察。結果、「誰もいないと見せかけている奇策部隊」と解読。

・「闕ける師」の直訳は“欠けて不完全な軍隊”となる。これは「恐れおののく敵部隊」であり、⑦「獲物となる敵部隊」と考察。“欠ける”の意味は、其六4-2①「自軍を集合させて一と見なして、敵軍は分断させて十分の一にさせる理由は、全部隊が揃った自軍を使って敵部隊の一つを敵本軍から断ち切るからである」に基づけば、敵本軍から切り離した部隊と解釈できる。結果、「敵本軍から切り離した敵部隊」と解読。

・「囲」の“包囲して捕らえる”は、其五2-9②「正攻法部隊の周囲を取り囲んで制止している奇策部隊は、周囲をじっくり見ていない敵部隊を取り囲んだ状態をつくり、容易く攻め取れる状態に至らせて行き詰まらせることができた時、一斉に出撃するのである」に基づけば、奇策部隊が敵部隊を包囲して攻め取ることと考察。結果、「奇策部隊が包囲して攻め取る」と補って解読。

・「此」は、「闕ける師」の「敵本軍から切り離した敵部隊」であり、奇策部隊が攻め取って自国に従うと決心させた元敵兵達を指すと考察。結果、「攻め取った敵兵達」と解読。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。